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名前のない青春  作者: 梨音
文化祭の企画と過ぎる日々
11/12

第11話「闇に触れる」

 僕以外の二人が食べ終え、パスタ屋を出る。今日の目的である買い物に付き合いたい。


「おいしかったですね! センパイ!」


心が僕の顔を見る。


「そうだね。明君は、どうだった?」


食事中もほとんど口を開かなかったので問いかけてみる。


「え、普通においしかった」


……敬語が直っている!


 駅からそう遠くない雑貨屋に着く。


「かわいい! 私、画材コーナー見てくる!」



あっというまに、どこかに行ってしまう心。明と取り残される。


「えっと。気にしないで、あー。レジンのとこ、行こう」


歯切れの悪いしゃべり方で明が天井の吊り下げ看板を見る。


「いつもあんな感じなの? 心さんって」


距離感を縮めたいので「川田さん」を「心さん」と呼んでみた。


「そうっすね。自由人なので、あの人」


「そっか」


レジンコーナーを見つける明。


「明君はレジンとかやるの?」


レジンを探すくらいだからきっと趣味か何かだろう。


「まぁ。やるけど、好きではない」


――好きじゃないのか!


「じゃあ、それって楽しいの? やっていて」


「つまらないですよ。昔は楽しかったけど」


僕の頭の中に『?』があふれる。


「……なんでやるの?」


つい聞いてしまった。彼にとって触れてほしくないことだろうに。


「…………カゴ、持ってくる」


明が逃げてしまった。ちょっと、深い話をしちゃったかな?


レジン製品が並んでいる棚の前でしゃがみ込む。


シリコンモールド、レジン液、UVレジン用封入パーツ……。種類がたくさんあるな、と思い立ち上がる


「すみません、お待たせしました」


カゴを手にした耳が赤い明と、商品を大量に抱えた心が現れる。


「いや~。すみませんセンパイ! ついテンション上がっちゃって」


「それ、買うの?」


あまりにも商品を抱えているのでつい言葉にしてしまった。


「買いますよ~。久しぶりのショッピングだし」


ムフフと幸せそうな心。カゴに商品を入れていく明。中途半端な僕。


 雑貨屋を出ると、もう十六時だった。


「じゃあ、もう解散かな?」


二人の顔色をうかがう。


「はい! もうほんと満足です~」


いつもの笑顔で笑う心のそばでは早く帰りたそうな明がいる。


「じゃあ、また」


明が一瞬で駅に向かう。


「あぁ、行っちゃった」


駅の方面に視線を移す心。彼女の耳では水色の飾りが揺れていた。


「そういえば、耳のそれ、かわいいね」


水色の何かについて触れてみる。


「これですか?」


心が耳から何かを取り外す。


「昔、明からもらったイヤリング。きれいでしょ?」


大事そうにイヤリングを触る。


「もう、あんまりレジン、好きじゃなさそうだけどなぁ」


ぽつりとつぶやく心。イヤリングはキラキラ輝いている。僕も思わず目を奪われる。


 明にとって、このイヤリングとレジンはいったい……。


「へぇー。じゃあ、今日はありがと」


「はい! また学校で」


僕はまだ寄りたいところがある。

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