第7話「イヤリングと過去」
センパイと明を買い物に誘ったのは明をはげますためだ。高校に入学してから、明は何かがおかしい。家に帰っても何かが自分の中で引っかかっている感覚がある。
自分の部屋でハンドメイドについて調べると、かわいいキーホルダーの画像が表示された。
「……レジン?」
聞いたことのない単語が出てきたので明に電話できいてみる。
スマホが四コール鳴ると明の声が聞こえてくる。
「もしもし」
「さっきぶり。明」
「うん。何か用?」
何だか明の声に活気が無い。やはり、強引に買い物の約束をねじ込んだからだろうか。
「学校で言っていたハンドメイドのレジンってなに?」
明が黙り込む。
「ハンドメイドのレジン? レジンについて知りたいってこと?」
私も自分の日本語がおかしいと思ったが、そこをいちいち突いてくるのが明だ。
「そうそう」
めんどうな男だなと思いながら間をつなぐ。
「レジンは、ライトあてると固まる透明なやつのこと」
「……つまり?」
「あー。動画送るからそれ見て」
キレ気味の明が電話を切ってくる。
数分後、明から動画が送られてくる。動画には透明な液体? をシリコンの型に流し、ネイルで使うライトを当てているのが映し出された。
「これがレジンか」
そう、メッセージを送りスマホを充電機にさす。
机の引き出しを開くと彼からもらったイヤリングが入っている。
――もう、好きじゃないのかな。
そのイヤリングは中学校の時に明からもらった物である。今でも個人的に出かけるときはつけている。壊さないように慎重に扱って……。
つい過去のことを考えてしまった。引き出しを閉じ、机の上にあるアクリルスタンドをおがむ。私は、ちゃんと好きなものがあるから。