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第3章(2)

ラベルトとの清々しい別れとは裏腹にルイスは重くのしかかってくるような暗闇を見つめていた。その先にはいったい何があるのか。剣の力だけでその闇を突き破ろうとするのは、いともたやすく見える。しかしそれが駄目なら、どうすればいいのだろう。ふとズボンに吊り下げられた細身の短剣に目をやった。これを使うことで何かが変わるのか。けれども今の自分ではこれを使うこともできない。そんな剣術もなければ、力強い意志もない。そんな自分に何ができる。そんな自分にフィルのことをいいとも、悪いとも言い切れない。彼と僕の間には大きな隔たりがある。ルイスはクリスティーナとラベルトの話をしているうちに、ラベルトと別れた時に見た暗闇を思い出していた。ルイスはズボンに吊り下げられた細身の短剣に再び目をやった。そうして今度はその短剣をためらうことなく取り外し、クリスティーナに渡そうとした。彼女は急に短剣を返され驚いた表情をした。                    「これは別に返さなくてもいいわ。私は護身用のナイフも持ってるから。でもルイスは身を守る物を何一つ持ってないんでしょう。だったら、それを持っているといいわ」         

クリスティーナは短剣をルイスに返そうとしたが、ルイスはそれを受け取らなかった。彼女は当惑気味にルイスを見た。

「いったいどうしたの」                       


クリスティーナの問いに、ルイスは押し黙った。彼の口元は固く閉ざされ言葉を失ってしまったかのようだ。クリスティーナはルイスが話す気になるまで、じっと辛抱強く待つことにした。頭上で揺れる木の葉の音を聞きながら、自然の中の時間に自分を合わせていく。そうすることによって、待っている時間を、それほど長く感じずに過ごすことができるのだ。それでも、ルイスの沈黙は果てなく続くように思えた。もうそのことに関しては、話してくれないかもしれないとクリスティーナがあきらめかけた頃、ルイスはようやくその重い口を開いた。ルイスは自分の言っていることにあまり自信がないのか、たまにどもったり、口をつぐんだりしながら、のろのろとした口調でクリスティーナに語り始めた。ラベルトを助けるために、フィルが剣を使ったこと。人が斬られるのを見るのは初めてだったこと。フィルは何の迷いもなく、敵を倒していたが自分は敵だとしても人を傷つけることはできない。だから、自分には短剣は必要ないということを、彼は話した。クリスティーナはルイスの話を聞きながら、自分が穴から出てきた時のフィルのよそよそしい態度を思い返していた。そうか、あれはそういうことだったのかと、クリスティーナは少しだけ合点がいったような気がした。

「僕にはフィルみたいに容赦なく敵を倒せない。もちろん、力もないけれど」

ルイスが最後にそう言葉を続けると、クリスティーナは何も言わず、しばらくの間黙っていた。そして今度は彼女が口を開いて語り出した。

「本当にそうかしら。自分の命が危険にさらされたとしたら、誰でも剣を手にすると思うわ。そして敵を倒そうとする。自分が生きるために。向こうが殺そうとしてくるのだったら、自分もそれぐらいの覚悟で望まないと駄目なんじゃないかしら」

「そのためには人を傷つけてもいいと」

クリスティーナの意外な言葉にルイスは驚きながらも、彼女に尋ねた。               

「もちろん、人を傷つけるのは良くないことだけど。自分の命が狙われたら、やっぱりそうせざるを得ないということよ。でないと、自分が殺される。ルイスは自分が殺されてもいいの」 彼女の問いかけにルイスは詰まった。


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