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第二十話 「ああ、これも神の試練なのでしょうか……」

少し遅くなりました


 俺たちは現在、神聖帝国の帝都に居た。

 はい、今こう思ったでしょう。


 「どうやって密入国したのか?」


 答えは簡単だ。

 蜃気楼『不可視の羽衣』だ。


 前回、鹵獲に成功した羽衣。

 俺は試しに触ってみたのだが、激痛が走っただけで骨入り損だった。


 俺のことは嫌いらしい。

 同様にグロウ、メア、その他大勢も試してみたが失敗した。


 そこで俺はこう思った。


 前の持ち主の息子ならばイケるのではないか?


 一部、反対意見も出たが魔帝として強引に鎮めてルフスに試してみた。

 そうしたらあっさりと成功した。


 ちなみに羽衣さんは巨乳の美女らしい。

 クソ、俺も契約したかった……



 「おお!!! 大きな教会ですね!!」

 「そりゃ皇帝の御膝元だからな。教会はデカいだろうさ。でも一番デカいのは……」


 俺は指をその建物に向ける。

 そこには巨大な宮殿が建っていた。


 宮殿の周囲には四つの塔がそびえ立っている。

 あれは古代ユリアス帝国の地下遺跡から発掘した、場違いな工業品(アーティファクト)を改造した強力な結界だ。

 

 確か騎力三十万以上の騎士候が最低でも五人、それがフルパワーの攻撃を仕掛けない限り破れない。

  

 ちなみに効果範囲は狭く、宮殿の周辺だけなので帝都そのものは守れない。

 ぶっちゃけ、帝都を支配されれば宮殿に閉じこもっても兵糧攻めされて意味ない気がする。


 ……まあ、牢獄としては優秀だけどな。


 俺は宮殿を睨みつけた。

 宮殿の周辺には結界塔以外の塔が存在する。

 

 彼女を監禁するために、今の皇帝が特別に建てた塔だ。


 今の俺では結界を破れない。

 彼女を助けられない。


 「アキト様?」

 「ああ、すまん。少し考え事をしてたんだ」


 俺は笑って誤魔化す。

 

 待っていてくれ。

 俺が必ず君を攫う。








 「しかしリリアナが捕まっていたとはな」


 俺たちは無事に共和国への不法侵入に成功した。

 メンバーは俺、メア、グロウ、ルフスの四人。

 羽衣さんのおかげで簡単に密入国出来た。



 しかしここで俺は新たな事実を知る。

 なんとリリアナが捕まっていた。


 ……俺の所為かな?

 まあ、もともとあいつは空気が読めないところがあったし……


 三割くらいは自業自得だろ。

 


 「捕まってる場所は地下牢か……」

 

 リリアナほどの人間を閉じ込めているのだ。

 おそらく、現在の地下牢の警戒レベルはマックス。


 羽衣さんでも誤魔化しきるのは難しいかもしれない

 どうしたモノか……


 「僕だけで地下牢に行くとか? 僕だけならば完璧に隠し通せますよ」

 「うーん、お前の力で牢を破壊出来るか? リリアナが壊せないんだぞ」


 リリアナは普通の騎士候の数百万倍以上の魔力を有する。

 リリアナの馬鹿魔力で破壊出来ない牢をルフスが壊せるのだろうか。


 俺の聖剣ちゃんじゃないと厳しくないか?


 「ですが二人以上だと見つかる恐れがありますよ」

 「そうだな……開き直って全員で行くというのはどうだ?」


 俺は作戦を説明する。


 全員で地下牢を襲撃する。当然見つかる。

 だから仲間を呼ばれる前に気絶させる。


 そしてリリアナの牢を破壊して逃げる。

 当然、違和感に気付く奴が居るから俺たちが脱出する頃には敵の増援が来る。


 それを正面突破する。


 俺とリリアナならば、騎力一万程度の騎士候は余裕で蹴散らせる。

 

 現在、この都市国家にいる騎士候は十万越えが一人、一万越えが五人。

 他の都市国家に応援を呼ばれれば、一万越えが二、三十人は来るかもしれないけど……


 それはあり得ないと断言できる。

 共和国に所属する都市国家一つ一つは非常にプライドが高いのだ。


 同じ共和国同士とはいえ、他国に支援を求めたとなれば国民は執政官を非難する。

 政敵に隙を見せることに成るはずだ。


 だから始めは自分たちだけで始末をつけようとするはず。


 俺たちは他の国から増援が来るまでに、この都市国家から抜け出す。

 城壁の外に出ればメアの転移(テレポート)が使える。


 後は転移を繰り返して、追手を播いてからルフスの羽衣さんで身を隠す。

 暫く共和国内に潜伏して、折を見て魔界に戻る。


 どうだ、俺の完璧な作戦は!!


