第4話「本音」
明が不思議そうに尋ねる。
「メンバーって、生徒会って、私たちだけですか?」
椅子から立ち上がるセンパイ。
「実は、君たち二人だけを招集したのだよ」
さらに不思議そうな顔をする明。
「じゃあ、他にも生徒委員会の会員? は在籍しているの?」
私も疑問に思ったので聞いてみる。
ホワイトボードに議題のようなものを書き始めるセンパイ。
「本当は各クラス二人、いるけど……」
もっと不思議そうな顔をして俯く明とホワイトボードに『文化祭』とだけ書いたセンパイ。私はこの光景こそ不思議だと思う。
「はい。君たちには、王林高校初の文化祭を企画してほしくて」
文化祭……。確かに、出来立てホヤホヤのこの高校には学校行事があまりないのだろう。
「でも、何で私と川田が選ばれたのですか?」
明が私のことを苗字で呼んでくるのは、なんだか慣れない。しかし、王林高校初の文化祭の企画には興味がある。
「いいですね! 楽しそうです!」
「いや、状況が分からないけど……」
センパイは人選について答えない。
「まぁ。僕も一応文化祭メンバーだし? まだ五月だし? 夏休みごろから企画すればいいし?」
やたらと説得してくる。私はやる気なのに。
「ね! 明君もやるでしょ? 文化祭の企画」
明の顔を覗き込むセンパイ。明はなんだか嫌そうな顔をする。
――明のあの顔って。
「もちろんです。やらせてください」
私が思考を巡らせる前に明が答えた。
「ふむ。よろしい」
満足そうなセンパイ。
「楽しみだなぁ。企画って具体的には何をするんですか?」
私は明の様子を気にしながらセンパイに聞いてみる。
「うーん。まだ分からない」
すごくすがすがしい笑顔でセンパイがスマホを操作し始める。てか、分からないってなんだよ。
「はい。連絡先。教えて」
スマホの画面を差し出してくるセンパイ。私はスマホのカメラアプリを起動し、連絡先を交換する。こんな、ゆるいセンパイがいるなんて。
「明君も、交換しよう」
センパイが明の前にスマホを置く。
「……はい」
メッセージアプリの『文化祭』と名付けられたグループに明のアイコンが入ってくる。
「じゃあ。今日は解散。僕は片付けするから」
明が会釈をして足早に部屋を出る。
本当に文化祭、できるのかな。そう思いながら私も部屋を後にする。