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第十一話 「じゃじゃーん!~」

地味に描写してませんでしたが、魔界はくそ広いです

 「そう言えばさ、お前ら淫魔族サキュバス・インキュバスの寿命は配偶者の血液に依存するんだろ? 魔帝ってどうなってたんだ? あいつも淫魔族(インキュバス)だろ? でも神具使いで不老じゃん?」


 地味に気になるところだ。

 

 「父上は淫魔族(インキュバス)ではありません。普通の吸血族(ヴァンパイア)です」

 「ああ、そうなの? そう言えばお前って庶子だもんな」


 言われてみればその通りである。

 いや、こんな簡単なことに気が付かなかったとは恥ずかしい限りだ。


 「メア、少し喉が……」

 「どうぞ」


 メアは俺が言い終わる前に果汁の入ったコップを渡してきた。

 赤色のジュースだ。


 お前、俺の思考読んだのか? 良いお嫁さんに成りそうだな。

 ああ、俺のお嫁さんになるんだっけ。


 俺はジュースを飲み干す。甘酸っぱい。俺の好きな味だ。


 「さて、腹も膨れたことだし……グロウ、もう一回やるか?」

 「はい! よろしくお願いします!!」


 元気でよろしい。初対面時と比べて随分と爽やかな奴に変わったな。

 どうやら俺の蹴りや拳が良い具合にこいつの脳味噌を矯正したみたいだ。


 俺とグロウが立ち上がり、剣を構えたその時だった。


 「大変です!! 魔王デルフが兵を上げてこちらに向かってきています!! 数は三十! 全員騎力一万越えです!!」

 

 魔王デルフ……確かグロウの領地の南側を押さえている魔王か。

 魔王デルフの本拠地からハデースまでは三千キロほどあるが……


 「何に乗っている?」

 「報告では全員飛竜(ワイバーン)に乗っているとのこと!」


 飛竜(ワイバーン)ね……となると補給や休憩を考えても二日あれば余裕で到着する。


 「それで、あとどれくらいで来るの?」

 「……おそらく後二、三時間ほどです」


 ほうほう……

 おい、索敵班は何してたんだ!!!


 「流石魔王デルフですね。数で戦えば敵わないと考えて少数精鋭の兵力で奇襲を掛けるとは。現在この城の騎力一万越えはアキト様、グロウ兄様、メイド長、執事長、騎士団長を含めた十五人。近場の騎士候を飛竜(ワイバーン)で集めても二十五人」

 「で、何でここまで接近された? 索敵結界は国境に張ってあっただろ?」

 「魔王デルフは宝具、蜃気楼『不可視の羽衣』を持っています。あれはありとあらゆる認識を誤魔化せますから……幸い、三十人と三十頭の飛竜(ワイバーン)を隠すのは難しかったようですけどね」


 つまりあれか、下手すれば宮殿を攻撃されるまで気が付かなかったと? 

 ……宝具ならば仕方が無いか。索敵班を攻めても仕方が無い。


 「メア。早く宮殿に居る飛竜(ワイバーン)を飛ばして騎士候を集めさせろ」

 「分かっています。アキト様は……宮殿の中の悪魔召喚の間に来てもらえますか?」


 悪魔召喚の間? 

