第10話「友達」
先輩が店員さんに声をかける。俺はレストランとかの注文で困ったら、シェフのおすすめにする。
「……でお願いします」
注文をきいて、店員がおじぎをして俺らが座っているテーブルから離れる。
何だか気まずいので水をちまちま飲む。心と先輩は楽しそうにしゃべっている。二人の会話を聞くと文化祭について話している。俺は窓の外を見る。
「文化祭、やるからには盛大にやりたいな。センパイ!」
「そうだねぇ。前例がないから、できるか分からないけど」
この人たちは俺にとって友達なのかな。さっきはつい、ああ言ったけど。
『でも、あこがれていたのかな。友達との外食』
言っていしまった言葉が頭の中ではんすうする。
「明君、ずっと窓の外見ているね」
先輩が痛いところを指摘してくる。でも、そう言われると視線を変えにくい。
「おまたせいたしました」
パスタがのった皿を一人ひとり、確認しながらテーブルに置く。
「失礼します」
丁寧な言葉遣いだ。店員がほかのテーブルに赴く。
「じゃあ、食べよう!」
手のひらを合わせる先輩。心も「いただきます」と続けた。
「……いただきます」
目の前のたらこパスタにそう告げ、フォークとスプーンを使い食べ始める。
「おいひいなぁ」
心が口の中に和風パスタをほおばる。
「いや~。やっぱり、めん、美味しい」
空っぽになった皿を見つめる先輩と、それを見て驚く心。
「センパイ、もう食べ終わったのね」
「あー。昔から早食いって言われる」
何となく、このほのぼのとした雰囲気が続いてほしい。俺の心でそう感じているような気がする。