第1話 2-3 【すべてはここから…】
まるで人の家に勝手に上がりこんでは、こうやってテレビの電源を入れてダラダラと過ごしているダメな大人は何度か見たことがある。
「あ、あ~…お前か、保健室で寝ていた。シャロンから聞いたぞ」
体をゆっくりと起こして、レイピアの全身をジロジロと見る。
その目線は明らかに変態目線。
「突然ですまねぇ。オレは2nd Blod Type A Class、通称2-Aの担任のベイチー・ヴェネル・ディカムだ」
「はぁ…」
2nd Blod Type A Class?何それ??
Blod Typeって血液型だよね?
クラス分け血液型で分けられるの!?
「あ、ちなみにシャロンっていう人は保健医だ」
「へっ!?あ、そ、そうなんだ~」
アハハと誤魔化して笑うと「あれ?何か言おうといたけど…ま、いっか」と忘れた。
ベイチーはちょくちょくと気になっていた。レイピアの胸に輝く紫色の十字架。
だがそれを調べるのを後にした。
「あれ?お前に何言おうとしたか忘れたし、明日でいいや」
「あ、でも少しだけ教えて…」
遅かった。さっきまで目の前にいた人が消え…いや、人形の姿と変わった。
黒い羽根といくつか舞っていながら。
「もう、なんなのよ。知らないっ!」
ぐったりとソファーに寝転がり、いつにしか眠りについた。
その人形をぎゅっと握り締めながら。
レイピアはある夢を見た。
暗闇にぽつんと彼女ひとり。
回りは誰ひとりもいない。
(ここは、どこ?)
知らない学園、知らない世界。
生きてきた国とは違う世界に彼女はここにいる。
彷徨ったレイピアはとある人物に目が止まった。
(あ、あの人は?)
美しい顔立ちにサラサラのロングヘアで、レイピアと同じ胸に輝く紫色の十字架を身につけていた。
その人は権力争いや抗争を好まない大人しい女性だ。
だがその大人しさから一変、別の人格へと変わった。
鋭い目つきで人々を恐怖へ突き落とす。
天使から悪魔へとなってしまった。
(なんで!?なんで人格がかわったの?い、いや…)
「いやぁーーーーーーーっ!!」
「うるせぇぇぇーーーっ!!」
ハリセンで強く叩く人形。しかもサイズは小さいのに素早く動いている。
「あのな、オレこう見えても低血圧なんだぞ?」
「低血圧って、もしかして!」
そう。この人は昨日リビングでダラダラしていた先生であった。
聞けばベイチーは、ある一定時間が切れると人形の姿に戻ってしまうという変わった呪いなのである。
「って、人が説明してる最中で二度寝すんじゃねぇよ!起きろよ、学校行くんだぞ!」
人形から人間の姿へ一変し、真っ先に布団を奪い無理矢理にでもレイピアを起こし続けた。
十分後、やっと体を起こしフラフラと立ち上がった。目を擦りながら、
「ねぇ、学校行くって言ったって制服なにもないよ?」
「あぁ~、今朝届け立ての制服あるぞ。ほら、そこに」
指差した方向には、確かに真新しい制服が置かれてあった。
ほぼ無地で水色のYシャツに、青色で襟には黒いラインのブレザー、紺色と黒のラインのスカートを用いたごく普通のデザインだ。
試着してみるが、ちょうどよくサイズがピッタリだ。
「おぉ、似合うぜ。じゃ、さっそくオレの学級へ行くか」
スタスタと早歩きで行ってしまった彼を慌てて追いかける。
まだ朝8時15分くらい。朝といってもここは宇宙にいるので当然外は真っ暗だ。
学園に着くと、ある一人の女生徒が近づいてきた。
「先生、おはようこざいます」
「あぁ、おはよう」
「あら?その子は新人ですか?」
「あぁ。今日から2-Aの生徒なんだ」
「へぇ~そうなの?身長ちっちゃいから中1くらいかと思ったわ。まぁ、いいわ、よろしくね」
「あ、うん」
ぎこちない返事で交わした後、女生徒はその場から去って行った。
同じ制服のデザイン、もしかして先輩なのか?
「身長、私もあんなのだったら…」
「お前漏れてるぜ」
もう何分も歩いたのだろうか、やっと教室へ着いた。
教室はあまりにも綺麗で傷や落書きなど一切ない。
「わ~っ!すっごいキレ~イ!!」
「一流の清掃員が掃除してるからな。さ、開けるぜ」
ベイチーは教室のドアの取っ手を掴み、勢いよく開け叫んだ。
「野郎ども喜べ!!女子だ女子ーーっ!!」
「おぉーーーーーーーっ!!!」
男子達は勢いよく一斉に立ち上がった。一部はぽかーんとしていた。
女子達も混ざってレイピアを囲み質問攻めした。
「可愛いじゃん!」「なぁなぁ君どこの国?」「好きな人のタイプは?」などなど聞ききれないほど質問された。