第1話 目覚めの前日
いつもの風景。いつもの行為。
…本人からしてみればの話だが。
「でね、先公がマジムカつくんだよ?!」
他人がこの風景を見たら、間違い無く引くだろう。
少女が人形に向かって話しかけているのだから。
「兎に角、今日は疲れたーι」
この少女の名は月影 夜。これでも立派な中学生。家は『月影剣道場』という立派な剣道場をやっている。その影響か、夜は剣道部だ。
現在、夜は月影家の蔵にいる。人形に会うためだ。
「ふぁ……暗いなぁ」
夜が話しかけている人形は木製の等身大男性人形。
髪は白の長髪、ところどころ青くメッシュが入っている。瞳は海の様に鮮やかなマリンブルー、服は黒で統一されていた。
聞いた話では、結構古い物だそうだが、どう見ても服は現代的で、謎の人形だ。
ちなみに、人形は超美形。街中に放置すれば、女性方による人形争奪合戦が始まりそうだ。
「じゃ、私寝るね…」
目を擦り擦り立ち上がる。ジャージについた埃をはらった。
夜は人形に歩み寄る。
そして…
「お休み」
ちゅっ。
人形にほっぺちゅーした夜。
これで夜に彼氏がいない事が分かりますね。
「じゃ、朝また来るから!」
返事は無いと知りつつも、人形に手を振る。
そして静かに蔵の扉が閉められた。
夜は気づかなかった。
人形の頬に微かに朱がさしていた事に。
人形の瞳が僅かに揺らいだ事に。
己がした行為が、己の運命を大きく変える事に……
幕は開かれた。
役者も揃った。
さあ、
楽しい人形劇の開幕――――
.
始まりました、戦闘破導人形…
長編になりそうなので、頑張って更新します。
評価よろしくお願いします!