 「まさに脳筋!! って感じですね」

 「要するに正面突破でぶち当たるということじゃないですか……」

 「分かりやすくて良いと思います」


 上から順に、メア、ルフス、グロウだ。

 グロウは良い子だな。

 メアとルフスは悪い子だ。


 「じゃあ代案あるのか?」


 代案無しで人を非難するのは良くないぞ。


 「いえ、脳筋っぽいなと思いますが悪くはないと思います」

 「そもそも国に乗りこんでリリアナさんを助けるという戦略自体が脳筋なので……戦術も脳筋でも問題ないかと」


 ……お前ら脳筋、脳筋五月蠅いんだよ。




 「うーん、外れない。はあ……僕の魔力と気力を封じる枷が存在するとはね。十中八九、場違いな工業品(アーティファクト)だろうね」


 古代ユリアス帝国の魔導技術は現代以上に優れていた。

 現代の魔道技術ではリリアナの拘束は不可能だが、ユリアス帝国の技術ならば可能だ。


 「しかし!! 僕は天才魔術師だ。良いだろう、古代ユリアス帝国。その挑戦、受けて立ってやる!!」


 リリアナは枷の解析を始める。

 如何なる解呪出来ない魔術など、この世に存在しない。


 この枷が魔導の産物である以上、解けない通りは無い。


 「えっと、これがこうなって……これか!!」


 リリアナは魔術式を解析して、解呪を試みるが……


 「あぐうううううう!!!」


 リリアナの唇から悲鳴が漏れる。

 強烈な電流が流れたからだ。


 象でも殺せる電圧の電流が五分間、リリアナの体を襲う。


 「いたたたた、これはダミーだったか……」


 リリアナはため息をつく。

 この程度の電流では死なないが、痛いものは痛い。


 それに体力を大きく消耗する。


 「しかし、僕は諦めないぞ!!」

 「おお!! 元気そうじゃないか。良かった、良かった」


 ふと聞きなれた声がリリアナの鼓膜を振動させた。 

 リリアナは顔を上げる。


 「勇者!!!」


 そこにはアキトが居た。






 「勇者!!!」


 リリアナが嬉しそうにこちらを見ている。

 どうやら囚われの御姫様は無事のようだった。


 え? 地下牢の侵入の過程を教えろって?


 別に特筆しなければならないことは無い。

 ただ巡回の兵士を見つけるたびにぶん殴って、メアの亜空間に放り込む作業の繰り返しだ。


 すでに三十人以上を沈めているので、異常に気付かれるはずだ。

 急がないとな。



 「さて、勇者。そこの三人は誰かな? 魔人族(ナイトメア)のようだけど」

 「まあ、後でまとめて話すけど……俺、魔帝に就任したんだ。この娘は俺の嫁で魔帝の娘。で、後ろの二人は部下」

 「いろいろ聞きたいことが有るけど、長くなりそうだね。取り敢えず開けてくれ」


 リリアナは牢の鉄格子を掴みながら言う。

 その青空色の美しい瞳には涙が溜まっているのが分かる。やっぱり怖いモノは怖かったらしい。


 「条件がある。俺と一緒に来て、魔界の統一を手伝え」

 「うーん、僕も故郷というものがあってだね……それにメシア教徒だ。愛国心の信仰心があるんだよ。そう簡単に魔人族(ナイトメア)のところに行くわけには……」

 「研究費、お前が貰ってた額の三倍やる」

 「魔界最高!! 魔帝陛下万歳!!」


 おい、愛国心と信仰心はどこへ行った?


 「どけ」


 俺は聖剣ちゃんを抜き放つ。

 聖剣ちゃんは美しく光りだす。


 斬!

  

 強力な結界が付与されていた鉄格子はあっさりと切断された。


 「さあ、その枷も壊すぞ」

 「いや、これは後にしてくれないかな? 多分場違いな工業品(アーティファクト)なんだよ。僕の研究所の施設を使えば十秒で外せるから。お願いだ」

 「しかしだな……」


 事態は一刻を争う。

 呑気ににリリアナ研究所に向かうわけには……


 「良いのではないですか?」

 「どうして?」


 メアなら、真っ先に反対すると思ったんだけどな……


 「魔術研究には相応の設備が必要です。それに研究所とやらにはリリアナさんの発明品がたくさんあるのでしょう? それを回収しないと勿体無いですよ。それにその枷、強引に外すと爆発したりするかもしれません」

 「なるほど……有り得るな」


 それに場違いな工業品(アーティファクト)は貴重品だ。

 そう滅多に発掘されない。


 壊すのは惜しい。


 「だろ? 勇者の奥さんは話が早いじゃないか!!」

 

 リリアナはそう言いながら牢を出る。

 

 ウィーン!! ウィーン!!


