第1話 3-3 【すべてはここから…】
これ以上キリがないので、一人づつ質問されたことをテレながら答えた。
次の質問に答えようとしたその時、
「あっ」
「あら、あなたは今朝の…」
そう、今朝校門で声をかけたあの美女。
先輩だと思ったが、まさか同じクラスとは予想もしなかった。
「フィシア、知り合い?」
その美女の後ろにぴょんと入ってくる。これまた可愛いらしくキューピット的存在の美女。
「今朝あったのよ。この世界にやってきてまだ浅いわよ」
「えっ、そうなの!?」
そこまで驚く?と思ったレイピア。
さらにぐいっとレイピアの頭を見て、
「ねぇフィシア。この子さ、ロベリアと同じ身長だしゴスロリやコスプレいけるんじゃない?」
「待て待て。レイピアまで巻き込まないでよ」
呆れた顔でため息をつく。
今朝であった美女の名前はフィシア・クリスタリード。2-Aのクラス委員を務めるマジメな生徒。もう一人はリース・ジュエル。ゴスロリやコスプレが大好きで、趣味は手作りでファッション雑誌にも載るほどの腕を持つ天才。
こんな天才秀才のいるクラスに入っててよかったのか、少し戸惑いがあった。
「じゃ、5分早いがSHR終わるぞ!それと、フィシアとリース。レイピアを学園の隅々まで案内させろ」
リースは「えぇ~」と面倒くさそうな顔したが、ベイチーが「限定お菓子買ってくるから」という甘い誘惑に負け、レイピアを引っ張って教室を後にした。
「あんたまた誘惑に負けるなんて…」
「だってぇ~」
「『だってぇ~』じゃないわよ~。全く、彼氏じゃなくて先生までも…」
「あぁぁぁーー!これ以上言わないでーーっ!!」
なるほど。リースはお菓子に弱い…。とこっそりメモするレイピア。
まだまだ彼女には知らない部屋などたくさんある。一日にでも早く場所を覚えるため持って来たものだ。時々気になる情報までもメモってしまう。
まずは1階から案内した。A棟は昇降口、学食、保健室、鍵管理室に視聴覚室。移動して次にB棟には応接室、校長室、理事長室とある。
さらに移動してC棟は社会科学習室のみだけ配置されてあった。
「社会科学習室はあまり授業じゃ使用しなくなって、今は物置場所として使用されてるわ」
「そうなんだ~」
「さて、次は2階へ行くわよ」
3人はC棟の階段から2階へ昇った。
2階のC棟は1年の教室がズラリとある。そこでレイピアは一つ疑問を抱く。
「リース。AとBはともかく、何でOとABってあるの?」
「最初ココへ来た時、シャロン看護教諭が言われてなかった?血液型がどーのこーのって」
そういえばそんなことを聞かれていた。やっぱりクラス分けは血液型で決まるのかと半信半疑で思いでいた。
「そんな堅い事は置いといて、B棟へ行くよ~」
B等は職員室、印刷室、相談室、図書館、放送室。A棟は2年の教室と生活指導室、生徒会室。
そして3階へ昇ると、A棟は理科室、家庭科室、PC室、B棟は3年教室と進路指導室。
C棟は誰もがゆったりとできる広いスペースをとったロビー。
最後はなんと幾千の星を眺め放題の広い屋上。おまけに二箇所に設置してあるのは巨大な円型噴水。
周りはあちらこちらに埋められた色とりどりの花。季節によって埋め変わるらしい。
また別の名を【夢のガーデニング】と言われている。
「やっぱ、屋上はいいわね~」
「そうね。レイピアごめんね、ぐるぐる回って…大体覚えた?」
「まだ慣れてないけど、そのうち生活すれば場所も覚えてくるから」
「やっぱりそうよね。自然に場所を覚えるからね」
「それに3階のロビーはすごかったな~。あんなの初めて」
「でしょ~!でもほとんどが3年生が占領しちゃってさ、なかなか後輩に明け渡し、て?」
リースが喋るのをやめた。いや、あるものを見て固まっている。
フィシアとレイピアの後ろに、2体の竜がいた。
「2人とも!よけてっ!!」
「えっ!?」
遅かった。二人は竜の火力により受けてしまう。
幸いにもレイピアは軽い火傷で済んだのだが、フィシアは左足に火傷を覆ってしまう。
慌ててレイピアはフィシアの元へ駆け寄る。
様子はあまりも痛々しく、苦しそうな表情だった。
どうしてこんな所に…そもそも何故学園に竜がいるのかさっぱり分からない。
(早く、早くしないと…死んじゃう)
「フィシアは私が応急手当してるから、レイピアは誰でもいいから近くの先生を呼んで!」
もう彼女の耳にリースの声は届かなかった。
その時、胸に輝く紫の十字架が眩しく光っていた。
濃い紫の髪から薄い紫色の髪へと変わり、十字架は剣へ変わる。
その剣を握り締めた瞬間、人格は180度変わった。
「お前、その女を連れてここから立ち去れ」
「はぁ!!?」
「こいつらは、私が殺す」
「な、なに言ってるの!?そいつら準2級の竜なのよ!?レイピアが相手す…」
グヴァアアアアアアアアッ!!!!
いつそこにいたのか、竜の両目を切り裂きその次に片方の竜を瞬く間に切り裂いた。
そして傷ひとつなく無事に着地した。
そして、元に戻りその場から倒れこんだ。
「あ、レイピア!!」
リースは急いで駆け寄ったが、すでに気を失っていた。
彼女の手元には紫の十字架が置かれてあった。
突然の人格変化により、レイピアの運命が左右する。
それはまだ14歳の少女には過酷で残酷な運命が待ち構えてあった。