表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/24

第9話

 あのひとが死んだ。

 宗治くんが諸外国を巡り、同盟国で演説を終えたその翌日。

 新聞の一面を、宗治くんと同盟国の大統領が笑顔で握手している写真が飾りました。

 12月26日。

 風車宗治の二人目の息子である智司くんは産まれました。

 そんな記念すべき日に、あのひとは亡くなりました。

 子どもを産んで死ぬなんて、身勝手にも程がありませんかねえ。


「迎えにきました」


 総平くんを助手席に座らせて、わたしはあのひとの死体と産まれたばかりの智司くんの在る、病院へと向かいました。

 何にも知らない総平くんは、「なんかあったんですか?」と、シートベルトを締めるなり訊いてきます。

 総平くんがこれからどれだけ傷つき、そこから何を得るのか、わたしには知ったことではありません。

 だからわたしは、わたしがあのひとの死を、病院から私用の電話を通じて伝えられて、このわたしが思ったことを、そのまま呟きました。


「ざまあみろ」


 総平くんの問いかけに対する答えにはなっていません。

 答えるつもりはありません。

 答えてやる義理もありませんよ。

 これからわかることなのでね。

 なので、率直なわたしの気持ちをこぼしておきました。

 わたしはあのひとが今日死ぬことなんて知っていましたからねえ。


「?」


 総平くんは不思議そうに首を傾げました。

 歴史は視たままの未来の通りに動いています。


「どこへ向かっているんですか?」

「病院ですよ病院」


 風車美咲は死んだ。

 宗治くんの同情心を愛情と勘違いしたまま、この世を去りました。

 あのひとにふさわしい最期ではありませんか?

 病人は病人らしく、病室でひとり。

 ざまあみろ。





【そんな運命を信じぬく】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