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【完結】霊亀の息子は硬度最高  作者: 真打
第1章 痛みを知らない子供
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1.10.技能について


 技能とは、失われた魔法。

 とある“なにか”が居なくなり、技能とステータスが消失した。

 元から持っていた者たちは技能を所有し続けたが、“なにか”が居なくなってから産まれた鬼、人間、その他多くの種族は技能を持つことはできなくなった。


 と、いうより……手に入れられなくなった、と言った方がいいのかもしれない。


 元より技能とはその“なにか”が作り出した危険すぎる魔法だった。

 それを所有しているだけで攻撃や魔法を簡単に使用することができるのだ。

 たとえ子供でも、小さな小さな鼠でも、水の中に棲む魚でさえも。


 その“なにか”が居なくなったのは約四百年前だ。

 この月日は技能を持っている人物を数えるくらいにまで減らすには、十分すぎる時間だった。


 だが失われたものばかりではない。

 今この世界では技能の代わりに、魔術の研究が進められている。

 とある悪魔が残した魔術が今も尚数多くの種族の中で研究され、発展し続けていた。

 それらは時に技能を越え、強力な力を有する魔法使いへと昇華する。


 魔法は今、勝手に手に入るものではなく、研究し、鍛錬し、自らの力で発現させなければ使えない。

 もちろん才能の壁というのはなかなか越えられないが、努力次第でそれに勝る技を手に入れられる。

 誰もが等しく平等に魔法を研究する権利は持っているし、それに魔法は応えてくれるのだ。


 だが魔法だけではない。

 剣術も今は鍛錬すれば技能と同じ様な技を使うことができるようになる。

 技能は剣術と魔術に分かれた。

 どちらも手に入りにくくなっているが、完全に失われてはいないのだ。


 では技能とそれらは何が違うのか。

 努力して手に入れた同じような技が使えるのであれば、特に問題はないはずだ。

 失われた技能(ロストスキル)と呼ぶには些か大袈裟な気がする。

 しかしこれらは大きな違いがあった。


 簡潔に言うのであれば、技のレベルに大きな差があるのだ。

 技能にも熟練度というものが実はあった。

 だが……努力して手に入れた技と比較にならない程、しっかりとした“威力”を持っている。


 技能持ちと努力して技を身に付けた者が『岩砕き』という魔法を手に入れたとしよう。

 拳を岩へ繰り出せば、岩が砕かれる技能。


 技能持ちが『岩砕き』を使用した場合、自分の背丈よりも大きな岩を簡単に砕くことができる。

 技能は技を“再現”するもの。

 熟練度がゼロだったとしても、実戦で使用可能なレベルにすでに到達している。


 では努力して『岩砕き』を手に入れた者が、『岩砕き』を使用するとどうなるか。

 大抵の人物は、自分の半分にも満たない岩すらも破壊することはできないだろう。

 精々罅を入れられる程度だ。


 これが一番大きな違いだろう。

 他にも技能は知らない技を与えてくれたり、使い方などを知ることができたりする。

 ステータスが無くなり技能が手に入らなくなってしまったこの世界では、技は継承されるか自分で作るしかないし、使い方も誰かから教わるか自分で使い方を理解するしかない。


「……と、まぁ技能についてはそんなところか。理解できたか?」

「んー……」

「今分からずともよい。時が経てば自ずと理解できるようになる」


 ウチカゲお爺ちゃんの説明は難しかった。

 でも例え話を持ってきてくれたので、なんとなくだが理解することはできた気がする。


 つまり、技能は凄い。

 剣術や魔術は、ちょっと凄くない。

 でも頑張れば、凄くなれる。

 多分こんな感じだと思う。

 技能は頑張らなくても凄いってことなんだよね?


 一人で納得しているところを見ていたお母さんは小さく笑う。

 ウチカゲお爺ちゃんはちょっと心配そうだった。


「今話せるのはこれくらいだな」

「そうね。じゃあ宥漸。明日からお爺ちゃんと一緒に、技能の特訓をするけど大丈夫?」

「大丈夫! ……使いこなせないと、怖いし……頑張る」

「うん、そうね」


 お母さんがウチカゲお爺ちゃんを見る。

 二人は小さく頷き合い、無言の同意を得た。


「よし、では今日から宥漸は私の屋敷に寝泊まりしなさい」

「分かった!」

「あら、お世話になっていいの?」

「うむ。姫様も会いたがっておるだろうからな」

「……怖がらせないでよ??」

「約束しかねる」


 そっぽを向いたウチカゲお爺ちゃんにお母さんが頭を叩く。

 まったく動じていないようではあったが……それよりも姫様って誰なんだろう?


「ねぇねぇウチカゲお爺ちゃん。姫様って誰? そんな人いたっけ?」

「ああー……。夜になれば分かる」

「ふーん」


 なんだかはぐらかされた。

 でも夜になったら分かるんなら、別にいっか。


 何はともあれ、方針が決まった。

 僕はウチカゲお爺ちゃんに力の使い方を教えてもらうことになり、前鬼城の屋敷に泊まることになった。

 お母さんは家をほったらかしにしたくないから、毎日通うみたい。

 大変そうだけど……大丈夫かな。


 ということでお話はお終いらしい。

 僕たちはそれからすぐに戻って、お母さんは馬の世話に戻っていく。

 僕とウチカゲお爺ちゃんは早速屋敷に向かって、寝る場所を決めることにした。


 いろいろ楽しみではあるけれど、今は夜になって姫様という人に会うのが楽しみだ。

 どんな人なんだろうなぁ~と思いながら、前鬼城へと戻っていったのだった。


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