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飛んでけ僕らのキムワイプ

作者: 寒月

高校一年生のときに書いた脚本です。


・主人公

・彼女

・友人

・宗教勧誘 教祖

・近所のアメリカン夫婦 夫

       妻

・押し売り業者

・押し売り業者 下っ端

・師匠



主人公と彼女がいる

主人公、上機嫌で舞台をスキップ

いきなり主人公が観客に向かって話し始める


主人公 諸君!いや、諸君と言っても誰もいないのだが、しかし俺は断じて諸君と呼びかけよう。おっと、冒頭から興奮してしまった、失敬。いや、興奮せざるをえない。なぜなら俺は今、青春しているからだ!嗚呼、青春!なんて素敵な響きなんだ…。(普通)いやぁ、今日は大雨で大変だったね。

彼女  そうだね。あ、えっと…。

主人公 ん~どうしたの~?(くねくねする)

彼女  あなたに会うとね、まるで洗い立てのパンツのような気分になるの。

主人公 そ、そっか。(観客に)彼女はたまによくわからない表現を使う。


      照れる彼女

      主人公、再び観客に向かって話す


主人公 今話している彼女は…むふ、むふふふ。…何焦らしてんだって?まあそう焦るな諸君。彼女は俺の恋人。今日は初めて家に呼んで、これから甘い青春を送るところさ。それゆえに今日はここでお開きだ。諸君、異論があるか?あればことごとく却下だ。閉店がらがら。


      暗転

      睦言が暗闇の中聞こえる


主人公 いいじゃないの~

彼女  ダメよ~ダメダメ

主人公 ちょっとだけ~


      するとチャイムの音

彼女  誰か来たみたい。

主人公 …もう、誰だよ。


明るくなる舞台

友人登場

すでに部屋に入っている


友人  久しぶりぶりブロッコリー。

彼女  どなた?

主人公 今取り込み中だ。帰れ。

友人  やだ、寂しい。それに風が冷たいの。

主人公 この寂しがり屋さんめ。

友人  きゃ。


       その光景を写真に収める彼女


主人公 …はい、さようなら。

友人  とか言いつつ?

主人公 出てけ。

友人  じ~つ~は~?

主人公 …。

友人  はい俺の勝ちー。実はね、今日お前に紹介したい人がいる。

主人公 だが断る。

友人  どうぞお入りください。


       怪しい見た目の教祖が入ってくる

       友人拍手で迎える


教祖  あらぁこんにちはぁ。


       甲高い声で笑いながら喋る教祖


友人  こちら、偉大なるクラゲ教のおクラゲ様だ。

教祖  ごめんなさいねぇ、いきなり押しかけちゃって。あら、この人が例の?幸薄そうな顔してるわね~。

主人公 初対面で失礼だな。

友人  このクラゲ教はクラゲを愛し、クラゲを信仰することで我々も幸せになれる。

教祖  アイ ラブ クラゲ!クラゲで世界を幸せにするの。あなた是非入ったほうがいいわ?

主人公 唐突な上に馬鹿馬鹿しい。大体クラゲなんて…

彼女  素敵!私も是非クラゲになりたいわ!

主人公 う、嘘だろ。

教祖  あら本当?なら話が早いわ。ぜひうちのクラゲ教に…

主人公 ちょっと待て。(観客に)只今非常事態なのは諸君もお分かりであろう。


       友人、寝ながらテレビを見ている


主人公 おい、非常事態に何くつろいでるんだよ!


友人、教祖と代わり近所の外国人夫婦登場


主人公 あ、あれ…?確か近所の…。

夫   大変なんです、聞いてくださいよ!さっき…


       回想に入る


妻   Nooooooo!!!

夫   どうしたんだいハニー。

妻   どうしようダーリン、洗濯機が壊れちゃったわ。

夫   おいハニー、それは洗濯機じゃなくてトイレじゃないか!HAHAHAHA!!


      回想終了


夫   ということがあってトイレが詰まっちゃったんですよ!うわああああ(野々村)

彼女  まあ大変!

妻   それでどうなったと思う?水が溢れちゃったのよ。まるで私たちの愛のように、Yes falling love.


       手をつなぎ観客に顔を向ける

       静まりかえる会場


彼女  どうにかしてあげたいわ…。(主人公に向けて)ね。

主人公 ま、まぁ…。(観客に向けて)ぶっちゃけどうでもいいと思っている。が、しかしここは紳士的な対応をして彼女にいいところを見せようと思う。男とは大体そんなものである。(普通に戻る)あ、そういえばスッポンがあったはず…。


       スッポンを探しに行く主人公


妻   あら、家が燃えているわよダーリン。

夫   Wow!いくら寒いからって家まで燃やせなんていってないぜ。最高にクレイジーだな!

妻   でもこれで暖かくなるわね!

夫   そうだねハニー、冬はこれからだぜべいべー。HAHAHAHA!!


       行ってしまう夫婦

       主人公戻ってくる


主人公 あれ?行っちゃったの?

彼女  お家が燃えちゃったらしいわ。

主人公 そんな大変なことを淡々と言える君はすごいね…。あ、でももう邪魔はいないってことだよね!続きを…。


       チャイムの音

       押し売り業者とその下っ端登場


押売り 邪魔するぞ。

主人公 邪魔するなら帰ってください。

押売り はいよ~。ってなんでやねん。


       無視する主人公たち


押売り 無視されちまった。東京人さ、恐ろしいべ。

下っ端 方言、出ちゃってますよ。

押売り (咳払い)お兄さん、今日ね、ちょっといい商品紹介したいんですよ。

主人公 いりません。

彼女  なになに?気になるわ。

下っ端 でしょでしょー。今回ご紹介する商品はこちら、我が社が開発した新感覚のキムワイプ!(ジャパネット高田風)


       おもむろにバックからキムワイプを出す

       興味津々の彼女、主人公は興味ない


下っ端 紹介しよう。キムワイプとは全国の理系の人々なら誰もが知っている実験室のアイドル。けば立ちがなく、水に溶けにくいことから、主に実験器具の清掃に使われる。又、理系ホイホイとして度々ネタにされるのもこのキムワイプである。

彼女  何が新感覚なの?

