表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/104

Lv.62 暗殺者の呪術

俺は、懐かしい感覚に襲われて目が覚めた。

ライムがそばにいる気がしたんだ。

目を覚ましても、みんなが眠っているだけで、ライムはどこにもいなかった。


「お、目が覚めるなんてやるな」

「……随分元気そうだな」


俺が眠っていたすぐそばにあった窓の外には、首領がいた。仮面越しに、小屋の中を見ている。


「なんの用だよ」

「……体に不調は?」

「不調? ……首が熱いな」

「ちょっと見せてみな」


俺は服を少し捲り、首を首領に見せる。

首領は仮面越しでもわかるくらい、顔を顰めた。

そして静かに鏡を取り出した。

鏡に映った俺の首には、黄金に輝く首輪がついていた。


「……なにこれ」

「簡単に言えば呪いかな。詳しく言えば忘却、死、追跡、朦朧。それと黄金の混合呪術だ」

「どう言うことだ?」

「忘却はその名の通り忘れていく。死はそのまま、死ぬ。追跡はお前のいる場所が術者にわかる。朦朧は意識が朦朧とする。黄金はそれらの呪術をひとまとめにする役割だ」

「……え、俺死ぬの?!」


首領は大きく頷いた。俺の大声に反応して、他のみんなが目を覚ます。

俺は軽く事を説明した。


「それで、どうやればこの呪いは解けるんだよ」

「知らん。だが術者を探して殺せばなんとかなる、はずだ」

「はずって……」

「正直あんまりよくわかっていない。知っているのは、対象の名前を知ってなきゃ呪いをかけれないって事くらいだな」


名前……

そういえばあの王様俺の名前聞いてきたなぁ……とぼんやりと思い出す。


「王様、くらいか。俺の名前聞いてきたのって」

「シルヴァ、ぼーっとしてる……これが朦朧の呪い?」


アルが首領に問いかける。首領は大きく頷いた。

俺はその様子を見て自分の頬を張る。意識がはっきりし、俺は目を覚ましたような感覚に襲われる。

これは……非常にまずい。常に意識をしっかり保たなければ、、、


「……」

「シルヴァ!」

「あ! ……悪い、意識をしっかり保たなきゃすぐに朦朧としてしまうな。死の呪いとかが発動するのって、どれくらい猶予があるんだ?」

「死はおよそ三日。最短なのは朦朧と追跡、術がかかった瞬間だ。忘却はゆっくりと進行していって四日だな」

「つまりまだ誰も襲撃に来ていないって言うことは……うぅ。また意識が、、、」


俺はまた頬を張る。


『テレレテッテレ〜♪』

『レベルが上がりました〜!』


煽られている気がする。


「いや、今はここから移動する事が重要だ。術者を探すぞ」


俺達はここを出る準備をする。


「ふげ〜!」


誰かの声が、小屋の外から響く。

とても間抜けな声だ。

そう思っていたら、吟遊詩人がよろよろと森の奥から出てきた。


「蛇の足です……とんでもない数で押し寄せてきてます……」

「あ〜。やっぱりか」


首領はフラフラと歩く吟遊詩人を抱え上げる。


「おそらく王様が、蛇の足にお前の暗殺を依頼したんだろう。そこで暗殺者の呪術師が呪いをかけたのだろう。俺は用じがあるからもうここに居れないが……まぁ、頑張ってくれ!」


