3.11.行き倒れ
「ただいま~」
「うわぁ……。それ持って帰ってきたの?」
「何かに使えるかと思って。そういえば目は?」
「もう見えるから大丈夫。これからは『空間把握』だけでも戦えるようにしておかないとなぁ」
「やることが増えたね」
「……なんでもいいけど、まず体洗いなよ」
そうする……。
もう唾液や血でドロッドロなんだよね。
上だけ脱いであとは川に浸かって一緒に洗っちゃうか……。
ショロウオウの死骸をその辺の置いておいて、僕は体を洗うことにした。
ちなみに僕が『空圧結界』で守っていたベドロックは無事だったようで、アマリアズが一度水を交換してくれたらしい。
また不機嫌そうに水を飛ばしてくる。
元気そうなことを確認したあと、服を川の中に沈めてバシャバシャと洗う。
ついでに体も洗うため、川の中心で洗濯中だ。
……ショロウオウの唾液、なかなか落ちないんだけど……。
うえええ気持ち悪い……。
これ結構かかりそうだなぁ。
「あ、そういえば。あの鹿、なんで途中で逃げたのかなー?」
「ん? ああー、ショロウオウの動物を使役する洗脳が解けたんじゃないかな。爆音……まぁ衝撃が加わったからだと思うよ」
「なるほど」
意外と簡単に洗脳って解けるんだなぁ。
まぁあの臭いで洗脳して使役するみたいだし、解除方法は甘いんだろうね。
にしてもこの唾液落ちないなぁ!
「……」
「ぐぬぬぬ……ん? どうしたのアマリアズ」
「宥漸君は分からないのか」
「え、またなんか居る?」
「ちょっと警戒しておいた方がいいかもだけど……あれ倒れてるのかな?」
「え?」
どうやら『空間把握』に何かが引っ掛かっているらしい。
だけど気配は感じないなぁ。
なんか、気配を感じ取れないって変な感じだ。
頑張って修得したから無くなると違和感だね。
とりあえずアマリアズが見ている方角を見てみるが、その先は茂みであり奥を見ることはできなかった。
何かがいるのだろうと思って感覚を集中させてみるが、やはり何も分からない。
うーん、気配では感じることができない何かかぁ~。
気配だけに頼りすぎるのは今後問題になるかもしれないから、ちょっと気を付けておこう。
だけど確かめないわけにはいかないよなぁ。
ショロウオウみたいなのがまだいてもらっても困るし。
まずはこの唾液落とさないとなんだけどねぇ!!
むぅうううう!!
「アマリアズ、確認はもうちょっとあとでもいいかな!」
「急がなくても大丈夫だと思うよ。まだ生きてるし」
「……まだ?」
「まだ」
何その含みのある言い方。
ちょっと怖いからできるだけ早く確認しに行こう……。
あ、やっと落ち始めた!
しばらく水に浸けておかないと駄目だったのかなぁ。
まぁいいや、体もちゃちゃっと洗っちゃおう。
それからはすんなりと唾液が落ち、体も十分に洗うことができた。
できるだけ力いっぱい絞って水を切り、そのまま着る。
「よし、ちょっと見に行こう」
「はいはい」
先程アマリアズが示した方角へと歩いていき、茂みを搔き分ける。
気配を感じ取ることができないのでどの辺りにいるのかは分からなかったが、アマリアズが何度か指を指してくれたので目的地へとはすぐに向かうことができた。
そこに居たのは……人だった。
「え!?」
「……」
少しびっくりしたが、すぐに駆け寄って安否を確認する。
どうやら息はしているようで、死んではいないらしい。
金色の髪の毛は長く、可愛らしい容姿をしている女の子だ。
黒をベースにした服を着ており、素材が何かの魔物でできているのか少し硬い。
そして……彼女には黒く折れ曲がった角と小さな翼が生えていた。
「ん!? 角!?」
「悪魔だね、この子」
「悪魔!? な、なんでそんな子がここに?」
「それは分からない。でも悪魔は魔力のある食べ物を食べないといけないはず……だったような……。まぁなんにせよ弱ってるから連れていかないとね」
「だ、だね! 僕が運ぶよ!」
「……ショロウオウは置いていこうか」
「あれは要らないね……」
さすがに悪魔と魔物を持っていくのは無理。
アマリアズにはベドロックを運んでもらうことにしよう。
よ、よし。
とりあえず早く前鬼の里に帰って色々やってもらわないと!
「先に行ってるね! ベドロックよろしく!」
「了解」




