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第38話 磁力対策は、原始的な暴力とハイテクな妨害で



「……あはははは! 傑作! あの最高傑作の装備を、敵の目の前に置いてきちゃったの!?」


城塞都市ヴォルテックス、天才魔導具工房。

アフロヘアの少女、ミントさんがお腹を抱えて爆笑していました。


「笑い事じゃねえよ! 俺たちは命からがら逃げてきたんだぞ!」

「すまない……。武人として最大の恥辱だ……」


カイルさんは顔を真っ赤にし、エレナさんはどんよりと沈んでいます。

無理もありません。冒険者にとって武器と防具は命そのもの。それを置いて逃げ帰るなど、裸で街を歩くより恥ずかしいことです。


「で? ボクに泣きついてきたってことは、あの『磁場』を何とかしてほしいってことでしょ?」


ミントさんが涙を拭い、ゴーグルを装着しました。


「話を聞く限り、相手は『雷磁の巨獣マグネ・ベヒーモス』だね。体内の雷袋で電気を発生させ、背中の結晶を通じて強力な磁界を作り出している」

「対処法はあるのですか?」

「原理が分かれば簡単だよ。要は、磁界を乱せばいい」


ミントさんは作業台から、手のひらサイズの金属球を取り出しました。

チカチカと不吉な赤い光が点滅しています。


「『磁界撹乱手榴弾マグネ・ジャマー』。これを敵の近くで爆発させれば、一時的に周囲の磁場を無効化できる。効果時間は約30秒」

「30秒……!」


カイルさんが身を乗り出しました。

30秒あれば、床に張り付いた装備を回収し、装着することができるはずです。


「ただし、敵の背中にある結晶を破壊しない限り、またすぐに磁場は復活する。ジャマーの効果が切れる前に決着をつける必要があるよ」

「結晶を壊すには、俺のイグニスが必要だ。……だが、そこまでどうやって近づく?」


そうです。

ジャマーを使うには敵に接近しなければなりませんが、カイルさんとエレナさんは金属装備を持っていけません。

丸腰で近づけば、装備を回収する前に殺されます。


「仕方ありませんね。私が囮になって……」

「ダメだ。お前一人じゃ支えきれねえのは前回で分かっただろ」


カイルさんが首を振りました。

あのチェーンソーのような前足と雷ブレス。ルシアン一人では、二人が装備を回収する時間を稼ぐ前にミンチにされてしまいます。


「なら、金属じゃない武器を使うしかないわね」


工房の奥から、野太い声が響きました。

マダム・ガルドです。

彼女は鬼のような形相で仁王立ちしていました。


「マ、マダム……!?」

「アンタたち……アタシの可愛い『イグニス』と『フォートレス』を、あんな湿気た塔に放置してくるなんて、いい度胸じゃないの」


マダムの背後にゴゴゴ……と怒りのオーラが見えます。

カイルさんとエレナさんが直立不動で震え上がりました。


「す、すみませんんんッ!!」

「謝る暇があったら取り戻してきなさい! ……ほら、これを使いな!」


マダムが放り投げてきたのは、無骨な「白い武器」でした。

巨大な棍棒と、分厚い盾。

ですが、金属の光沢はありません。


「こ、これは?」

「**『ロック・ドラゴンの大腿骨』を削り出して作った棍棒と、『カイザー・クラブの甲羅』**で作った盾よ」


骨と殻。

正真正銘、ノンメタリックな装備です。


「硬度はアダマンタイトに劣るけど、鉄よりはマシよ。磁力の影響も受けない。……これでアイツをぶん殴って、アタシの最高傑作を取り戻してきなさい!」

「マダム……! ありがとう!!」


カイルさんが骨の棍棒(めちゃくちゃ重いです)を握りしめ、エレナさんがカニの盾を構えました。

見た目は完全に「原始人」ですが、その迫力は凄まじいものがあります。


「よし、作戦会議だ!」


カイルさんが気合を入れ直しました。


接近フェーズ:

骨装備でベヒーモスの猛攻を凌ぎつつ、肉薄する。


妨害フェーズ:

ミントさんの『ジャマー』を起爆し、磁場を解除。


換装フェーズ:

ジャマー起動後、大急ぎで『紅蓮のイグニス』と『白銀の城壁』を回収・装備。


決着フェーズ:

磁場が復活するまでの残り数秒で、最強装備を使って結晶を粉砕し、トドメを刺す。


「これらを全部合わせて30秒だ。着替えに手間取ったり、攻撃を外したりしたら、その瞬間に磁場が復活してまた縫い付けられる。……失敗は許されねえぞ」


完璧な作戦ですが、シビアすぎます。

30秒の着替えタイムアタック兼ボスラッシュ。普通なら不可能ですが、私たちならやれます。


「ルシアン、お前の役割はわかってるな?」

「はい。敵のヘイトを集めて、二人が着替える時間を稼ぐのですね?」

「違う」


カイルさんはニヤリと笑いました。


「お前は**『更衣室のカーテン』**だ。エレナが着替えてる間、絶対に敵に見せるなよ? レディの着替えを覗くような野暮な真似させたら、承知しねえぞ」

「……そこですか?」


エレナさんも真剣な顔で頷いています。

どうやら、このパーティにおける「恥じらい」の基準は、命よりも重いようです。


「準備はいいか? 『ブレイク・スルー』、リベンジマッチだ!」


私たちは再び『雷鳴の塔』へと向かいました。

原始的な武器と、ハイテクな爆弾、そして決して折れない心を携えて。


待っていろ、磁力怪獣。

忘れ物を回収しに行きますよ。

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