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第八話 「そうだ! ぼくがあんこく~」

 俺は宮殿内部にあるグロウの自室を尋ねた。


 「おい、グロウ。右手大丈夫か?」

 「はい。血も止まりましたし。一流の職人に魔道義手も作らせました」


 そう言ってグロウは右手の魔道義手を動かして見せる。

 日常生活を送る上では十分だが、やはり生身の肉よりは不器用のようだ。このままだと戦闘に差し障るな。


 「はあ。神聖魔法の使い手が居れば切れた直後ならくっつけられるんだけど」

 「魔帝陛下。神聖魔法は聖人種(ヒューマン)の固有魔法でしょう。我々の中に使える者など居ませんよ」


 グロウは仕方が無いとでも言うように肩を竦めた。

 固有魔法とは、その種族だけが扱える魔法のことである。


 魔術は普遍的にどの種族も扱えるが、魔法は特定の種族しか使えない。ハーフとかだと、複数使えるケースもあるみたいだが。


 「それにしてもこの義手、俺のと比べて随分と性能が悪いな」

 「はあ……これでも魔界で有名な魔道技師に作らせたのですが。魔帝陛下の義手は誰が設計したのですか?」

 「魔術師(メガネ女)だ。俺の仲間。知ってるだろ?」


 俺がそう言うと、グロウはなるほどと相槌を打つ。


 「名前は知っています。リリアナ殿でしたっけ? 確か共和国出身の……」

 「そうそう。兵器の設計も出来れば前線でも殴り合える、凄い奴だ」


 ああ、そう言えば俺の魔道義手の整備ってあいつがやってたんだっけ。

 これからどうするか……


 魔術師(リリアナ)の作る兵器や道具は優れたモノばかりだが、同時に大きな欠点がある。

 あいつしか整備出来ないことだ。


 当然量産も出来ない。


 他にも人間工学を無視した設計を平気でする癖がある。奴の兵器の所為でいったい何人が犠牲に成っただろうか……


 「ああ、アキト様。ここにいらっしゃいましたか。探したんですよ」


 そう言って入ってきたのはメアだった。

 

 「アキト様。どこかに行くときは私に一声掛けてください。面倒くさいじゃないですか。発信機でも付けます?」

 「俺にもプライバシーってのがあるんだぞ。全く。それで何の用だ?」

 「これです」


 そう言ってメアは何も無い空間に手を突っ込んだ。

 空間に波紋のようなモノが広がり、中から黒い剣が出てくる。


 「そ、それは暗黒剣『永久の闇』!!」

 グロウは上擦った声を上げた。メアをそれを無視して、俺を見上げる。


 「そうです。アキト様。これを持っててください」


 メアはそう言って俺に暗黒剣(以下魔剣)を突き出してきた。

 でもな、聖人種(ヒューマン)の俺が持ってても仕方が無くないか? 宝の持ち腐れだ。


 「良いんですよ。腰に帯びるだけでも。大事なのは権威です。それは魔帝の権威の象徴です」

 「そうか? じゃあ貰うけど」


 俺は魔剣を手に取った。

 次の瞬間、視界が暗転した。







 ここは……ああ、あそこか。


 俺は周囲を見渡す。真っ白い、何も無い空間。ずっと居れば気が狂ってしまいそうだ。

 おそらく果てという物は存在しないんだろうな。


 だが恐怖は湧き出ない。

 何故かって?


