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時を超えての旅人達

作者: 春口 仇
掲載日:2026/09/21

「旅」要素は薄めかも...

俺はしがない旅人だ。


数年前から訳あって世界中を旅している。


俺はとある傷を背負って、旅をする。


その傷はとてつもないものだ。


昔々の話とはいえ、許してはくれないだろう。


カチカチの椅子に腰掛けて、タバコを吸う。


大して美味いとも思わないのだが、脳がニコチンを求めてしまっている。


餌付けと同じ感覚だ。ボロボロになっていく肺を哀れむ。


今日は夜景が綺麗だな、なんて柄でもない事を考えて、窓の外を見る。


眼下には人々がごった返し、無数の頭がいちいちせわしなく動いている。


ふっ、と笑った口の隙間から白い煙が漏れ出し、天井に当たって広がる。


赤く盛って燃えたタバコの先が一瞬にして白く灰になる。


パラパラと落ちていくその一片にどうしようもなく悲しくなるのは俺だけか。


ふっ、と今度は自発的に煙を吐き出す。


立ち上がる煙は見ずに、下にある人々を見る。


その中に一人、白い肌をした人間がこちらを見ていた。


いや、正しくはただ見上げていただけなのだろうが、俺には見過ごせなかった。


俺の境遇ももちろんあるとは思うのだが、何よりおかしいのはその顔だ。


日系人っぽい顔立ちにも関わらず、髪は茶色がかっている。


服は派手でもなければ地味でもない、万人に合う服装だ。


しかし、手には大きなキャリーバッグを持っており、観光客であると思われる。


年齢は高校三年生だろう。きっと。どちらにしろ、一人海外旅行にはまだ早い。


しかし、ここは観光地ではない。メインの観光地は、川の反対側だ。


なぜここに?それに、それにあの顔は、あの背格好は。


震える手が、更にタバコの灰を振りまく。真っ赤な絨毯に、白い雪が降り注ぐ。


近くにあった机に適当にタバコを押し付けて、火を消す。


急いで扉を開け、走って迎えに行く。


あいつは、俺の愛息子だ、と確信した。


それと同時に疑問も降り掛かってきた。


なぜ一人でここへ?なぜここにいる?俺の過失か?


ろくな結論さえ出なかった。兎角亀毛ではないのか、とさえ思った。


とにかく急がねば、と階段を何段も駆け下り、足がもつれそうになるのも厭わず走った。


早く行かねば。その一心だった。遅れれば、まずい。


高級そうな絨毯を踏みにじり、自動ドアに苛つく。


外に出た、が息子の姿がない。どこだ。どこだ。


必死に首を振り、目を凝らす。


路地に入り込む、あの大きなキャリーバッグが目に入った。


あそこだ。


見つけた。次こそは。


人混みの中を駆ける。


靴を踏み、肩に当たり、怪訝な顔をされる。


どうでもいい。


肉をチラつかされた獣。帰り際の女をみる男。その全てに例えられるだろう。


路地に入った。


あいつは眼の前を歩いている。呑気なものだな。


手を伸ばす。新鮮な血肉に飢える屍人だ。


あと少し。


捉えた。


突然、顔の横を照らす光。思わず顔をしかめる。が、見失うわけには...。


何だ?甲高い音?これは、これは、ブレーキ音...。もしや


ドンッ

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