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第20話

 12月26日。

 智司くんの11歳の誕生日。


「ケーキ、ですか?」

「そりゃそうだよ! 誕生日なんだからさ!」


 クリスマスを過ぎたこの日。

 宗治くんは大きなチョコレートケーキを持って、自宅に帰ろうとしていました。


「智司くんの……?」

「うん」


 この、満面の笑みで頷く宗治くんはまもなく死ぬ。

 チョコレートケーキを嬉しそうに持ち帰ろうとしている、このひとは殺されるというのに。


「なぜ?」


 宗治くんはこの期に及んで、わたしの見た未来を信じないとでも言い出すのだろうか。

 自分が死ぬ。

 智司くんに殺される。


「なぜって……息子の誕生日なのに、祝わないなんておかしいぞ?」


 まさか。

 わたしの言ったことを忘れてしまっているのでしょうか?


「おかしくは、ありませんけどねえ」


 宗治くんは「だろ?」と言いながらあっけらかんと笑って、わたしを苛立たせました。

 今一度言うべきか。

 死を目前にしておかしくなってしまった?


「作倉ぁ、疲れてるんじゃないか? ……そうだ。作倉もいっしょに帰ろうか! パーティーしようパーティー!」

「え、ええ?」


 ほんとうに。

 このひとは。

 朗らかに笑うこのひとは。


「よし、総平に電話しよっと」


 今日、死ぬのだろうか。

 わたしの見た未来はいつだって変わりませんでした。

 何もしても、結果はおなじ。


「オレだよー! あ、……おやじだよー。今日これから帰るからねー! 作倉もいるよー」


 でも。

 今回ばかりは。

 違う。

 おそらく、違う。


「作倉がクリスマスプレゼント買ってくれるってさ! よかったなあー」

「言ってませんよ」

「総平何がほしい? なんでもいいぞ!」

「だから言ってませんって」

「智司はなんて言ってる? ゲーム? わかったー」


 20歳になった総平くんと。

 11歳になった智司くんと。

 宗治くんの三人家族で、これからも生きていく。


「じゃあ車で帰るからねー! あとでねー!」


 絶対に。

 きっと。




【そんな要望は通せない】


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