第4節:裏返る
フミと別れた春樹は、たまたまゲーセンに居た最後の一人、リョウに話を聞きに行った。
「ああ、ナグとキヌは、確かに付き合ってたよ」
ロンゲの彼は、思ったよりも普通の少年だった。
「どっちかっつーと、ナグの方がキヌを好きな感じで。でも、キヌに夢中だったのは断然ノブの方だった」
ノブという少年は、まといの幼なじみだったそうだ。
大人し気で、いつもにこにこしている少年だったらしい。
「そいつ、ストーカーやったん?」
春樹の言葉に、リョウは驚いたように首を横に振った。
「まさか。人が嫌がるようなこと、全然しないタイプだったよ。気が利くし。きっと、キヌがいなかったら僕らとはツルんでなかったような優しいヤツだった。だから、コマやサクはあいつのこと使い走り扱いだったけどね」
だがノブは、そんな扱いにもイヤな顔一つしなかったそうだ。
「キヌは、僕らのアイドルだった。コマもああいうヤツだったから、美人は好きだったしね。僕だって嫌いじゃない。でも」
リョウは表情を陰らせる。
「一ヶ月前、僕はその場にいなかったけど……ノブと、他の三人がケンカになったらしいんだ」
理由は、皆が話さなかったので知らないらしい。
「でも、その日からノブは姿を見せなくなった。死んだ、ってことがわかったのは、キヌが珍しく沈んだ顔をして一人でいた日に、たまたま口を滑らせたんだ」
無意識に、ぽつりと漏らしたらしい。
「ただ、口止めされてたみたいでね。すぐに忘れてくれって。そっからなんとなく俺と他の三人でぎくしゃくしてさ。自然にツルまなくなった」
「リョウは、アイツがプッシャーやってこと、知っとったん?」
口を挟んだ春樹に、リョウはうなずいた。
「でも、関係ないと思ってた。アイツは僕には勧めてこなかったし、僕も興味はなかったからね。そもそもツルんでたって言っても、学校も違ったしさ」
会うのはたまに、夜の数時間程度だったらしい。
「だからさ、キヌが珍しく話しかけてきて、アイツが変わったって聞いた時も、ついに自分でもヤクに手ぇ出したのかなって、思っただけだった」
話を聞いていて、冬子は思った。
きっとこのリョウにとって、他の四人は友達ですらなかったんだろう、と。
だから、こんなにもあっさりしているのだろうと。
だが、春樹は違う印象を抱いたようだ。
「リョウは、ノブってのと仲良かったん?」
その言葉に、リョウは意表を突かれたようだった。
軽く視線をさまよわせ、それから答える。
「ま、それなりに、ね。何故か他の三人よりも話が合ったんだ。今考えれば、もしかしたらノブの方が合わせててくれたのかも、と思うよ」
そう言ったリョウは、少し悲し気で。
冬子は、先ほどまでとは少し違う印象を、彼に抱いた。
そうして彼と別れた後、春樹がぽつりと呟いたセリフが。
冬子の耳に、妙に引っかかった。
「最初に聞いた話と、ずいぶんちゃうなぁ……」
「ノブが、死霊だと思うか?」
順次の問いかけに、春樹は肩を竦めた。
「さぁな。今までの話でわかったことは」
春樹の目が、どこか遠くを見るように細まる。
「どうやら、まといも『クロ』やってことだけや」