押売り まず、おらがキムワイプに一目惚れしたときに遡るずら。そうあれは高校一年生の夏…。実験室の机の片隅に彼女がいたんだ。黄緑、緑、白のコントラスト。風になびく白い紙…おらの心は完全に奪われちまった。

下っ端 (話を遮る)よくぞ聞いてくれました。この新感覚のキムワイプ、なんと…水を吸うんです!

主人公 それが本来のキムワイプだと思うのだが

押売り (遮る)お兄さん、こんなに可愛いキムワイプちゃんをまだ欲しくないと?ならばしかたない。あれをやるか…。

下っ端 了解ですぜ。ここにキムワイプがあるじゃろ?これをだな。こうして…こうじゃ。


       キムワイプで水を吸って見せる

       極めて地味な実験


主人公 いや、見えないっす。

押売り 見るんじゃない、感じろ!さすがおらの天使、キムワイプちゃん。

下っ端 どうです?一家に一箱キムワイプ。

彼女  欲しい!ぜひ買うわ!キムワイプに囲まれて生活するのが夢だったの。

主人公 え、君以前ぬいぐるみに囲まれて生活するのが夢って…。


       ドアを無視して師匠登場

       紫地に黄色の水玉模様のブリーフを履いている


師匠  ユー、買っちゃいなよ。

主人公 だ、誰だお前。てかここドアあったはずじゃ…。

彼女  パンツ師匠!

主人公 え!?(観客に向けて)俺は今、何が起こっているのか全く理解できていない。責任者はどこだ。

彼女  師匠、今日も素敵な水玉ブリーフ。惚れ惚れします。

師匠  おいおいそれは言い過ぎだよ~。…ん、少年。どうやら何か悩んでいるようだな。

主人公 原因はあなたたちですよ…俺の薔薇色の青春を今こうやって水の泡と化している。

師匠  少年よ、過去から未来へ無限に連なる水玉ブリーフの行列を想像してごらんよ。

主人公 嫌です。

彼女  なんて素敵。

主人公 いや、はるかに君の方が素敵だよ。

師匠  我々は皆水玉ブリーフのようなものなんだ。

彼女  そうね、きっとそれがあるべき姿なのよ。

主人公 君まで何言いだしてるの?前半の方はおとなしいキャラで通してたよね?ね?


       すると外国人夫婦登場


夫   聞いてくださいよー。今度はマイハウスが全焼しちゃったんですよー。HAHAHA!!!

妻   今晩泊めてくださいませんかね?

主人公 え、ちょっと…

夫   ワオ、リアリー?いいのかい?やったねハニー。

妻   私たちの日頃の行いが良いからね、ダーリン。


       休む間もなく教祖、友人登場


教祖  やっぱりもう一度考え直してみない?入れば絶対幸せになれるのよ?

友人  クラゲぽにょぽにょ三ぽにょぽにょ。合わせてぽにょぽにょ六ぽにょぽにょ。

主人公 お、おい。


下っ端 今このキムワイプを買うとですね、なんと。ズワイガニもセットしますよ!

押売り もし明日世界が終るのなら、おらはキムワイプと最後の時を迎えたい

       もうとにかくカオス

       いきなり主人公叫ぶ


主人公 お前ら黙れー!


       静かになる


師匠  少年、世の中には理不尽なことで溢れている。いくら努力しても報われないこともある。でもな、そこでいかに柔軟的に対応できるかが大切なんだ。もっと視野を広げて社会を見るんだ。


       間


       夫婦が駆けつける


夫   大変だ!大雨で、川が氾濫して堤防が決壊しそうだ!

全員  な、なんだって。


       間


       いきなりキムワイプを奪って去る主人公


全員  どこ行くんだ、待て!


       全員追いかける


友人  おい、なにしようをしてるんだ?

主人公 このキムワイプで、川の氾濫を止める。

友人  キムワイプなんかで川の氾濫は止められないぞ。馬鹿かお前!


主人公 やってみないとわからないだろ

下っ端 いや確かに水を吸うことはキムワイプの特性ではありますが、さすが川までは…。

彼女  …私は信じるわ。キムワイプは川の氾濫を止められる。


       彼女、主人公の手を取って


主人公・彼女 飛んでけキムワイプ!


       曲「星降る夜になったら」

       でかいキムワイプが出てくる


主人公 その時だった。空から巨大なキムワイプが飛んできて、川の水面を覆った。川を覆った無数のキムワイプたちはみるみる水を吸っていった。

友人  おい、どんどん水を吸っていくぞ…。

夫   が、がんばれー!


       その声に気づきみんなも言い始める


全員  がんばれキムワイプ!がんばれキムワイプ!

主人公 川の水がどんどん減っていく…一センチ、十センチ…あと少しだ!

全員  がんばれキムワイプ!がんばれキムワイプ!


       汗がでるまで言う

       声はどんどん大きくなる


全員  いっっっっっけええええええ


       暗転

       主人公ピンスポ


主人公 その後キムワイプは瞬く間に空に飛び立っていった。後から聞いた話によると、そのキムワイプはNASAの衛星機関からも観測されたらしい。宇宙に浮かぶ白いキムワイプ。今思うとあのキムワイプは宇宙からの使者だったのかもしれない。今では俺がキムワイプ。今日も困っている人のところに飛んでいく。


END


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