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劣等BOYと死ンデレラGIRL

読んでくれ

「よし準備完了」


誰もいない部屋で俺は高々にそう言った。


久しぶりに遠出をするにはやはり覚悟をしないといけない。


そして声をだすことが俺なりの覚悟だ。


そんな覚悟の割に足はどんどん動き、すぐに駅についた。


マンションから駅が近いこともあるが結構はやく到着したように感じる。


朝の7時なのか、東京だからなのか、

駅は結構混んでいる。

切符を買い、

電車に乗るといろんな人が見える。


クタクタなサラリーマン、友達と喋っている高校生、それを迷惑そうにしている大学生。


見慣れた光景だがこれが最後となるとやっぱり

色あせて見える。


だからどうこうってならないんだけどね。

電車に揺り動かされてかれこれ2時間が経ち、

目的地へと着く。


そこは俺が生まれ育った場所である。

神奈川県、皆知っているであろう東京の横にある県だ。そこだけ聞けば都会じゃんって言う人がいる。

だが別にそんなことはない。


人が多く、栄えてるのは横浜から近いとこだけである。


それ以外のとこはあんまり栄えていない。


俺が住んでいるこの瀬谷もだ。

駅のすぐ横にはデカいスーパーと薬局しかない。


イトヨーカドーもあるにはあるが置いてあるものが隣のデカいスーパーと対して変わらない。


ゲーセンも無ければカラオケもない娯楽施設は皆無である。


ヤニくさいパチンコ店に関しては学生の頃入れなかったからノーカンだ。


そんなほぼ田舎のこの街だが今思えば別に悪くなかったと思う。


まぁ思い出補正がかかってないって言ったら嘘になるけど。


「さてと、行くか」


まず最初は小学校からだな。


幼稚園、保育園は巡っても意味がないからとりあえず小学校からだ。


小学校、それはまだ挫折を知らず、探究心が非常に強く、個性豊かな子供達が集まる場所。


懐かしい反面、俺はここがそんなにすきではない。


子供ってのは基本明るく、夢に満ちている。

俺の居たここもそうだ。


そんなみんなが居るとこに俺は劣等感持っていた。

はっきり言って好きではなかった。


いい思い出も特にないしな。


「次行くか」


中学校、ここでは違う者達が自分の青春を探す。

異性に対する気持ちを強く持つ者、勉学に励む者、夢から目標に変わりそこを目指し突き進む者。


各々の青春を謳歌している場所、それがここだと俺は思う。


高校とは違い、個性に偏りがない。

故に生まれてく経験、出会い、そして壁。


その壁を壊し突き進むのもいいし、別の道を探すのもいい。


けどその結果はすべて自分の責任になる。

それが中学校だ。


この頃の俺は確か、普通だった気がする。


部活にも入らず、勉学も普通。


趣味という趣味もなく友達との距離感も普通だった。


だがここでも劣等感は俺を許してくれなかった。

できることはやってみたが、その全てが俺を許してはくれなかった。


まるで浅い湖で溺れ死ぬ感覚のように。

「ここも駄目だな」


次へ行こう

高校はよかった。

今でもそれは思う。


本来受験とは自分の行きたいところに挑戦、もしくは妥協の二択だが俺はどちらでもない。


みんな未来の自分に投資するが、俺は今の自分に未来があるのかどうかすら心配している。


だからあえて選んだ『高山高校』を。


そこは俺の家からはチャリで30分くらいで登校時には綺麗な川がみえてすごくいい雰囲気な場所だ。


だが高校自体は荒れているで有名なところだ。


噂では暴力に薬にイジメに売春。

犯罪のハッピーセットだった。


だからいろいろあり、俺の次の代で廃校になった。

言っちゃ悪いがそんな人達がいるなら俺のこの腐っ

た劣等感を終わらせることができると思った。


そう、思ってたんだ。


入学当初はその考えが正解だと思った。


なんせどいつもこいつも誰にでも噛みつくケルベロス状態だったからだ。


自販機で水を買おうとしたら「お前俺のことバカにしてんの?」って胸ぐらを掴まれた高田くんを俺は

涙無しには見れなかった。


そんな理屈とはかけ離れた彼らを見下す事で俺の醜い劣等感を隠していた。


だがそれは1年生までの話だ。

2年生になると嫌でも彼らの本質をちょっと分かってくる。


彼らは一時的とは言え、自由なのだ。

もちろんそれは法に触れることもある。

だがそうじゃないこともあるのだ。

挑戦することに躊躇いがなく、他者との絆を大事にする。


それは紛れもなく彼ら今までの人生で培って掴みとったものではないか。


そこには環境も法律も未来も関係なく、青春の辿る一つの道ではないだろうか?


その答えを疑って彼らに混ざったことだってある。

傍から見たら彼らが傷を舐めあってるようにしか見えないだろう。


だがそうじゃなかった。

彼らは彼らで今を精一杯生きている。

それを知って俺は心底『絶望』した。


この学校で自分が一番醜い人間だと分かった瞬間だった。

じゃなぜ高校はよかったかって?


それはこの醜い俺が『終われる』方法を教えてくれた一人の少女がいたからだ。


あの少女がいなかったら多分俺は一生苦しんでいたのだろう。


「やっぱりこの街は変わらないなぁ」


公園や駅やこの廃校になった『高山高校』も何も変わらない。


「それは俺もか」


やっぱり俺はこの選択をきっと後悔しないのだろうな。


実家に寄らなくて正解だったな。


この高山高校の中庭はちょっと不思議だ。

校舎に囲まれている。

囲まれているのは当たり前だがそうじゃない。

綺麗な丸のように囲まれているのだ。

まるで、鳥かごのように。

屋上からみたらまんま鳥かごだ。


まぁどうでもいいか、そんこと。


「よし、じゃ死ぬか」


そう。

俺はこれから死ぬ。

怖いかと聞かれたらちょっと怖いが、まぁ大丈夫だろ。

後悔はない。

もし今日俺がこの街に戻ってきてまだ生きたいと思ったら生きる気だった、がそんなこともなかった。

所詮そんな人生だ。

まぁでも人生初のバンジージャンプだ楽しまなきゃ。

当たり前だが屋上には柵がある。

これが俺の生きてて初めて当たる壁(物理)だと思うと涙がでるぜ。

俺は助走をつけて、走った。

 

「せーのっ!」

声を出して、思っきり柵を飛び越えた。


あの日、名前も知らなかった『少女』が飛んだ様に。


当然だが、パラシュートもなければ、紐もない。

そして俺は空を飛べない。


それが意味する答えは、誰もが知っている。



だがそれでいい。

 

 

ちょっとした浮遊感に驚きつつ、これでやっと終われると思う自分もいる。


だが後悔と言うか、ここ心残りはちょっとある。

この22年間適当に生きて俺は誰かと深い関わり持った事はなかった。

死ぬ時まで一人なのはちょっと悲しいな。

多分俺がこう考えるのは彼女のせいだろう。

あの時、彼女は俺に答えを教えてくれた。

当然それは人からみたら駄目なことだが、俺は綺麗だと思った。


彼女は俺の事を知らない。

そして俺も記録と誰かが語る彼女しかしらない。


無理な事なのは分かってる。

だが地面に叩きつけられる瞬間、俺は()()()()()()()()




「どうせなら彼女と一緒に死にたかったな」


最期に聞こえた鈍いドスッとなる音で俺の人生は終わるはずだった。

ありがとう

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