一.眩しい日常と、小さな約束
【本書をお読みになる前に(はじめに)】
本書をお読みいただき、ありがとうございます。
本作は、思春期の少女たちの心の葛藤と、ある「真実」をめぐる再生を描いたフィクションの物語です。
ご一読いただくにあたり、以下の点についてあらかじめご了承いただけますと幸いです。
描写に関するご注意
作中には、摂食障害に関する生々しい心身の描写、自傷行為を想起させる表現、および重大な事故・精神的苦痛に関する描写が含まれています。これらは物語の演出上必要な表現として記載しておりますが、心身の状態に不安がある方や、悲しい記憶を呼び起こされる恐れがある方は、ご自身の体調に合わせて読み進めていただけますようお願いいたします。
医療描写について
本作に登場する病状や診断、医療に関する展開は、あくまで物語としての設定であり、実在の特定の医療機関や、すべての症例に当てはまる医学的見解を示すものではありません。
少女たちが苦しみの果てに見つける光を、最後まで見守っていただければ幸いです。
登場人物
1. 楓
【表向きは完璧主義で社交的、内面は非常に繊細で傷つきやすい少女】
性格: 元々はクラスの中心にいるような明るく活発な性格で、友達思いな一面を持っています。しかし本質的には「周囲の目」や「評価」を人一倍気にしてしまう繊細さがあり、自分への小さな批判を深く受け止めて抱え込んでしまう、生真面目で脆い内面を持っています。
2. 紬
【孤独を抱え、他者と深い痛みを共有したいと願う少女】
性格: どこか儚げで、周囲に強い拒絶や心を閉ざした雰囲気を漂わせています。大人への不信感が強い一方で、自分が認めた相手に対しては非常に強い執着と依存心を見せる、純粋ゆえに極端で危うい気質を持っています。
3. 凛
【誰かの痛みにそっと寄り添える、穏やかで共感力の高い少女】
性格: 物静かで落ち着いた雰囲気を持っています。自分が苦しい状況にあっても、同じように苦しんでいる人を思いやれる優しさがあり、言葉少なげながらも相手の心にそっと寄り添うような、深い包容力と共感力のある性格です。
4. 楓の両親(母親・父親)
【娘を愛するあまり空回りしてしまう、不器用で必死な親たち】
性格:
母親: 先回りして心配しすぎてしまう、過保護で焦りやすい性格。愛情は深いものの、必死になりすぎて周囲が見えなくなる一面があります。
父親: 物静かで、娘との接し方に戸惑う不器用な性格。感情を前に出すのは苦手ですが、陰ながら家族を支えようとする静かな優しさを持っています。
5. 陽葵
【素直で流行に敏感な、等身大の今どきの少女】
性格: 自分の「好き」に真っ直ぐで、友達と楽しいことを共有するのが大好きな明るい性格です。悪意がなく素直な気質ですが、それゆえに相手の細かな心の変化や裏にある葛藤には少し疎い、良くも悪くも無邪気な一面があります。
教室の窓から差し込むうららかな光の中、女子たちの黄色い歓声が響いていた。
その中心にいるのは、いつもクラスを明るく引っ張る一軍トップの少女、楓だ。
「ねえねえ聞いて! 今度、推しの握手会に行くんだ〜!」
仲良しの陽葵楓が、両手を合わせて目を輝かせながら声を弾ませた。
その言葉に、楓はパッと顔を輝かせ、身を乗り出す。
「えーっ、いいなー! 私も行きたーい!」
「じゃあ、一緒に行こうよ!!」
「うん、一緒に行こう!」
弾むような約束。
「やったぁ! 楓と一緒なら待ち時間も絶対
楽しいよ!」
「私も! 2人で並んで、推しにびっくりさせちゃおうね!」
「うん! チケット、なんとか2人分確保できるように頑張ってみるから!」
「本当に? ありがとう陽葵! 楽しみすぎて今から心臓がバクバクしちゃう!」
家に帰ってからも、楓の頭の中は推しのことでいっぱいだった。
どんな服を着ていこうかな……。
せっかく推しに会えるんだもん、世界で一番可愛いって思われたいな
陽葵もすごくおしゃれしてくるだろうし、私も負けていられないよね。
並んだときに『あのニ人、可愛いな』って推しの目に留まりたい。
絶対に、最高の私で行くんだから!
それからの楓は、持ち前の行動力をフルに発揮した。
雑誌をめくっては小学生向けのメイクを研究し、お小遣いをやりくりしてはおしゃれな服を探した。
ライブ映像を観戦するときも、画面の中の推しに見つめられているような気がして、自然と背筋が伸びる。推しに会うための努力は、楓にとって純粋な幸せそのものだった。




