第1話 1-3 【すべてはここから…】
ここは、どこ?
私はあの3泊4日の修学旅行ハワイ行きの便に載っていたのに。
どうして保健室にいるんだろう?
なにがあったんだっけ?
…ダメだ、何があったのか思い出せないや…。
あれ?どこからか声がする…
お母さん?お父さん?
ううん、違う。お母さんとお父さんの声じゃない。
この声は知らない人の声…
「…ということで、…リア、この子をクラ…まで…」
何を言ってるの?聞こえないよ…。
もう少しだけ声を大きくして…
ドサッ!
「ん?何の音かしら?」
「もしかして、今日来たばかりの子ですか?」
「たぶん…」
慌てて保健医の教諭が彼女の眠っているベッドへ向かった。
そこにはベッドから落ちてしまったせいで、頭がズキズキと痛んでいた。
「あなた、大丈夫!?」
「はい~…大丈夫じゃないですぅ~」
「あっちゃあー。たんこぶできて…えっ?」
保健医は言葉を失った。彼女の胸に輝く紫色の十字架が首にかけられてあった。
(この子、さっきまで所持してなかったのに…まさか…)
「先生?」
「へっ!?」
保健医は我に返った。すぐさま袋に氷と水を入れて彼女の頭を冷やした。
冷たいのは当然だが、しばらくの間はガマンするしかなかった。
すると保健医は机から何やら書類をとり始めた。
そして彼女にこう告げられた。
「さて、あなたにいくつかの質問をするね。簡単なことなので難しいことは考えないでね」
コクリとうなずく彼女。これと同時に簡単な質問が始まった。
「名前と生年月日を教えてください」
「レイピア・レイエス。8月6日」
「血液型は?」
「A型」
「ふむふむ…」
質問の答えをスラスラと書類に書く保健医。
レイピアと名乗られた彼女に先ほどからあの紫色の十字架が気になってしょうがない。
言っていいのか言わなくていいのかは迷う保健医。
「えっと、質問はこれくらいでいいわ」
あっさり面接は終わってしまった。
「え?たったこれだけ??」と驚くレイピア。
「それにしてもA型かぁ~。Blod Type A Class。あ、言い忘れた。あなた齢は?」
「とわい?」
「年齢のことよ」
「14歳ですけど?」
「14歳…てことは中学2年生ね?」
「はい、そうです」
忘れないように書類に記入した。2nd Blod Type A Class,と。
「さ~て、今日は遅いし同じクラスで生徒会長である子に寮まで案内してあげるからね」
と強引に腕を掴み、廊下へ連れ出された。
当然大人の握力なので痛いのは当たり前だ。
「ロベリアー!長い時間の間待っててごめんなさいね。レイピアを寮まで案内させてちょうだい」
「わかりました」
とまた強引に掴まれズルズルと引きずられていった。
まるでレイピアを死体扱いに振り回されていた。
2人のを見送った保健医はまだレイピアの所持していたあの紫色の十字架。
まだ気になって気になってしょうがなかった。
(この学園の創始者、シェリー・コルネットと同じ色の十字架であり、2重人格の恐るべき能力があるとか聞いたことがあるけど…まさか!!)
青ざめる保健医。あの十字架は創始者シェリーの血が引いているのか?
もしもそうであらば…
(調べる価値がありそうだわ…)
不意に不気味な笑顔で笑い、鎖で巻かれた十字架を手に取りただ単に見つめているだけだった。
その頃、2人は寮へ到着した。
管理人から新しい部屋のカードキーをもらい、最上階の部屋へと向かった。
「ここ、何階まであるの?」
「25階まであるわ。レイピア運がいいわね」
「へぇ~…あの、ロベリアさんは何組ですか?」
恐る恐るロベリアに聞いてみた。相変わらず冷たい口調で
「レイピアと同じA組よ」
「そ、そっか。よろしくね」
会話が終わってしまった。この気まずい空気を何とかしないと、何か話題を作らなければと思った瞬間…
『最上階です』
「えっ!?」
いつの間にか最上階に着いていた、しかも一緒に乗っていたロベリアまでもいない。
「えぇ~…ちょっとぉ~…最上階ってたった一箇所しか部屋ないじゃん…」
グチグチ言いながらカードキーをかざして、ロック解除の音がなると入った。
すると…玄関を見ると知らない男の靴が置いてある。
まさか男女共同寮なのか!?と恐る恐るリビングへ向かった。そこにいたのは。
「えぇぇっ!?」
「んー?」
レイピアは驚いた。リビングで日本のお笑いテレビ見ながら海苔つきせんべいを食べていた若い大人の人がくつろいでいた。