第16話
こんなわたしにも娘がいたのでした。
いつ製造したのかも覚えていませんが、血縁上の親子関係はあるようです。
月に一度だけしか会わない上に顔も似ていないので本当に親子なのか疑わしいですねぇ。
「写真は!」
写真。
普通は持ち歩いているものなのでしょうか。
宗治くんに娘の写真を見せるように頼まれまして、ふと思い至りました。
「持っていませんよ」
「なんで!」
「なんでと言われましても」
持っていないものは持っていませんからね。
事実をそのままお伝えするしか。
こんなつまらないことで嘘をついても仕方ありませんよ。
「なら会いに行こう! 今から!」
「わたしはこの間会いましたし、宗治くんが会いたいのならどうぞ」
わたしがサラサラと住所を書いたメモを渡すと「いや、オレだけ会いに行ってもおかしくないか?」と突き返してきました。
おかしいでしょうか。
会いに行きたいと言っているのは宗治くんでしょうよ。
「もっと、なんかこう、普通の家族的な! 普通っぽい生活はしないのか!」
そのセリフ、そっくりそのままお返ししましょうかねぇ。
宗治くんと同じでわたしも女子供に構っている暇はないので。
そんな無駄な時間よりも宗治くんは宗治くんの理想のために動くべきでしょうよ。
「普通の家族ってなんでしょう?」
これはわたしの過去だったのか。
それとも他人の過去だったのか。
境界線が曖昧でわからなくなっていました。
不明瞭なのに容赦がない。
修復不可能な関係性がわたしの前に明確に提示されています。
「改めて聞かれると難しいな……」
「でしょう?」
わたしはいつの間にか婚姻していて、知らないうちに離婚していて。
血のつながった“作倉あゆ”という名前の娘がいる。
これが現実。
実体はなくとも確かに存在している過去。
その上に築き上げられた揺るぎない現在。
「でも作倉の娘の顔は見てみたい! 今度写真撮って!」
【そんな普通を目指さない】