 ここは俺の精神空間だからだ。最初に来たのが、聖剣ちゃんと契約する時だ。

 その後も何度か夢の中で訪れている。


 「アキト!! ひさしぶり!!」


 ギュッと後ろから何かに抱き付かれた。 

 俺は後ろを振り返る。

 

 銀髪の可愛らしい幼女がそこにいた。

 

 「聖剣ちゃんか。久しぶりだね」

 「うん。ひさしぶり。みっかぶりだね!!」


 逃走中は話し合い手が聖剣ちゃんしか居なかったせいで、よく夢の中で聖剣ちゃんとお話ししていたのだ。

 教皇の悪気口が四割、皇帝の悪口が四割、国皇の悪口が二割だ。


 「それにしてもどうして……」

 「それはぼくがよんだからだ!!」


 突如目の前から高い、可愛らしい声が聞こえた。

 前を向くと、黒髪の少年?が立っていた。


 「もしかして魔剣くん?」

 「そうだ。ぼくがあんこくけん『とこしえのやみ』だ!! えっへん」


 魔剣くんは胸を張った。若干の膨らみを目視出来た。

 つまり男装美少女だ。僕っ娘だ。


 魔剣くんは俺の両手を掴んだ。


 「おい、アキト!! ぼくとけいやくしろ!!」

 「いや、契約する分は良いんだけどさ。出来るの?」


 おれ、聖剣ちゃんと契約してるし。二重契約ってありなのか?

 そもそも、俺は魔人種(ナイトメア)じゃないけど。


 「ばかだなあ。いいか。そのとくてい(特定)のしゅぞく(種族)としかけいやく(契約)できないというのはおまえらのかんちがい(勘違い)だぞ?」

 「そうなのか?」

 「うん。そうだよ。だってさ、ヒューマンがわたしをナイトメアとけいやくさせようとするわけないじゃない? それでわたしはナイトメアとかエルフとかとけいやくしたことなかったの。それでみんなかんちがいするようになったの」


 聖剣ちゃんが説明してくれた。

 なるほどね。言われてみればそうだ。


 聖剣ちゃんの身柄を確保しているのは聖人種(ヒューマン)である。聖剣ちゃんは自分では動けないため、聖剣ちゃんの身柄を確保している聖人種(ヒューマン)……正確に言えば帝国の皇帝が騎士候を集めて、聖剣ちゃんと契約出来る人間を探すのだ。


 当然のことながら、その集められた騎士候は全員聖人種(ヒューマン)であるはずだ。

 いや、そもそも所有者など探さないかもしれない。勇者など皇帝の地位を脅かすだけの存在なのだから。


 ちなみに俺が呼ばれた背景は、地位など気にしている暇が無いほど聖人種(ヒューマン)の負けが決め込んでいたからである。

 ついでに俺が追い出された背景は聖剣ちゃんを返却しなかったからだ。だって聖剣ちゃんが泣くんだもん。


 「待てよ。その理論だとさ、全ての神具と契約して最強になれない?」


 俺がそう聞くと、聖剣ちゃんと魔剣くんは顔を見合わせた。


 「できるけど……」

 「おすすめはしないかな?」

 「何で?」


 良いじゃないか。六つの神具を全て所有した最強の存在。

 戦況によって使い分ける。カッコイイし。


 「じんぐによってはうわきをきらうこもいるし」

 「そもそもおまえのからだがたえきれないぞ? しぬよ」


 え? 死ぬの!?

 それは嫌だな……


 そう言えば聖剣ちゃんと契約するとき、死ぬほど痛かった記憶があるぞ。

 まあ強い力には代償があるとはよく言うけどさあ……


 「ところで俺はあといくつの神具と契約できそう?」

 「うーん、ぼくをふくめてあとみっつがせいぜいだとおもうよ?」


 なるほどな。逆に言えばあと三段階は強くなれるのかな。

 そいつは嬉しい。


 「もう一つ聞くぞ? 何で俺と契約したいんだ」

 「だってアキトはおもしろそうじゃん? それにぼくをつかいこなせそうだし。まえのまていはつよかったけど、こわいひとだったの。いうこときかないとこえだめにぶちこむぞって」


 そいつは恐怖だな。

 肥溜めって……錆びるだろ。いや、神具は錆びないのか。臭いとかどうなんだろう?

 聖剣ちゃんは一度も洗ったこと無ければ、研いだことも無いけど、綺麗なんだよね。


 流石にう○こ塗れに成れば汚くなるのだろうか?


