06
今度は道具入れから紙とペンを取り出し、馬鹿にも分かりやすいように魔法の属性について書いていく。
まず五角形を書き、その中に三角をいれる。そして中央に円を描いた。
これがこの世界での魔法の関係。
「魔法使いが使える魔法は主に一つ。属性で分けられているのだ」
「『魔法』が一つって不便ですね……」
不便と言われてもな。私にとって『魔法』が一つでも使えれば幸せだと感じる。
その感覚が使えない者と使える者の違いか。そしてその違いは人を変えるには十分すぎる程に大きい差。
「かもしれんな、いいか? まずは外の五つの属性。これは使用できる人間が多い基本の『魔法』。その為か――【核】もこの五つの属性しか作れていない」
その五つの属性とは
『火』
『水』
『土』
『木』
『風』
五角形の頂点にそれぞれ属性を書いていく。
火は明かりや料理に使用され、水は生活には欠かせない。
土と木は作物と自然を。
風は移動手段と活用されている。
「生活に使われている『魔法』を持てない私たちの様な人間が一日歩いた距離を『魔法使い』は数時間で移動できる」
「楽できるならそれがいいもんね」
「ああ。だがこれらは人数が多いからまだましだ」
今度はその内側にある三角形を説明する。
「これが非常に稀有な3つの属性、『鋼』『氷』『雷』。この魔法を持った者は優遇された生活を送れる」
ちなみに私は今の所――この三つの属性を持った者たちを片手で収まるくらいしか見たことがない。
各国回っている私がこれだけしか知らないと言う事は――この世界でどれだけの確率なのか。この三つの属性は使える『魔法使い』が少ないのもそうだが、近年更に重要に扱われている。
「鋼は建物に電気は発電所として」
だが、そんな使い方をしているのはⅥの国位なものではあるが。
「何かそれって僕たちの世界みたいですね」
「ああ。これも真黒木さんの残した一つだ」
「なんかすごいね真黒木って人」
ようやくそのすごさが分かったか。私は真黒木さんに教育された身として嬉しくなる。
「そうだろう。今度ゆっくり彼が残した功績についてはじっくり教えてやるからな。楽しみにしておけよ」
凄さが分かったところで本来はもっと語り合いをしたいのだが、楽しみは後に取っておくとしよう。今は属性についての説明が優先だ。
「はーい。それでその中心の丸は?」
「これはな」
最後に中心にある丸に『無』と記入する。これがミオが使うであろう属性の『魔法』。
「これは分類不能な『魔法』だ」
君の魔法もここに当てはまるだろう。私はそう言って描いた紙をミオに手渡す。
その紙を見て、嬉しそうにミオは目を綻ばせた。
「この属性って全部見れるの? シキさんはどの『魔法』が使えるの?」
私は――。
「私は使えないよ、【核】を使ってなんとかやり過ごすだけの頭の切れる美少女さ」
「そうなんだ」
「そう言う事だ」
使えてたら『騎士団』内部でももっと上にいるわ。
しかし『魔法』が使えてたなどと――言い出したら、言い出してしまったら真黒木さんには出会えなかっただろう。
ならば、私は――今の私で満足だ。
「へー。ならさ、その頭の切れる美少女が僕に何の用かな? まさか本当に世界を変えようとしてるの?」
「ああ、そのつもりだ。まあ世界を変えると言ってもやる事は簡単だ」
ようやく私の目的へと入れる。
ここまで話が送れたのは気まぐれの女王フウキが現れたから――あの女……。しかし、これからやる事を考えるとここでフウキに会ったのも――悪い事ばかりではないかもしれない。
なぜなら、世界を変えるとはあの女にも関係しているのだから。
世界を変える――。
「九人の王を倒す」
それが世界を変える方法。たったそれだけでこの世界は帰られる、九人の王がそれぞれ国を勝手に支配しているから世界はまとまらないのだ。
しかも先代の王達は【核】の存在を嫌っている――その影響からか【核】を認めない『魔法使い』がほとんどだ。
そんな奴らがいる中で――進化を諦めている頂点など必要ない。
「だから――私に力を貸せ」
私はミオに協力を求めるが、肝心の本人はやる気がないみたいだった。
「えーそういうの、一人でやってくださいよ」
「……」
「それにシキさんなら出来るんじゃないの?」
出来たらとっくにやっている。確かに【核】のおかげで『魔法』を使えるが――それはあくまで日常の範囲でだ。
戦闘になったらまず勝てない。
それだけ『魔法使い』との力の差はある。それが王となれば尚更だ。
「九人の王の『魔法』は恐らく私など――相手ではない」
真黒木さんでさえ――二人を同時に相手したら恐らく敵わないだろうと言っていたその強さは『異世界の英雄』真黒木さんと同等と考えていた方がいいだろう。
だからこそ、この世界の人間ではない『異世界の魔法使い』が必要なのだ。
「頼む、この通りだ」
深々と頭を下げる。
この世界を支配している九人の王を倒すため――私の頭など、土下座などいくらでもして見せる。今までどんな目に合おうとも下げなかった私は――初めて頭を下げた。
【核】のおかげで日常での差は『魔法使い』とはほぼ無くなった。
後は戦闘での力の差を無くせば――戦争を無くせば世界は平和になる。
その為には。
「九人の王を――倒す」
Ⅰの王 皇帝王 カミュ
Ⅱの王 風来姫 フウキ
Ⅲの王 水読 トキ
Ⅳの王 最低の魔導士
Ⅴの王 不動の王 ゴウザン
Ⅵの王 御神木 ユニ
Ⅶの王 秘境巡り ヒナ
Ⅷの王 地獄よりも燃える男 カグマ
Ⅸの王 輝雷 ライア
「私はこの王達を倒して世界を変える。その為に君の力を貸してほしい」
頭を上げ、ミオの目をしっかりと見る。いま何を思ってるのか私の願いが届いたのか。
それはミオにしか分からない。
「いやだ……僕はそんなことしない。何でこんな世界に来たか分からないけど、そんな事はしたくない」
「な、頼むこの通りだ。私は、私は変えなくちゃいけないんだ。この世界を――」
その時――世界が爆ぜた。