 別に良いけど、何するんだよ。






 魔人種(ナイトメア)には悪魔契約魔法という固有魔法がある。俺も詳しくは知らないが、命だとか血液だとかを代償に悪魔を雇用していろいろして貰うという魔法だ。


 主な使用用途は人間間での契約の仲介、非常に複雑な魔術の行使、急激なパワーアップ等だ。

 ただ悪魔契約魔法はよほど切羽詰まった時や無理難題を頼む時以外は行われない。

 コストパフォーマンスが非常に悪いからだ。


 まあ簡単に言えば……十キロの米を十キロ先まで運ぶとする。これを悪魔契約魔法で悪魔に頼む。代償は自分自身のカロリー。

 すると普通で徒歩で持ち運ぶことで消費するカロリーの十倍以上を消費するのだ。実に非効率である。


 とはいえ、時間は短縮できる。

 だから使い方によっては非常に強力になる。


 ……大戦時、敵の騎力一万の騎士五人が殿になったことがある。彼らは悪魔契約魔法で自分のすべてを代償に急激に気力と魔力を上昇させて、俺に挑んできたのだ。

 俺を含めた仲間……騎力四十万越え五人をなんと三時間も足止めした。


 あれ以来、魔人種(ナイトメア)は追い詰めずに殺すことにしている。




 「我が名はメア・ルシフェル。我ら魔人種(ナイトメア)との盟約に従い、その姿を現せ。召喚(サモン)!!」


 メアが呪文を唱えると周囲の壁や床や天井に書き記された魔術陣が発光する。

 青白い、美しいがどこか不気味な光。


 メアの目の前にある魔術陣の中心から黒い煙のようなモノが噴き出てくる。 

 黒い煙はゆっくりと渦を巻き、人型になる。


 そして……


 「じゃじゃーん!! 呼ばれて出てきた悪魔ちゃん!! 気軽にデーモンと呼んでくれ!!  イェエイ!!」


 おい、シリアスを返せ。


 出てきた悪魔は非常にファンシーな恰好をしていた。アロハシャツのような服にサングラス。

 髪の毛は金色。ちなみに肌は紫色だ。


 「イェイイェイ、美人なお嬢さん!! あなたの望みは何ですかい? 今なら初回限定サービスで代償は安くしますぜ?」

 「悪魔にも初回限定サービスなんてあるのか?」


 俺が悪魔に聞くと、悪魔は頷く。


 「そりゃそうよ。最近不景気でね。こういうこともしないと顧客が確保できないのよ」


 悪魔にも世知辛い世の中になったものだな。

 ところでメアはどうして呼び出したんだ?


 「デーモンさん、で良いですね? 私が要求するのはこの人の住んでいた国の農業についての書物です」


 メアは俺を指さして言った。

 どういうことだ?


 「本当はアキト様に農業について聞きたいんですが、どうせ分からないでしょう? 脳筋ですもんね」

 「おいおい、俺だって少しは知ってるぜ。二毛作とか適地適作とかさ」


 あとあれだ。あの有名な……そう、輪裁式農業!! 

 あのクローバを植えると地力が回復するとかなんとか……


 「結構です。詳しくは知らないんでしょう?」


 うん、知らない。


 「というか俺の国は異世界にあるんだぞ? 行けるのか?」

 「おいらは時空を司る悪魔だからね。それくらいお茶の子さいさいよ」


 へえ、行き来出来るんだ。

 じゃあさ……


 「俺、帰ったり戻ったりしたいんだけど、無理?」

 「悪いが四十キロ以上の物は持ち運べねえ」


 じゃあ無理か……仕方が無い。諦めよう。


 「そろそろ本題に移っても?」

 「どうぞどうぞ、すまんなメア」

 

 メアと悪魔の取引を邪魔してしまった。

 マナー違反だったな。


 「えっと、異世界の書物だったよね? 良いぜ。限界は三十キロまでだ。何冊欲しい?」

 「一先ず、基礎的な本を五、六冊。内容が被る物は要りません。あと代償を教えてください」


 メアがそう言うと、悪魔はにんまりと笑う。


 「代償は何でも良い。基本的に持ち運ぶ物体の質量が増えれば増えるほど、コストは高くなる。あと魔力と気力を有する物……つまり生き物だな。生き物の場合はコストが跳ね上がる。その生き物の魔力と気力にも依るけどな」

 「おい、悪魔。一つ聞くぞ。本に付着している細菌とかはどうなる?」

  

 インディアンが壊滅した理由の一つに、西洋人が持ち込んだ天然痘があると聞いたことがある。

 生憎、俺はピンピンしているし俺の周囲の人間もピンピンしているから問題ないと思うが……


 「契約通り本しか持ち運ばねえ。付着しているものは全て落とすさ。ああ、言い忘れたけどお前らがウィルスと呼んでる奴。あれは俺たちの定義では生き物に含まれる。だから安心しな」


 悪魔、結構博識だな。もしかして農業書を持ってくるよりもこいつに聞いた方が早いんじゃないか?


