3.27.ヒール
すぐに後ろを振り返ってみると、タタレバの体が淡い緑色の光に包まれていた。
何が起こっているのか一瞬分らなかったが、悪いものではないということだけは理解できる。
そこでアマリアズがこちらを見た。
「宥漸君回復技能使えたの!?」
「え!? これ回復技能なの!? え!? いや確かにさっき使えたらいいなぁ~とは思ったけど!」
「そのまま維持して! これなら何とかなるかも!」
「どうやって維持するんだこれ……!?」
急に発現した技能なんてどうやって使いこなせばいいか分からないんだけど!?
で、でもまぁこれをやっておかないとタタレバが危ないってことは分かる!
なんとか……うん、意地で何とかしよう!
この技能が発現したのは、多分僕が回復系技能を願ったからだと思う。
多分これだけで、もうこの技能は僕が自由に使えるようになってるはず。
技能とはそういうものだって、アマリアズからもウチカゲお爺ちゃんからも教えてもらっていたからね。
スッと手を伸ばし、タタレバを回復させることにだけ専念する。
すると淡い緑色の光がほんの少しだけ濃くなり、小さな傷がゆっくりではあるが治っていった。
「あ、アマリアズ。これで大丈夫かな?」
「うん。そのまま……」
「これなんて言う技能なの?」
「……この光量だと『ヒール』かな。でもちょっと効力が強い。いずれ『ハイヒール』になるかもね」
「へ、へぇ……」
何が違うんだろう。
ま、まぁ後で詳しく教えてもらえばいいか。
今はこっちに集中……!
僕が回復し、アマリアズが傷の手当てを担当する。
これ以上の出血を防ぐためにアマリアズが包帯や布などで傷を縛り、その上から僕が回復させることで完全に止血させた。
それをすべての傷口に行い、最後に腹部に未だ刺さっている防具の破片に取り掛かった。
僕が回復させながら、アマリアズが慎重に破片を抜き取る。
三枚の破片がすべて地面に投げられたあと、アマリアズが数枚の布で腹部を押さえて止血し、僕が『ヒール』で腹部を集中的に治療する。
だけど深い傷はなかなか治せないらしい……。
小さな傷や少し大きめの切り傷とは違い、治る速度が非常に遅かった。
「うぐ……ぬぬぬぬ……!」
「……早い段階で『ハイヒール』になったね。多分魔力消費が凄いと思う。宥漸君、きつくなったらすぐにやめてね。君が倒れちゃうから。倒れられると助けを呼びに行く人が居なくなる」
「わ、わかった……!」
もう少しだけなら何とかなりそう……!
ていうか凄い倦怠感が襲ってくる……。
すぐにでも止めたいくらいだけど、これでタタレバの生死が決まるとなれば、できるだけ無理をしなければならない。
それが普通だし、僕だって助けたい。
それからもう暫くの間治療を続け、本当に限界に近づいた瞬間『ハイヒール』を止めた。
汗が大量に噴き出しており、肩で息をしている状態だ。
地面に手を置いて息を整える。
ま、魔力枯渇って結構きついんだ……。
これ……完全に魔力が無くなったらしんどそうだな……。
魔力枯渇には絶対にならないように気を付けよう。
息を整えた後に顔を上げると、アマリアズも大きくため息をついて壁に背を預けた。
僕と違って技能を使用せずの治療だったから、とても慎重に治療をしていたのだと思う。
だがその甲斐あって、最低限の治療はできた。
あとはタタレバの体力次第ではあるが……早くお医者さんを連れてこなければならない。
詳しく見てもらわないと、どうなっているか分からないからね……。
「……宥漸君、いい知らせと悪い知らせどっちから聞きたい?」
「いい方で」
「とりあえずこの人は大丈夫。治療しながら体の状態を確かめたけど、右腕二箇所と左足の骨折、右肩脱臼。他の部位は魔法で守ったみたい。まぁ詳しくはちゃんと診てもらわないと駄目だけどね。ま、一命は取り留めた感じかな」
お、おおー……よかったぁ……。
でも、悪い知らせもあるんだよね……?
「わ、悪い方は?」
「この人、呪われてる」
「え?」
そう言って、アマリアズはタタレバの腹部を指さした。
布が掛かっていてそれが赤くなっているが……そこから浮き出すようにして黒い不気味な文様が見えている。
「こ……これは? 呪いって?」
「……『死印』。一定時間後、確実に対象を殺してしまう呪い系技能。この技能発動条件が凄いシビアで下手したら自分も死ぬ技能の筈なんだけど……」
「え!!? そ、それじゃあ一命を取り留めたとは言わないじゃん!!」
「一命は取り留めてるの。でも技能で呪われてるから確実な死が待ってる」
「ど、どうしたいいのさ!」
「『解呪』……もしくは『浄化』……そういう技能が必要かな……」
そ、そんな技能持ってる人なんていないでしょ……。
僕もアマリアズも呪いを解く技能なんて持ってないし、ウチカゲお爺ちゃんも持ってないはず。
お母さんだって……いやあれ技能なのか……?
うん、どっちにしても持ってないと思う……。
あと、あと技能持ってる人って……いな……。
あっ。
「姫様!」
「……ウチカゲお爺さんが仕えていた鬼だったね。確かにあの人ならもしかしたら持ってるかも……」
「行ってくる!」
「えっ」
僕はアマリアズが止めるのも聞かず、破壊された家屋を飛び出した。