 「まあ、取り敢えずお前の事情は分かった。良いよ、契約しよう」

 「ほんとうに? よし、けいやくだ!!」


 俺は魔剣くんの右手を掴む。

 魔剣くんは目を閉じて唱えた。


 「われ、あんこくけん『とこしえのやみ』はアマノ・アキトをしゅじんとしてけいやくをむすぶ」


 魔剣くんがそう唱えた直後、俺の体に電流が走った。


 「っぐうううう!!」


 歯を食いしばる。だが痛みは全く軽減されない。

 頭がズキズキと痛む。


 聖剣ちゃんの時よりもずっと痛い!!!

 神経を直接引きちぎられるような痛み。激痛。鈍痛……


 ありとあらゆる痛みが俺を襲う。



 気付くと俺は地面に仰向けで転がっていた。天井には美しい装飾が施されている。

 ここは……グロウの部屋か。


 「アキト様!! 大丈夫ですか、大丈夫ですか!!」

 俺の少し視線をずらすと、目に涙を浮かべたメアの顔があった。

 体を激しく揺すられる。


 痛みはとっくに引いていた。

 俺は起き上がり、冷や汗を拭う。服がビシャビシャだ。


 「意外だ。お前、俺が倒れて心配するんだな」

 「あ、あなは私のことを何だと思ってるんですか!! ……あなたのことは嫌いではありません。処女をくれてやろうと考える程度には。だから死なないでください」


 ……果たしてこいつは俺に惚れているのだろうか?

 そこそこ男性として好意を抱かれているのは間違いないんだけどな。生憎こういうタイプは未経験だから分からない。


 「それで何があったんですか? もしかして聖人種(ヒューマン)なのに暗黒剣を触ったから……副作用?」

 「違う、違う。まあ、見ててくれ。魔剣くん!」


 俺は魔剣くんを呼び出す。床に転がっていた魔剣くんが俺の右手に転移する。

 メアの目が驚愕で大きく見開く。


 まだまだだぞ?


 「さて、確か魔剣くんの能力は……」

 俺は魔帝が扱っていた魔剣の能力を思い返す。

 確か重力を操るんだっけ。あと闇と吸熱反応。


 「浮上!」


 俺がそう叫ぶと、メアの体が浮き上がった。突然のことで空中で暴れるメア。お、パンツが見えた。

 白か、淫魔族(サキュバス)の癖に清楚じゃないか。そう言えば処女なんだっけ。


 処女白パンツ淫魔族(サキュバス)とか……

 俺得じゃないか!



 「ちょ、下ろしてください!!」

 パンツを見られたのに気付いたのか、スカートを押さえながらメアは俺を睨みつける。

 すまん、すまん。

 俺はメアをゆっくり下ろす。


 魔剣くんの制御は難しいな。もう少し、慣れる必要がありそうだ。暫くは聖剣ちゃんが能力の主体に成る。


 「で、どういうことですか? 何でアキト様が扱えるんですか?」

 「そうです、もしかして魔人種(ナイトメア)の血が?」


 いや、俺はそもそも異世界人だから聖人種(ヒューマン)でもないんだけどね。

 俺は二人に魔剣くんと聖剣ちゃんに聞いた話をする。


 「なるほど。そう言うことでしたか。都合が良いですね。これで魔帝として誰にも文句は言えませんよ」

 「まあ、そうだな」


 魔剣くんは魔帝の象徴の一つ。それが俺を選んだのだから、魔帝として十分すぎる権威だ。

 俺の魔人種(ナイトメア)ではないという弱点を補って余りある。


 逆にグロウは納得いかないようだ。


 「何で、何で俺が契約できなかったのに……」

 「まあ、そういうこともある」


 俺はグロウの肩を叩く。精進が足りなかったということだな。

 でも他の神具ろ契約できる可能性もあるし。まだまだ諦めるのは早いぞ。


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