ふゆねこ
猫は捨てられてはじめて冬のさむさを知った。
夜空には星がキラキラ輝いている。
まるで飼われていたときの子供がいじっていた豆電球のようだ。夜ってこんなに暗いんだ。
なるだけ大きな明かりをたよりに、うろうろしていたら大きな家についた。
さむくてたおれそうだ。プライドをすてて戸をかりかりひっかく。にゃあにゃあ鳴く。
くもりガラスの向こうから人のけはいがして、少しびっくりしたけれど、もっとびっくりしたのは、戸があいたとき。
ふわっと、あたたかい空気と木の香りがした。
大人の人間が何か言って、猫はゆるしてもらえそうだったので玄関へ入った。
もみの木が青や赤にキラキラ輝いていた。
にせ物の木だ。ここの人間は木の命をうばいたくないのかな、と猫は思う。家には木を使っているけども。
大人の人間は皿を持ってきた。
米が温かいスープに溶けている。
猫は空腹がこみ上げ、がふがふと食べた。
皿までなめたあと、小さな女の子が走ってきて、毛布を広げた。猫はされるがままに毛布にくるまれ、ピョコンと顔を出すと女の子は頭をなでた。
大人の人間が来て、女の子にやんわり何か言った。耳もとにふしぎな機械をあてながら。
おなかがいっぱいになって、あったかくなったら、眠たくなって、毛布のなかで目を閉じた。
真夜中に目が覚めたけど、作りものの木がキラキラしているので安心した。
夜が明けきらぬころ、音楽が鳴った。
大人の人間が走ってきて、明かりがつき、彼は玄関のサンダルをつっかける。
猫にはわかっていた。人間にはわからないことがわかる。
戸が開く。もとの飼い主がそこにいた。
この家の主人と知り合いだったのだろう。
飼い主に戻った人間は涙を流しながら猫を抱き上げ、なにごとか言った。
猫はにゃあといい、後ろを振り向く。
家の主人は飼い主をしかっているようだ。
小さい女の子はそんなことはどうでもよくて、どうやら猫ともっと一緒にいたいらしい。
猫は思う。どうやらまたここへ遊びにこられるらしい。
星はまだキラキラしていた。
主人の車はあったかい。
にゃあと高くないた。もっとよい待遇を!
どうもわれら猫は、人間の気持ちをキラキラさせることがあるらしい。
あのにせ物の木のように。
えへん。




