2.5.目隠し修行Part2
昨日一日、本当にウチカゲお爺ちゃんは目隠しを外してくれなかった。
おかげでご飯もそうだし寝床に着くまでも……というか何から何まで大変だった記憶しかない。
ちなみにお母さんにめっちゃ笑われた。
むぅ。
と、いうことで僕は昨日より離れた場所に放り投げられてます。
ウチカゲお爺ちゃんはもう帰りました速い。
でも今日は朝からなので結構時間がある。
朝……から?
「ああっ!! お昼ご飯どうするのこれ!!」
完全に盲点だった!
も、もしかして現地調達で何とかしろって事……?
それはちょっと厳しすぎるんじゃないかな!?
もーこの修行やだー!!
ていうか今日はウチカゲお爺ちゃんに運ばれて来たから、既にどっちの方角が前鬼城なのか分かっていない。
今いる場所は昨日の場所より少し離れているとはいえ、僕が来たことのある場所の筈。
何か手掛かりがあればいいんだけど……。
「おはよう!」
「わっ! あ、アマリアズ、本当に来たんだ」
「そりゃくるよー! 今日から修行開始だからねぇ~!」
楽しそうな声でこちらに歩いて来る。
本当に良い修行方法をしているのか不安だけど、一人で一日中動いているより、こうして誰かいてくれる方が気が楽だ。
そこだけは感謝しておかないとな。
あ、でもまずは昨日気になったことを聞いておかないと。
「ねぇ、アマリアズはどうしてウチカゲお爺ちゃんに気付かれなかったの?」
「ん? ああ、それね。私は『木化け』っていう技を持っているんだ。木に同化して気配を完全に断つ技だよ。その場から動けないっていうデメリットもあるけどね」
い、いや……。
それでもウチカゲお爺ちゃんに気付かれなかったのは相当凄いと思う……。
僕ウチカゲお爺ちゃんに近づいて気付かなかったことないもん。
まぁそれはいいや。
じゃあもう一個聞いておこう。
「前鬼城ってどっちにある?」
「いやそれは教えられないよ。自分で帰らないと意味ないんだから」
「そ、そうだよねぇ……」
さすがにここまでは教えてくれなかったかぁー……。
じゃあやっぱりこれができるようにならないと、この修行は終われない感じかな……。
長くなりそう。
じゃ、早速修行を付けてもらおう!
どんなことするのかまだ聞いてないけど。
「で、どんな修行するの?」
「よくぞ聞いてくれましたっ!」
アマリアズはパチンと下手くそな指パッチンをした。
思ったよりいい音がしなかったのでもう一度鳴らしたが、ヤッパリ下手くそだった。
気を取り直したように咳ばらいをして、これからの修行について説明をしてくれる。
「まずは……」
その瞬間、全身の鳥肌が立った。
一つの方角からとてつもない悪寒を感じ、咄嗟に鬼人舞踊無手の構えを取って警戒する。
五年半に及ぶ修行の中で、ウチカゲお爺ちゃん直伝の鬼人舞踊無手の構えはほとんど習得していた。
まだ威力が足りなかったり、精度が甘かったりすることも多いが、大体の技、動き方は覚えている。
だが前が見えない。
気配を感じようにもなにがその気配なのか解っていないので、ただ構えているだけだ。
どうしようもない状況に眉を顰めた時、一つ気付いたことがあった。
「……あれ? 気配……ってこれ?」
「これじゃないよ。これは、殺気。相手が意図的に出した強い気配のこと。あ、これも気配か? まぁ同じようなもんか」
「気配ってこういうのをいうの?」
「そうだよ。何事も経験だからね。でもびっくりだ。もう殺気を感じ取れるようになっているんだね!」
アマリアズがぱちぱちと拍手をした。
今は強い殺気が掻き消えているが、ほんのりアマリアズがそこにいるということが理解できる。
体が恐怖しているのだ。
今危険な存在がその場にいる、と脳に教えてくれている。
恐らく、これが本当の気配というものなのだろう。
ようやく一歩進めた気がして、ちょっと嬉しい。
これなら……この目隠しを取る日もすぐかもしれない!
「な、なんとなく分かった!」
「よしよし! じゃあ気配がなんとなく分かったところで、私は移動する。違う方向から薄い殺気から濃い殺気に変えていくから、それを感じ取ってみて。場所が分かったら指を指すこと! うすーい殺気を感じ取れたのなら、ここでの修業は終わりだよ! さぁやろう!」
アマリアズがその場から消える気配がした。
これが気配が消える、というものなのかな?
気付くことが多いとこんな修行でも楽しく感じてくる。
さぁ次はどこから来るかな、と思っていると早速真後ろから気配がした。
ばっと振り返って指を指す。
すると拍手をする音が聞こえてきた。
「いいねー! 正確に場所を割り当ててる! でも今のは結構殺気を出したからまだまだ遅いよー! あと五秒早く見つけてね!」
「分かったー!」
アマリアズの声と気配が再び消える。
……いや、あの距離移動するってどうなってるの?
本当に僕より年下なのかな……?
すると気配を感じ取った。
すぐに指を指すと、また拍手が聞こえる。
どうやら場所は合っていたらしいが、まだまだ気付くのが遅いらしい。
あれより早くできるようになるのは相当気を張っておかないと駄目っぽいなぁ……。
よし、集中!




