第17話
たまにはわたしの幼少期の話でもしましょうか。
あんまり聞いていて楽しいものではないでしょうけど。
わたしにも“幼少期”はあるんですよ。
そこまで驚くことではないでしょう。
「おはようございます」
わたしが挨拶すると、わたしの父親はおっかなびっくり「お、おはよう」と返してきました。
両親ともに健在ですが、わたしとはあまり関わり合いになりたくないそうで大学卒業以降は疎遠になってしまっています。
彼らには彼らの人生がありますからね。
もし助けを求められたら金銭的な援助はしたいと考えています。
(今朝はベーコンエッグトースト、昼の給食はカレーうどん、夜は……カレーライスですか。被りますねぇ)
物心ついた頃からこうして未来を視て、その通りになる世界で過ごしてきました。
わたしの人生は分岐点がなく、行き先の見えている一本の道。
そこに坂があれども回避はできない。
「今日は放課後に眼科へ行きますからね」
母親はわたしの左右の瞳の色が異なっているのを気にして、わたしをさまざまな目医者へ連れて行っていました。
腕利きと聞けば北へ南へと。
あちらこちらへとたらい回しにされていましたよ。
「はい。知っています」
「よろしくね」
就学前のわたしは彼女の期待に応えようとしていました。
応えようとして空回りしていました。
目にインクを落とそうとしたのは止められましたよ。
止められていなかったなら今頃どうなっていたんでしょう?
「今日はどこへ?」
「オーサカだったかしら」
「うわぁ、遠いね」
オーサカへ行くのは長期休みに入ってからでしょうに。
わたしは何も言わず、ベーコンエッグにケチャップをかけました。
手を尽くすことが彼らにとっての“愛情”であるのならわたしは享受すべきなのです。
たとえ無駄な努力であったとしても。
「……美味しい?」
「はい」
【そんな親心がわからない】




