9.ツイカの死刑
乱暴に立たされ連行されようとしているツイカに、トセは刑を宣告する。
「ツイカ。お前は、死刑になる」
「ど、どうして?! 傷一つ付けてないのに!」
「帝国で最も身分が高いのは、皇帝だ。その正妻を殺そうとしたのだ。怪我が無いからと許される訳が無いだろう」
ツイカは、自分が皇后になると身分が高くなるとは解っていたが、スエコが皇后となっても身分は自分と同じだと思っていた。
スエコが自分より偉くなるとは、考えたくなかったからである。
「そんな……」
愕然としたツイカは、スエコが自分を許せば無罪になると思った。
「ね、姉さん! 私を許してくれるわよね?! 姉妹なんだから!」
「貴女は私を殺そうとしたのだから、私から貴女への情は要らないのでしょう?」
拒絶されると思わなかったツイカは、固まった。
「失敗して都合が悪くなったからと言って、家族の情を利用しないで」
冷たいスエコの言葉に、ツイカは悔しさでボロボロと涙を流した。
「うあ~ん! なんでよ~! お父様もお母さんも、姉さんまで、何で、私に冷たいの~?!」
「お父様とお母様が、何時貴女に冷たかったと言うのです?」
スエコの記憶にある限り、両親はツイカに普通に愛情を注いでいた筈だ。
「だってだって、私にばっかり、厳しくして! 姉さんはしなくて良かったのに!」
「厳しく? 心当たりが無いわ。私に何をさせなかったと?」
「治癒術の練習よ!」
「……お前は何を言っているんだ?」
唖然としたスエコの代わりのように、トセが呆れた声を上げた。
周りの人間も、呆れてツイカを見ている。
「ねえ、ツイカ。私が貴女より十歳年上だと言う事は、知っているわよね?」
「当たり前じゃない!」
「私は、貴女が治癒術の練習を始める十年前から練習を始め、当時は、成人して治癒術士として働き始めていました。貴女と一緒に治癒術を使えるようになる為の練習をさせなければおかしいと、どうして思ったのです?」
ツイカは驚いて、涙が止まった。
「あ……。それは、だって……。お父様とお母さんが厳しかったから! そりゃあ、伯母さんに比べれば大した事無いけど、でも、当時は厳しいと思ったの! なのに、姉さんは厳しくされてなかったから! お父様達が、お祖母様みたいに優しかったら良かったのに!」
「お祖母様の優しさは、貴女を一人前の大人に育てる気の無い優しさだったのですよ」
「え?」
良く解っていないようなツイカに、トセが言い換えた。
「お前の祖母の優しさによって、お前は年を取っただけの赤子になったのだ」
そして、ツイカが何か言う前に付け加える。
「だからと言って、皇帝の正妻を殺害せんとした罪は許されぬ」
死刑と言われた事を思い出して、ツイカは青褪めて叫ぶ。
「イヤア! お祖母様の所為なのに!」
「痴れ者が! お前の祖母は、皇帝の后を殺せと言ったか?! 恨むべきは、皇后を殺害せんとした己自身だと心得よ!」
トセが雷を落とすと、ツイカは恐怖に気を失った。
そのまま運ばれて行く。
後日、ツイカの死刑が執行された。
目覚めてから処刑までの間、正気を失ったのか、ブツブツと「世の中間違っている」との繰り言を言うだけになっていたと言う。
手引きした人達も、捕まって罰を受けました。




