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第13話


「あなたを警察に突き出すつもりはありませんよ」


 わたしのひとことで、築山蛍は固まりました。

 ティーポットの口からは湯気がたちのぼっています。

 今しがたわたしのために淹れてくれたようですねえ。

 やけどさせたいのでしょうか。


「どうせ信じてもらえないでしょうからねえ」


 トウキョーのとある一等地にあるマンション。

 そこに築山蛍の事務所兼自宅がありました。


「あの首相風車宗治の秘書がうちに何の用かな」


 咳払いをしてから、向かいに座る築山蛍。

 現在の職業はマジシャン。

 さまざまな番組でマジックを披露して人気を博しています。


「わたしのもとで働いていただきたいんですよ」


 わたしの提案は鼻で笑われてしまいました。

 そりゃそうでしょう。

 まだまだ稼ぐ気でしょうからねえ。


「もちろんそれなりの待遇ですよ。まがりなりにも公的機関ですからねえ?」


 ちょっと先の未来の話にはなってしまいます。

 きっと築山蛍のメディア出演の回数が減った頃。

 わたしは“能力者保護法”のおかげで作られた組織の代表者になります。

 今やっているのはそのメンバー集めです。

 未来にそうなることがわかっているのであれば今のうちから行動しておこうと思いましてねえ。 

 わたしは淹れられた紅茶をスプーンでかき混ぜてできるだけ冷ましてから一気に飲み干しました。


「あれは事故じゃなく事件、そうでしょう?」


 築山蛍は口角をあげて、「どうしてそう思うのかな?」と答えました。

 決して若くはない彼女がテレビでもてはやされる理由は、マジックの腕前ではなく。

 航空機の事故からたった1人だけ生還したところにあります。


「わたしには過去が見えるんですよ。どんな人間が相手でもねえ」

「それは面白いな」


 わたしの言葉を、築山蛍は信じていない様子です。

 面白いと口で言って目は笑っていません。


「今朝あなたはトーストを二枚食べた。そのティーポットでお湯をわかして、紅茶とコーンスープを作った」

「……すごいな。とんだ名探偵だな」


 サングラスの奥で片目をつぶる。

 片方の目で過去を見つめます。

 もう片方を開けてしまうと現在しか見えませんので。


「テレビを見ながら朝食を済まして、バスタオルと着替えを持ってシャワールームへ向かう」

「わかったわかった! そこから先はやめてくれないかな?」


 わたしが過去や未来を見るように、彼女にも特殊な技能がありまして。

 BB弾ほどの大きさに物体を縮めて持ち運びできるようにできる、といったとっても便利なマジックを使いこなしています。


「あなたは自らの能力で機内に爆弾を持ち込み、破裂させた。自分一人が助かるようにしてねえ?」

「何のためにそんなことをしたというのかな」


 何のためでしょう?

 わたしにはさっぱり理解できませんよ。

 わたし自身には功名心なんてありませんし。

 宗治くんのそばにいられるならわたしはそれだけで幸せですので。


「気が向いたらご連絡ください。待ってますよ」


 この誘いを断るようなら“事故ではなく事件で、マジックによって意図的に発生した爆発である”といった情報を週刊誌に売り込むまでです。

 どんな罪になるのか想像もつきませんけど。

 たくさんの命を犠牲にした上での現在ですし。

 当然の報いは受けてほしいですねえ。




【そんな邪悪を引き込まない】

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