 その瞬間、とてつもない警戒音が鳴り響いた。


 「うわああああ!!!」

 「こいつはやばいな。急ぐぞ!!」


 俺たちは走り出した。







 「邪魔だ、どけええええ!!!」


 俺は目の前の騎士候を殴り飛ばす。

 急がないと騎士候が群がってくる。


 「うう、アキト様……気持ち悪いです……」

 「我慢しろ。あと俺の背中で吐くなよ?」


 俺の背中の上でメアが呻いた。

 メアの足は(俺たちと比べると)遅いので背負った方が早い。


 ちなみに、現在俺たちは時速五十キロくらいで走ってる。

 人間やめちまったな、本当に。


 「しかしリリアナさんの魔力、凄いですね。聖人種(ヒューマン)なのに。僕の百倍以上はあるじゃないですか? どういう絡繰りですか?」


 ルフスがリリアナの馬鹿魔力について聞いた。

 ちなみにリリアナはグロウに負ぶわれている。リリアナは魔力と気力を封じられた状態なので、俺たちと同じ速度では走れないからだ。


 リリアナは俺に負ぶわれたいと言ったが、俺の背中は一つしかないからな。我慢して貰う。

 そういうとグロウに失礼だが。



 「僕は先天性魔力異常症という病気を持っていてね」


 リリアナが自分の馬鹿魔力について解説を始めた。

 伊達メガネをクイっと上げる。ウザい仕草だな。


 「知ってます。僕たち魔人種(ナイトメア)の平均よりも数千倍、数万倍の魔力を持って産まれてしまう病ですよね。ほとんどはコントロール出来なくて、生後数分で死んでしまう。それでも生まれることが出来ただけ幸運で、大概は胎内で死んでしまう。母親を道連れに……」


 魔力は多ければいいというわけでは無い。

 コントロール出来なければ意味が無いのだ。


 基本、どんな人間も産まれた直後の魔力量は変わらない。

 それが成長と共に変化するのだ。


 だが先天性魔力異常症は違う。

 最初から異常なほど魔力を纏って生まれる。


 当然、物心付いていない赤子にそんな魔力を扱えるはずがなく……

 暴発させて死んでしまうのだ。


 「ではリリアナ殿はどうして生きているのだ?」

 

 グロウは自分の背中の上のリリアナに聞く。

 リリアナはメガネをクイっと上げて、説明する。うぜえ。


 「僕は天才なのさ!! 生まれつき魔力を自在にコントロール出来た。ははは、凄いだろう!!」

 「ちなみにこいつ、今年で五十歳な」

 「ちょっと!! 勇者!!!」


 リリアナが抗議の声を上げる。


 メアとグロウとルフスが驚きの声を上げた。


 「えええ!! リリアナさんって聖人種(ヒューマン)ですよね? どういう魔法ですか!!」

 「僕も分からないけどね。僕は二十四歳を超えて以降、肌とか背に変化が無いんだよ。まあ、魔力の高い種族は総じて寿命が長いからね。長耳族(エルフ)とか。僕はその長耳族(エルフ)の数百、数千倍の魔力を持ってるんだから当たり前じゃないかな?」

 

 要するにメガネ婆である。


 「おい、勇者!! 聞こえているぞ!!」


 聞こえない、聞こえない。







 襲い来る騎士候を何十人もぶっ飛ばして、ようやく俺たちは入り口にたどり着いた。


 「俺が相手をする。リリアナ、メア、ルフス、グロウは研究所に行け。メアの亜空間に発明品やら設備やらを放り込めば良い」

 「陛下はお一人で良いんですか?」

 「ああ。心配だからな」


 今のリリアナはお荷物だ。メアも同様にお荷物。

 

 二人を護衛するにはグロウとルフスが必要だ。


 俺は強いからな。 

 グロウとルフスは俺よりもリリアナとメアの護衛に割いた方が無難だ。


 

 「よし、行くぞ!!」


 俺は分厚いドアを蹴り飛ばす。

 

 さて、相手は誰かな……





 「あなたは……ああ、どうして……これも神の試練なのでしょうか……」


 悲しみの交じった嘆き声が俺の鼓膜を震わせる。

 この声は聞き覚えがあった。


 その女は一人で立っていた。

 真っ白い修道服に銀色に輝く髪と瞳。


 その細い右腕には巨大な、長さ三メートル横幅五十センチはあるメイス。


 セレナ・ヨゼフ・フォン・ツォレル。それが彼女の名前。


 通称、聖女。




 「勇者。私は枢機卿としてあなたを生かして見逃すわけには行きません。しかし捕えれば火炙りが待っています……大人しくしていてくださいね。出来るだけ苦しくないように殺します」


 その瞬間、セレナが消えた。

 気付くと俺の目の前にはメイス。


 俺はとっさに聖剣ちゃんで防御する。

 全身が砕け散るような衝撃が走る。


 俺の体は耐えられたが、道路の石畳は耐えきれなかったようで地面に亀裂が走った。



 「おい、お前ら早く行け!! 俺がこいつを引き留める!!!」



 さて、困ったな……

最低でも週一は維持しようと思っています

次回は勇者対聖女です

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