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第7章(3)

「おまえの両親はひどく悲しんでね。もう魔法とは無縁のあっちの世界に住むことにしたんだよ。そしておまえに真実を話すことも拒み、静かに暮らしたいって言ったのさ」

ルイスは自分の両親の気持ちを考えると複雑な気持ちになった。閉じ込めていたのは、あらゆることから、守るためだったのかと、そう考えると、自分はなんて身勝手なことをしてしまったのだろうと思った。

「だが、おまえは影を探しに来た。おまえの両親は反対かもしれないが、私は逆に賛成なんだよ。いつまでも影と向き合わないでいることなんて、やはりおかしなことだからね。もちろん、決めるのはおまえだ。今の話を聞いて、おまえが本当に影を欲するか否かおまえが決めることだ。さあ、どうするね」

そこまで話を聞いたルイスはじっと考えこんでしまった。フィルやクリスティーナでさえもあまりに突飛な話だったので、頭の中を整理するのに時間がいった。ルイスは記憶にない自分の姿を想像しようとした。大魔法使いと言われ、どんな魔法も使いこなしていた自信過剰な自分。今の自分とはかけ離れすぎていて、果たしてその姿は本当に自分なのか、不思議でしかたなかった。そしてそんな力を持ちつつも、自らそれを手離したというのも信じられなかった。いったい旅先で自分は何に出くわしたのだろうか。

「もし僕が影を取り戻したら、記憶も戻ると思いますか」

ルイスはメンフィスに尋ねた。

「たぶん、それは無理だろう。ただ大人に成長することだけはできるだろうが」

メンフィスは考え込みながらそう答えた。

「大人になったら、どうなるのかな」

ルイスがそう聞くと、それにはフィルが答えた。

「大人に馬鹿にされなくなるし、今よりも力が強くなるな。俺だったら早く大人になりたいぜ」

「そうね。今回旅して、子供だってだけで敬遠されて、不自由な部分が多かったわ。私も早く大人になりたいわ」

クリスティーナも、今回の旅のことを振り返りながら、そう答えた。

「それと大人には責任というものが、つきまとう。自由である反面そういったやっかいなものがあるっていうことも知っておくべきだね」

メンフィスは二人の意見を聞きながら、もう一声付け加えた。

「僕は大人になりたいかどうかは分からない。けど、あの屋敷から自由になって、自分が旅先で何があったのか、それを知りたいと思う」

「ということは、影を欲するということだね。それでいいんだね」

メンフィスはルイスに念を押して聞いた。それに対してルイスは大きくゆっくりとうなずいた。

「なら、影を探さなくちゃいけないね。だがね、それには、星の石がいるんだよ。あれは魔法の力を増幅してくれるからね。影を探すには、それ相応の魔法の力が必要なのさ」

「それなら、私が持ってます」

クリスティーナは、慌てて自分の荷物から星の石の包みを取り出した。

「ほほう、これはまた好都合だね。なら、すぐにでも影を探し出せるよ。どれどれ、水晶玉のある部屋へと移るとするかね」

メンフィスはそう言うと、重そうな腰をよっこらせと持ち上げた。三人はメンフィスに連れられて、居間とは違って、窓のない石畳のある部屋へと案内された。中は真っ暗でひんやりとした冷気をともなっていた。唯一の灯りは二つのランプぐらいで、あとはしめやかな闇が辺りを包んでいた。円のように丸いその部屋の真ん中には、水晶玉をのせた丸テーブルが置かれていた。メンフィスはクリスティーナから星の石を受け取ると、それをしっかりと右手で握り締めた。するとその手の中から、一筋の力強い光がぱっと輝いたかと思うと、辺りの闇を一瞬引き裂いた。ルイス達は眩しさのあまり思わず目をつぶった。それから少しすると、その眩しさは消えたが、メンフィスの手だけはずっと光を放っていた。彼女は、その光っている右手と左手を水晶玉の上へとかざし、今まで聞いたことのない言葉で、水晶玉にささやきかけた。彼女の目は真剣そのもので、微動だにしなかった。重い沈黙が辺りに漂い、ルイス達も緊張した面持ちで、彼女の動きを見つめていた。メンフィスはしばらくじっと水晶玉に見入っていたが、突然顔色を変え、ふっとフィルの方へと視線を向けた。

「フィルがどうかしたの」

急に生気を失ったかのように青ざめた表情をしているメンフィスに向かってルイスは尋ねた。

「どうしたも、こうしたもないよ。おまえの影は誰だと思う」

「それを聞きにきたんだよ、僕は」

「本当に聞きたいかい」

メンフィスは深い吐息をつくと、ルイスの目をじっと見据えた。

「もちろん」

ルイスは当たり前だと言わんばかりに答えた。

「じゃあ、言うがおまえの連れの少年だよ」

それを聞いたルイスは、驚いたというより呆れたといった顔で笑い出した。

「まさか、フィルが僕の影だっていうのかい。彼はれっきとした人間だよ」

そう言うとルイスはフィルの側により、彼の腕をしっかりと握り締めた。

「ほら、ちゃんと肉もあるし、骨もある。町中で見たあんな黒っぽいのとは大違いだよ」

「それが不思議なんだよ。私ですら、こんなことは今まで例を見たことがないんだよ。影がれっきとした人間のように存在してしまうなんてことが」

メンフィスは理解できないと頭を振った。


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