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第5章(1)

三人が太陽の塔を出てみると、不思議なことにもう夕暮れ時であった。どうみても小一時間あまりしかいなかったのだが、どうやら塔の時間とこちら側との時間の流れは違うようであった。

「それでは帰りましょうか」

ルイスはあまりにも度肝を抜かれるようなことばかりで、しばらく呆然としていたが、クリスティーナのその言葉で、ようやく正気に戻りつつあった。本当だったら、こんな時こそ僕がしっかりしなくちゃいけないのにと、ルイスは気遣わしげ彼女に目を向けた。太陽の塔に行けば、何もかもが解決すると思っていたのが、見事にそれが打ち砕かれてしまったのだ。どう見ても平静でいられるはずがない。

「残念だったね」

ルイスは気の利いた言葉を思いつくことができず、率直な気持ちをそのまま伝えた。それに対してクリスティーナは

「ええ、そうね。でも魔法の都のことを教えて頂いたから、一応の収穫はあったような気がするわ」

と、笑顔で応えた。

「魔法の都に行くの?」

ルイスのその問いに、彼女はきっぱりと言い切った。

「もちろん、行くわ。というより、それしかもう道はないみたいだから」

また笑顔で彼女は応えたが、まだどこかで迷いやためらいがあるのか今度の笑顔はどことなく曇りがちであった。

「フィルは魔法の都の行き方を知っている?」

彼女は三人の先頭を歩いて行くフィルに尋ねた。

「影の都なら行ったことあるが、魔法の都は行ったことないぜ」

フィルははぶっきらぼうにそう答えた。

「そう…」

フィルの返答に、彼女は不安げな表情を浮かべた。

「行くかどうかは、しばらく考えた方がいいんじゃないかな」

彼女の心を察してか、ルイスはそんな言葉を述べた。

「そうね」

クリスティーナは考え深げにうなずいた。

「まずは宿に着いて、おいしい物を食べてそれからだよ」

「それもそうね」

ルイスにそう言われ、ようやくクリスティーナは本当の笑顔を取り戻した。その後三人は一切会話をしないで、黙々と朝来た道をたどった。朝ですら、人をはばかるような雰囲気をかもし出していた大通りであったが、夜も近づいて来ると、それは更に、増して行き、木々達がささやきあっているのが聞こえてきそうだった。三人は、木達の機嫌を損ねないように、静かになるべく早く歩いて行った。ひたすら歩きに歩いた三人は、なんとか無事に大通りを後にして、あの人通りの多い、店が立ち並ぶ道を通り過ぎ、宿屋の前へとたどり着いた。宿に入ると、三人はすぐに食事をとり、自分達の部屋へと戻ると、今日の疲れを癒そうとした。けれども三人一緒だと、どことなく気まずいのか、フィルは外に行ってくると言って、部屋を出て行った。クリスティーナと共に部屋に残されたルイスだったが、今度はクリスティーナが外に行ってくると言い出した。

「少し今日あったことを考えたいの」

そう言って彼女もまた部屋を後にした。一人になったルイスは、ふうっと一つため息をつくと、ベッドに倒れ込み、そのまま眠りについてしまった。


「おい、起きろ」

ルイスはフィルの不機嫌そうな声で目を覚まされた。

「これは何だ」

怒った調子で、フィルは手に持っている紙切れをルイスの目の前に叩きつけた。いったい何があったのだろうと、まだ寝起きのルイスはぼんやりとしていたが、その紙切れに書いてある文字を読んで、一気に目が覚めた。そこにはこんなことが書いてあった。

『少女は預かった。少女の命が欲しければ、星の石を持って、マルクの酒樽の置いてある倉庫に来い』

「これって、クリスティーナのこと?!」

「クリスティーナはどこに行ったんだ?!」

「考え事がしたいって行って、外に出て行ったんだけど…。でもなんで星の石のこと知ってるんだろ。星の石ならここにあるけど」

クリスティーナの荷物に目を向けながら、ルイスは狐に包まれた表情を浮かべた。

「きっとあいつだ」

フィルは睨みつけながら、その紙切れをぎゅっと握り締めたかと思うと、部屋を飛び出し、階段を駆け下り、カウンターにいる宿屋の亭主をどんと突き飛ばした。いきなり突き飛ばされた亭主は思い切り尻餅をついた。そして胸ぐらをぐいっとフィルにつかまれた。

「子供だと思って馬鹿にするな! おまえだろ、星の石のことをしゃべったのは。この紙切れの奴とグルだな」

相手は子供であったが、フィルの剣幕があまりに凄かったので、亭主は恐れたようにうなずいた。

「この倉庫っていうのは、どこにあるんだ」

「太陽の塔の大通りをまっすぐ行って二つ目の横切っている道を右に進むと、更に右に道がある。その道の突き当たりに倉庫はある」


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