01
「そう言えばいつも持ち歩いているそのかばんには、何が入っているのだ?」
Ⅷの国へとあと少しで到着する。そんな場所で私とミオは野宿をしていた。
野宿とはいっても、【核】を使用して簡易な小屋を建てているので十分に寝泊りは出来る。
木で出来た小屋の中、私はミオに聞いた。
旅は始めた直後に聞こうとしたのだが――いきなり私物に興味を示したとして、ミオ変態扱いされたら堪ったものでは無い。
「これはねー」
ミオはきゃぴきゃぴと鞄を開ける。
肩にかけて持っていたその鞄の中から出てきた物は――火起こし用の木々と、水のろ過用に作られたであろう自作の道具であった。
「おお、これはそちらの世界で使っていたとされる道具ではないか! なぜだ、貴様。なぜこんな物を持っている!」
私は神々しいその道具を崇める。『異世界』の歴史詰まった道具、道具としてのオーラが違う。
「これは自分で作ったんですよ」
「自分でだと! 何と素晴らしい技術を持っているのだ!」
ミオは『身体強化』と言う『魔法』を持っているが手先が器用なようだ。料理も美味いしな。
「それほどでもないですよ」
「私も道具使いとして、こんなレアな物、私も話の中でしか知らないぞ? 何回自分で作ろうとしたか・・・・・・」
「僕は【核】の存在を知らないからこれ使ってたけど――シキさんは魔法使えるんでしょ?」
「『核魔法だ』。魔法は使えない」
『魔法』が使える。
その発言で昂っていた気持ちが一気に冷たくなる。
「細かいなー」
細かくはない。
この世界――【核】が出来る前の世界を経験したものならば――この違いはとてつもなくでかいのだ。
私は【核】が出来て良かったと思っている。現に野宿や旅の際は、かなりお世話になっているしな。
「魔法って何かややこしくてよく分からないです。杖一つでいろいろ出来るのが魔法使いじゃないんですか?」
「そっちではそうらしいがこちらでは違う」
異世界の魔法使いは――チチンノプイで解決してしまうらしい。なんと恐ろしい『魔法使い』だ。
「へー。僕未だに『核魔法』と『魔法』の違いが分からないんですけど。使えない属性があるのは理解しました」
何を簡単な――そして属性だけしか理解していなかったのか。確かに属性は丁寧に説明はしたが……。
とは思ったが、それは私が当事者であったからこそ知っているのであるのだろうか半年前にこの世界に来たミオにとっては、知らなくても当然か。
うんきっと当然なのだろう。
「要するにだな」
私は道具入れからペンと紙を取り出す。
何か最近はこの道具説明用になってしまっているな……。
道具使いとして一つの使い方しかしないのはプライドが何か……あれだな。
「『魔法』は魔力→魔法へと直に変換が出来るが、核の場合は少し違う」
簡単なイラストを付け加えて説明する。
属性の時も図を使用したし、こっちの方が分かりやすいだろう。
「発動手順が魔力→『核』→魔法となっている。要するに核は魔力を魔法へと変換するモノだと思ってくれればいい」
魔力は少なからずどんな生物にも流れている。
人によって魔力の限度は様々だ。
「うん、それよりも意外に簡単な説明の割に、無駄に上手いイラストの方が気になります」
「よせ、照れる」
「凄ーい。なんでそんな上手いんですか? 教えてくださいよ」
「おお、私なりにコツがあってだな」
私が書いたイラストは簡単な人の絵を描いて、次に火を出す魔法を使っているイラストを描いた。
『騎士団』の中でも画伯として有名だからな。
「おお、上手く書けました!」
「じゃないわっ! 今、魔法説明してますでしょうが!」
なんか変な突っ込みになってしまった。
してますでしょうがって……。
「えーノリノリで教えてくれたのに」
突然の突っ込んに文句をつけるミオだが――そんな話をしていたら先に進めなくなってしまう。
「いいか、続けるぞ。『核魔法』は変換するのに『核』を使用している。それ故に『核』以上の魔法は放出できない。また、手順が一つ増える分――『魔法』の応用も狭くなってしまうのだ」
誰でも使えるが、誰でも同じにしか使えない。
誰でもとは『魔法』を使える魔法使い達も使えるので、その差は縮まってはいない。
0:1が1:2になっただけだ。
零を1にするのは大変だからその差はでかくはあるか……。
とは言っても『魔法使い』が使える『核』は自分と同じ属性だけなので、使い道は無いが。
「フウキ戦の時に説明したがまあ、これはおさらいだ」
「なるほど。『核』を挟むとイメージもあまり出来ないみたいですね」
それにしても『核』ってどうやって出来るんだろう?
ミオのその言葉に私は答えられなかった。
「うむ。一応『核』は作られてはいるが――未だに作り方は不明なのだよな」
確かⅣの国に工場があった気がするが、『騎士団』はノータッチだったしな。そうするとⅣの国王が管理してるって訳か。
「それなのに核使ってるんだ……。まあそんな問題ね、便利な物って。それよりさ、僕たちが今向かているⅧの国ってどんな場所なの?」
「Ⅷの国は温泉王国としても有名でな。美貌にいいともっぱらの噂だ」
「美容かー。いいなー」
「君は男だからあんまり関係ないだろう」
「何を言っているんです! 今の日本は男も美容が大事なんです!」
「ここは世界が違うから大丈夫だろ?」
「戻った時のためですよ!」
そうなのか。
私が教えてもらわなかったのか向こうも時代が変わっているのか。
「この国の王はカグマ――地獄よりも燃える男だ」
「あのさ、フウキさんも風来姫とかいってたじゃない? なにそれ」
「これはだな。君たちの世界には通り名とか称号があるだろう。それが恰好よくて使っていたら思いのほか広まったのだ」
「広めないでよ……そんな変なの」
なかでもこの地獄よりも燃える男はかなり気に入っている。
まさにこの国の王を現していると思う。
「地獄よりも燃える男か……想像できないな」
「まあ、会えば分かるさ。それよりも温泉に向けて加速するぞ!」
道具使いの移動道具。
『風箒』――ローズ。
属性『風』の【核】を使って空を飛ぶ箒。
普通に売られている者を改良した私専用の箒だ。
これを使えば格段に速く移動ができる。
「じゃあ、最初から使えばよかったんじゃ?」
「核は高価だからな――中々こういう使い方は出来ないのだ」
『騎士団』は給料も払われてはいるが普通の人々と変わらない。
ちなみに一番儲かる魔法の属性は『雷』だ。
真黒木さんが来てからその価値が一気に上がった。その次は『氷』である。
「道具使いも大変だ」
「そうなのだ。だからあまり使いたくないのだ」
箒に二人乗りする。
……あれ?
当たり前のように私の後ろに乗る。
私の中ではミオには魔法で追いかけてきてもらおうと思ったんだけどな。
「なぜ乗る?」
「え……駄目なの?」
意外そうに聞き返してくるミオ。
「これは一人乗りだし、君は魔法が使えるだろう。身体強化すれば脚力だって強化されていたではないか」
フウキとの戦いでも確か使っていたはずだが?
箒から降り、首を左右に振って私をの方に手を置いた。
「えー、むりかもー」
イラッとした。
時々出るこいつのぶっりこは何だろうな。
「何がだ」
「そんなイメージ出来ないから魔法は使えません」
「何を言っている! 君なら出来る」
手で大きく×を作って否定しているミオをとりあえず、持ち上げてみた。
「無理!」
どうやら、このまま話してもらちが明かない。
それならばしょうがない。
「二人で歩こう」
結局二人共――歩いてⅧの国を目指す事にした。




