第7話
「あなたはまさひとくんやあのひと風車美咲のような病人を『かわいそうだ』と、上から目線で見てはいませんか?」
わたしが宗治くんに対して、小学生の頃からずっと思っていたこと。
心の底で思い続けて、いまようやくぶつけることができました。
「作倉がそう思うのなら、そうなのかもしれない」
宗治くんはあのひとを“守りたい”と言った。
あのひとは生まれつきの病気を持っていて、それは現代の医学では治すことができない。
症状をいくらか緩和する。
完全に回復できないから、せめて痛みを和らげるのだと。
定期的に適切な処置を施されなければあのひとは、眠っているのもつらい状態になってしまう。
そのまま眠り続けて起き上がらない。
わたしはそれでもいいんですけども。
「そうですか……」
宗治くんの心が、あのひとに移っていく。
わたしには耐え難かった。
「それでも作倉は俺についてきてくれるか?」
それでも。
わたしは。
「ええ、もちろんですよ」
宗治くんはあのひとのことが好き。
もしかしたら、わたしよりも。
……宗治くんの「守りたい」という気持ちはわかっているつもりですが。
理解は納得とはまた違う概念です。
わたしは宗治くんからあのひとの話を聞くたびに感じ取っていました。
ほんとうにあのひとを「守りたい」という気持ちを。
それでも、宗治くんと話が出来る時間はわたしにとって食事よりも大切なことだったから。
わたしはあのひとの話であろうと宗治くんの話を聞いていました。
ええ。
わたしの身勝手ですよ。
重々承知いたしております。
わたしは風車美咲が嫌いです。
宗治くんの愛をわたしから横取りした風車美咲が憎い。
憎い憎い憎い憎い。
わたしはずっと、宗治くんとともに生きてきたのに。
【そんな掠奪は認めない】