そう言い残して、首領は吟遊詩人を抱えたまま飛んでいった。

なんて適当な奴なんだ。


「準備できたよ! まずはどこいくの?」

「あ〜…………王様のところだ、俺の名前を聞き出したから怪しい」

「なら僕が案内しよう」


そう言って、イーグルさんは床板の一部を外す。そこには隠し階段が続いていた。


「これは城の地下まで続いている。地下闘技場に出て階段を登ると、一階の談話室だ。そこからはコーネリアに案内してもらえ」

「イーグルさんは?」

「僕は蛇の足を迎え撃つよ。なぁに、時止めの魔術師に任せな」


そう言って俺達の背中を押して、隠し階段に押し込める。

床板を直しながら、イーグルさんは思いだしたかのように動きを止めた。


「コーネリア」

「……なによ」

「先生の研究室だがな、この城にある可能性が高い」

「はぁ!?」

「俺はそれを探すために戻ってきたんだ。まぁ、この一件が終わったら一緒に探そうな、僕との約束だぞ」

「……分かったわよ。絶対約束だからね」


イーグルさんはその言葉を聞くと、床板を完全に閉じた。

俺達はいそいそと狭い階段を降り、手掘りで作ったであろう狭いトンネルを通る。

トンネルの終わりは、石煉瓦の壁だった。

俺がその壁を強く押すと、ボコリと石煉瓦の壁が崩れた。


「どこに出たんだ?」


俺達が出た場所は、暗い牢屋の中だった。

ギリギリ視界が確保できる程度の暗闇だ。おそらくナイトメアは出てこない……


「……いや、あかりのある場所に行こう」

「そうだね、またあの影が出てきたら難儀だし」

「あれ、アルはあれがナイトメアだって知らないのか?」

「……確かに似てるけど、悪夢持ちは日中も動くよ?」

「そうか……じゃあ俺の勘違いか? 誰から聞いたんだっけ」


思い出せない。これが忘却の呪いか。


「とにかく、今は急いで上にあがろう。一箇所に止まっていたら追手はすぐに追いついてくる」

「でも出口がわからないよ?」

「あたし、わかるかも」


そう言ってコーネリアは、ゆっくりと歩き出した。どこか不安げな足取りで、暗い通路に出る。


「昔、先生とここにきた事がある気がするの」

「先生って、魔術の?」

「うん。魔術の実験とか言って、先生は魔物と地下闘技場で戦ってた。あ、こっち!」


そう言ってコーネリアは走り出した。

俺達が後に続くと、強い光が俺達を包み込んだ。

目を開けると、無数の松明で照らされたコロッセウムが広がっていた。

観客席にもコロッセウムの中心にも、誰もいない。


「あそこから外に出れるはずよ。でもこの上は普通に王城……位置がバレてるのに誰も待ち構えてないはずがないわ」

「ここから先は…………」

「シルヴァしっかりして! この呪いめちゃくちゃ厄介ね」

「悪い……ふぅ。この先は死地って事だな?」

「そうよ。みんな、気を引き締めてね」


そう言ってコーネリアはコロッセウムの外周をぐるりと周り、階段を登った。

登り切った先は、ボリスの屋敷とそっくりな作りをした談話室だった。


「誰も……いないわね」


そう言ってコーネリアが先陣を切る。俺達五人は、誰もいない談話室に降り立った。


「王様ってどこにいるんだ?」

「多分自室。この城の一番上ね」

「ならチャチャっと登ろうか……?」


おかしい。違和感だ。でも意識が朦朧とするせいで、なにがおかしいのかわからない。


「シルヴァ?」

「どうしたの? また意識がぼーっとしてるの?」

「なんや、もうおねむか?」


一人、俺の方をじーっと見ている。

ナイフを取り出して、俺の方に寄ってきている。

俺はすぐさま近くに置いてあった花瓶を叩き割り、その破片を自分の掌に突き刺した。薄れていた意識が覚醒する。


「【火属性魔術】!」


俺の放った魔術は、ナイフを持っていた人物を丸焼きにした。


「わっ!」

「……蛇の足の暗殺者かしら。音もなくいつの間にかいたわね」


火だるまの蛇の足の暗殺者を蹴りながら、コーネリアがポツリと呟く。


「とにかく急ぐぞ!」


俺はそう言って部屋の扉を開けた。すると俺の顔に、ナイフが深々と突き刺さった。


「シルヴァ!」

「くっ! トラップか!」

「いて〜……でもあんまり痛くないな」

「意識が朦朧としてるからよ! 深手にすら気づかないなんて、めちゃくちゃ本気で厄介な呪いね!」


アルが俺の顔に刺さったナイフを抜き、すぐに治療してくれる。頬に刺さってくれたおかげで、喉奥までは行かなかったようだ。

コーネリアとセレンは周囲を警戒してくれている。

俺はその様子をぼーっと見つめていた。

・感想

・いいね

・ブックマーク

・評価等


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