 「話がまた逸れた。で、代償だが……騎士候の命がお勧めだ。騎力四十万越え一人殺してくれれば全部賄いきれるぜ」

 「メア。魔王デルフの騎力は?」

 「丁度四十万ですよ」


 なるほど。メアが戦いの前にここへ訪れたのは騎士候を生贄にするためか。

 しかし……討ち取った相手の命を悪魔にやるというのは気に食わんな。


 少し不愉快だぞ。


 「兄ちゃん、何か勘違いしているねえ。命と魂は別個の存在だぜ? 魂は人格に関係するが命は無関係さ。蟻も象も兄ちゃんも、大きさこそ違えどそれ以外は全く同じ命を持つ。だから騎士道には反しないぜ。だから魔人種(ナイトメア)も利用するのさ。ああ、ちなみに魂は命の数十倍の価値がある。困ったことが有ったら宜しくな」


 絶対に嫌だね。

 俺にとって一番大切なのは俺自身だ。誰がお前に魂をやるか。


 でもまあ、騎士道に反しないなら問題ないか。これで心置きなく戦える。


 「良いですよ。代償は今、ここに向かっている魔王デルフとその仲間です。当然全てではありません。我々が殺した分です。今は仮契約ということにしておきましょう。代償を支払ったら、もう一度呼び出します。この方がお互い間違いが無くて良いでしょう?」

 「ああ、おいらも可愛いお嬢ちゃんから違約金を毟り取りたくないからね。良いぜ」


 どうやら仮契約というモノを結んだらしい。

 気付くと悪魔は消えていた。


 「なあ、メア。仮契約って拘束力はないんだろ? 食い逃げされねえのか?」

 「何言ってるんですか。取引で大切なのは信用です。食い逃げしたら彼は二度と人間と取引出来なくなりますよ」


 なるほど……悪魔の世界にも信用とかあるのか。

 そうだな、あいつらも商売だもんな。言われてみれば当然だ。


 不景気とか言ってたし。大変なんだなあ……


 「というかアキト様って帰りたいんですか? 私はアキト様は故郷で嫌なことの一つ二つが有ってここに居るのかと」

 「そりゃ帰りたいさ。俺だってマザーとファザーとシスターが居るんだぜ? でも帰ったらこの世界に戻れないじゃんか。そいつは嫌だ。それにここでは俺は英雄だぞ? 逆に日本に帰ったら中卒……いや、卒業してねえから小卒か。仕事がねえよ」


 俺としてはこの世界に住みながら、お盆と正月は家に帰省するというのが理想だ。

 孫の顔も見せてやりたいしな。


 寂しいか、寂しくないかと言えば寂しいわけだが、永久の別れと決まったわけでは無い。

 別に泣いたり、喚いたりするほどのことではない。


 まあその辺か個人差だろうけどね。



 「さて、用件も済んだし魔王デルフさんとやらと一戦やりましょうかね。ところでメア。魔王デルフの能力や戦法、人格を教えろ」

 「魔王デルフは父である魔帝の兄です。非常に傲慢な性格をしています。戦争に参加しなかったのは弟に扱き使われるのが嫌だから、です。宝具は先ほどご説明した通り蜃気楼『不可視の羽衣』。騎力はは四十万。年は五百歳か、四百歳でしたっけ? 戦績も豊富です」

 「つまりグロウのようにはいかないと」


 本気を出す必要があるかもな。

 

 「それで戦い方は?」

 「羽衣を纏い、姿を消して攻撃してきます。面倒くさい相手です」

 「なるほどな……まあ見えない敵とは何度かやったことが有る。大丈夫だ」


 目で見えなければ、肌で風の動きを読めばいい!!

 という漫画みたいなことが出来てしまうのがこの世界だ。


 この物理法則を無視した、無茶苦茶な世界。

 本当に無茶苦茶で、頭がおかしいとしか言いようがない。


 だからこそ、俺はこの世界が大好きだ。


この作品の内政はオマケというか、酒のつまみみたいなものです。

あくまで主題はバトルです。


ちなみに蜃気楼『不可視の羽衣』ですが、簡単に説明すると透明人間になる能力です。自分以外の複数の人間にも認識阻害の効力を働かせられます。


ただし人数……というか、包み込む物の体積が大きくなればなるほど認識阻害が甘くなります。

完全に透明人間になれるのは本人とそれに乗るワイバーンだけを包んだ時です。


まあ、詳しくは先の話で描写します。

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