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第一話 始まりはいつも唐突に!

懲りずにまた書いてしまいました、やはり難しいですね。

「会長、おはよー」

「ああ、おはよう」


登校時、笑顔で挨拶してくる生徒にこちらも笑顔で返す。

あっ忘れてましたが俺の名は織田(おだ)信隆(のぶたか)、桃山高校に通う二年生…生徒会長やってます。


「会長、怪我大丈夫か?」「どうにか、とはいってもまだ松葉杖無しでは歩けないな」

「そか、お大事に」

「さんきゅ」


約一年ほど前、ちょっとした事故で入院する羽目になり退院したのは数日前の事…まあ、当然留年したわけで本来の年齢なら三年に上がっていたはずだったりもする。

久々に登校した俺を待っていたのは、前生徒会長の足利(あしかが)輝美(てるみ)さんだった。

蛇足ですが男です。


「退院おめでとう!さっそくだけど次の生徒会長、君になったから」


開口一番にこんな言葉を告げられた俺は、驚き言葉を失うが次の彼の言葉にはさらに驚かされ。


「ありえない」


そう、呟いてしまったのは仕方ないと思う。

何故なら…


「おはよー信隆、朝から暗いよー?」


後ろから声がして、振り返ればいかにもぽややんとした雰囲気の女の子。

彼女の名は武田(たけだ)(くろ)、三年で書記をやってます。


「そりゃ暗くもなるよ、俺が生徒会長とか」

「不服ですか?」


後ろから別の女の子の声、見れば黒髪のポニーテールで凜とした雰囲気の子だ。

彼女は北条(ほうじょう)(しずか)、同じく三年で会計してます。それにしても、後ろから声をかけるのは流行っているのか?この分だとあと一人も…

閑話休題


「不服というか不安、いや疑問かな?」

「そんなことないよー!信隆会長に向いてるよ、だからみんな推薦したんだからねー」

「そう言ってくれるのは光栄なんだけどね、玄さん。問題はその推薦なんだ」


どうやら俺は、推薦によって会長に選ばれたらしいのだ。


「正直今でも信じられないよ、自分以外の全生徒による推薦で会長就任とか前代未聞だと思わない?」


そう、俺がありえないと呟いたのはこれ。

2・3人の推薦ならまだしも(それでも吃驚なのだが)全生徒による推薦、しかもそれが俺とか…無いわ、流石に。


「それなら辞退すればよかったのではないですか」


予想はしてたが、またしても後ろから別の女の子から声をかけられる。

小柄で中学生に間違えられそうだが高校の三年、副会長の今川(いまがわ)(はじめ)がそこにいた。


「ま、それを言われると返す言葉もないんだけどね」

「信隆の事です、凡人である自分に生徒会長とか務まらないとか馬鹿なことでも考えてるのでしょう」

「言い方は引っ掛かるのだけど、その通りなだけに反論できない」


ここ、桃山高校は学校の方針なのか生徒は皆武芸に優れている。

玄さんは空手部の主将でもあり、全国大会で優勝している実力者。

康さんは剣道部の副主将、やはり全国レベルの腕の持ち主である。

そして成績優秀、二人とも中間期末で五位以下に落ちたことが無い。

この二人もすごいのだが元はさらにすごい、剣道部の主将で有段者三人を相手に瞬殺出来るほどの実力があり成績は常に学年トップという…見た目からは信じられないよなスペックの持ち主である。

この三人は別格としても、他の生徒も他校に行けばエースになれるくらいの実力はある。

ちなみに俺は、武芸以前に運動苦手です。


「信隆、馬鹿ですか?いや馬鹿でしたね?信隆が馬鹿なのは今に始まったことじゃないですが、本当に馬鹿ですね。」

「元!おま、そこまで言うか?」

「言いますよ、何度でも言います。信隆が馬鹿だと」


思考の海に沈んでいた俺に全く遠慮の無い毒を吐いてくる元。

昔からいつも、なんだよな。俺、元に嫌われるようなことしたのだろうか?


「だけど、信隆が一年前にしたこと。それは誰にも出来ないこと。信隆以外の誰にも…そんなことをやったのですよ。」


落ち込む俺の肩を軽く叩き、元は励ましの言葉をくれた。


「誰にも出来ないような馬鹿な事をしたとも言いますけどね」

「あー、さいですか。それはありがとう」


全然励ましているように聞こえないが、これでも元なりの精一杯の励ましだ。

あまり喜べないのは否定しないけど。


「信隆が自信を持てないならそれでもいいです、でもあたしが支えますから。副会長であるあたしが、ですから──」


思わず、元の頭を撫でていた。


「さんきゅ、俺頑張るよ。今でもまだ自信無いけどな。元と一緒ならやっていける気がする」

「頼りない幼馴染みを持つと苦労しますよ」

「全くその通りなだけに、申し訳ないとしか」

「だから信隆は馬鹿だと言っているのです、苦労してるとはいいましたが嫌だとは言ってません。むしろ…」


後半は小声でほとんど聞き取れなかったが多分悪口だろう。


「二人とも、仲がいいのは結構なことだが」

「そろそろ予鈴がなる時間だよー」


それまで静観していた、康さんと玄さんが話しかけ…


「玄さん!康さん!」


俺の両腕、康さんは右腕に玄さんは左腕に…それぞれ抱きついてきた。


「それと、先程の元の言葉を少々訂正させてもらおうか」

「そうだよー!信隆を支えるのは元だけじゃないよ、私達"甲相駿(こうそうすん)トリオ"なんだからねー!」

「玄さん!康さん!あ、あたってる…」

「「なにが?」」


なにが?それは言わない、つか言えるかー!!!

それに、玄さんはともかく康さんは絶対分かってやってる。


「っ!!!!!!!!!!!!」


さっきの衝撃(?)で落とした松葉杖を拾い上げた元は俺の右足に強烈なローキックをぶつけた。


「先に行ってます。信隆、遅刻したら反対の足にもお見舞いしますからね」


そう言うが早いか、松葉杖を持って校舎の中へ入っていった。


「元、それなら松葉杖持って行くなよ」

「信隆は相変わらず残念なのだな」

「まったくだよー、信隆は残念残念ー♪」


項垂れる俺に対し、優しい言葉をかけてくれる二人…泣いていいよな?


「仕方ないねーそれじゃ信隆はこのまま運ぼー」

「そうだな、私達にも責任の一端がある以上このままにしておくわけにもいかないのでな」

「いやいや、さすがにこのままってのはまずいよ。後は自分でどうにかするから」


恐らく鬼の形相で待ち構えているであろう、元の逆鱗に触れることは想像に難くない。


「「でも信隆、一人で歩ける?」」

「……………………………………無理です」


そもそも一人で歩けるのなら、松葉杖など要らないわけで…

俺には選択の余地は無いようです、さらば俺の足。


「ああ、不幸だ」



読んでいただき、ありがとうございます。


少しでも楽しんでもらえたら何よりです。

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