第1話 悪の花道咲かせましょう
2015/05/31加筆修正
小さな頃、俺は特撮番組やアニメが好きだった。
ただ、周りと違ってたのは、主人公のヒーローよりもその敵役に夢中だったってこと。
悪のキャラクターって格好よくない?
自分の野心をむき出して、目的に達するためにはなんだってするんだぜ?
例えいかなる妨害(正義のミカタ)が現れても、粘り強く耐え忍ぶその意気やあっぱれだ。
実は今、俺の身体にある異常が起こっている。
「なんで顔が変わっているの……。」
齢24の俺は容姿のあまりよろしくない自宅警備員だった筈だ。しかし、目が覚めてベッドの脇にあった鏡を覗くと、そこには小学2年生位の可愛らしい美少年がいた。髪は金色、瞳はブルー……、俺って確か日本人だったよな。
これは夢だ。きっとそうに違いない、そう思って目をつぶってみた。
……現実逃避乙!
にしかならない。てか、そもそもここはどこだよ?いつもなら、2度寝、3度寝はしょっちゅう、こんなに意識がはっきりするなんてことないのに。昨日の俺は畳に敷いた布団で寝てたはずじゃなかったか?ありえねぇ……。
「ピーターちゃん!熱の具合はどう?」
突如、部屋のドアが開かれたと思ったら、見知らぬおばさんが入ってきた。うあぁ、なんて美人な女性なんだろう。戸惑いしかない俺はじっとその人を見ていた。というか、下手なこと喋ったら不味い気がした。こういう時は黙って状況を把握し、流れに身を任すのだ。
「……。」
ベッドで寝ている俺の額に手が当てられる。ひんやりした手が気持ちいい。
「あぁ良かったわ。大分、熱が引いてきたわね。ホーキンスさんが住んでいるリトナ村近くに、帝国軍がやって来たっていうから、ママは不安で仕方なかったわ。」
そういって、彼女は涙を流しながら小さな身体を抱きしめた。あっ、めっちゃいい匂い。
うーん、なんか只事ならぬワードがホイホイ出てきたぞ。取り敢えず、この身体の持ち主は大風邪を引いて、この美人なママンに看病されていたようだ。ママンの名はクレアというらしく、「痛いところはない?」「もうベッドから動けそう?」なんてすごく心配してくれた。やさしいママンじゃのう。どこぞの太っちょオバタリアンとは大違いじゃ。クレアママンの容姿はこの身体との血のつながりを証明するかのように、この少年と同じ(この身体を俺のものと認識してしまっていいかは迷いどころだが)金髪でブルーの瞳をしていた。あと、パイオツカイデー。そう、パイオツカイデーなのである。
大事なことなので2回言いました。うん、男の子には大事なことである。
軽く会話をしたのち、クレアママンは仕事があるようで、昼頃には戻ると言って部屋を出ていった。会話と言っても、俺は「うん」「大丈夫」位しか言わなかったけど。
……
さて、情報の整理だ。もともと俺は黒髪、黒目の純日本人、しかも、男子ルックスランキングではなかなかの低レベルな争いにしか参加できなかった奴だった。
それが、何の因果か他人になっている。
詳しいことは分からん。だって、そうしないと話が先に進まなそうだもん。哲学に洒落込んで、永遠に解決できない問題を思惑する俺カッコいい、なんてことになり兼ねない。とにかく、容姿はたいへんキュート、ラブリー、パツキン、瞳はブルーな男の子、その名もピーター・クロイツェフ君になっていた。
名前は机の上のノートに書かれてあった。見たことない文字の筈だが、すんなりと頭の中に入ってきた。ピーター君の知識のおかげなのか?
ピーター君は結構な読書家のようで、ラノベ位でしか活字に接する機会のない俺と比べると、蔵書量がかなりある。24の大人が小学生に負けてどうするよ、とも思ったが前向きにいこう。
彼の蔵書を数冊拝借する。……ふむふむ。……なるほど!週刊そう〇んだ!
本を読みこんで分かった事実!
なんと、このピーター君の住む国はエンスピード王国! そして、隣国は世界に名を轟かす超大国、グランツェニア帝国だったのです!
……パードゥン?