第2話 2-3 【抜き打ちテスト】
「いいから、生活指導室に来なさい」
「今!?」
レイピアは面倒くさかったが、しぶしぶ生活指導室へ向かった。
生活指導室はB組とO組の間にある小さな個室の部屋だ。
ただテーブルとソファーだけで、あとは何の飾りもない寂しい無地色の世界だ。
「教室じゃあ話しづらいし、ここしかないんだよなぁ~」
独り言言いながらドスンと座るベイチー。レイピアは緊張しながらゆっくり座る。
ピリピリと張り詰めた空気はどうにも慣れない。
「こっちに来て2日しか経過してないし、お前に残酷な運命と覚悟。それとその紫の十字架のことも話さなきゃなんねぇからな…」
「十字架?」
「昨日からずっと気になってた。その十字架は各惑星に選ばれた者だけが手に入ることのできる十字架なんだ」
「惑星…」
「月、火星、水星、木星、金星、土星、天王星、海王星、冥王星のうちのお前は【土星】の守護を持つ十字架に選ばれた」
はてなマークがどんどん浮かび上がるレイピア。
「ただそーやって現実逃避してるのはお前だけじゃない。俺の妹とイトコもその十字架に選ばれた。でも今はバカみてーに元気だがな」
「そうなんだ…」
「気のない返事だな。でもお前の十字架、この学園の創始者と同じ色だ」
「創始者って誰ですか?」
「後で校長室にある肖像画見ればいいじゃない」
これも面倒くさかった。
後で見ればって言われても行く暇がない。
「あと、今朝のあの準2級の竜を殺ったの、レイピアだよな?」
いまさら?と驚くレイピア。
でも何故知っている?とテレパシーのように送る。
「リースがガチガチに震えだしてな、
『れ、れれれレイピアが、がががっ…じゅじゅ準2きゅきゅ倒した、たたっ』
ってめちゃくちゃ怖かったらしいぞ」
(あのおしゃべりめ!!)
「ま、あのまま裏レイピアが現れなかったら、今頃お前ら死んでたぞ」
「物騒なこと言わないでよっ!!」
クッションをわし掴みにして思いっきり投げた。
投げてきたクッションをノーリアクションで受け止めるベイチー。
思わずレイピアの口から「ちっ」と舌打ちをした。
「バカ、落ち着け。あの竜はな【ヒューラッドスイバルドラゴン】っつてな、絶滅したはずの竜がまだ2体もウロチョロしたらしいんだ。ちなみにどっちもオス」
「へー」
「普段はそんな凶暴なんかじゃないんだよな~。原因が今のとこ掴めてないみたいだし」
「先生、大事な話ってアレだけですか?」
「大事な話?もーいーや、後で」
「はいーーーーーーーーっ!!?」
「だってさ、もうすぐ学食の時間だぜ?」
時計を指差すと、確かにもうすぐ正午になる時間帯だ。
「先に行ってろ。オレはちょっとしたら食堂室行くから」
と、言うので先に生活指導室を後にした。
クラスへ向かうとリースと男子3人と一緒にやってきた。
「レイピアーっ!一緒に食べない?」
「ちょうどよかった~!食べにいくとこなんだ。あれ?あなたは??」
「えへへ、聞いて驚け!彼氏のリチャード・フィリップよ」
いつから付き合ったのか、驚くレイピア。
まだ皆と馴染んでもない彼女はまだ知らないとこだらけだ。
「と、秀才のリージョン・ブレイブとそのボサボサ頭のブライアン・オーシャン」
「待て、誰がボサボサ頭だ」
「まぁまぁ、落ち着けよブライアン」
「ねぇねぇ、今日の献立は何?」
リージョンはブレザーの裏ポケットからプリントらしきものを取り出した。
本日の献立を調べた。
「えーっと…野菜豊富シチュートリュフ入りに魚のムニエル、フルーポンチと期間限定のとろとろプリンだね」
「期間限定の…」
「プリン…ですって!?」
「こうしちゃいられない!先に行って来るわっ!」
「俺も!!」
慌ててリースとリチャードは走って行ってしまった。
たかが期間限定プリンぐらいで口にしたいの?と思った。
「あの2人、期間限定とかお菓子やら聞いたり情報収集して、あーいう風になるんだよ」
「通称【甘党バカップル】」
「へ、へぇ~…」
なんとなく分かった気がする。今朝校内案内した時ベイチーが期間限定のお菓子をあげるからとか言って誘惑に負けたのは覚えてる。
女子って甘いものに弱い!自分もそうだけど…。
食堂室に着いた3人はリースとリチャードを探した。
「あ、いたぞ」
先に見つけたのはブライアンだ。
彼の後についていくともぐもぐとシチューやらムニエルやらたくさん食べていた。
(なにこの食べっぷりは…お菓子じゃなくてもこんなに食べるの!?)
「なんだよ~、腹減ったんならもっと早く先に行けばよかったのに」
と呆れて言いながら座るリージョンとブライアン、そしてレイピア。
ご飯食べ終われば2時間もの昼休み時間がある。
昼寝でもよし、ロビーで友達とおしゃべりするのもよし、屋上で星をみるのもよし、なんでもいい自由時間だ。
「ねぇ、明日抜き打ちテストのことできになったんだけど…能力ってなに?」
「能力?あぁ~人それぞれ色んな能力持ってるよ」
「え?どんな能力なの!?」
「あたしは悪夢に陥ってしまった者たちを幸せの楽園へ導く【夢】なの」
「オレは迷える詩人を村まで導く妖精【森】だ」
「で、秀才君は尽きかけた火を暖かく灯す【炎】」
「秀才いうな」
「で、ボサ…あ、いや、ブライアンは邪魔する雲を消し、光る星照らす【空】」
「へぇ~…」
抜き打ちテストで貰える称号なのか、ある意味かっこいい称号。
自分も明日何の称号もらえるのか気になってしょうがない。
「レイピアの称号気になる~」
「といって、自分の称号落ちないようにな」
「落ちないわよ、そういうリチャードは落ちるんじゃないの?」
「オレも絶対落ちねーよ」
「また愛の夫婦が始まったか」
「そうだな。オレは止める気ゼロだ。リージョンが止めてくれ」
「この後オレ課題やんなきゃいけないんですけど」
「それ後でやればいいじゃねぇのか?」
「誰のせいでオレの部屋に来てゲームしたんだ?」
「うっ!!」
(マジメだ…)
「あ、レイピア。この後何か予定ある?」
「ううん、何にもないけど…」
彼女に近づいて小声で、
「一緒にフィシアのお見舞い行かない?」
「え?課題はやらなくていいの?」
「アレ、嘘。だからこっそりココ抜け出してリチャードたちにバレずに行こう」
リージョンにつられるまま、こっそりと食堂室を後にした。
今朝病院に行ったんだけどなぁ~…。