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Lv.000 【NEW GAME】

気分が悪い。

回転する椅子に縛り付けられて、強制的に何度も何度も回された気分だ。


うっすら目を開け、周囲の様子を確かめる。どうやら海中でも、海岸でもない。地面はふかふかとした草。その下には土。

空からは日光が降り注ぎ、このまま目を瞑れば眠れそうなほど心地いい。

だがこんなことしている暇はない。

俺は上体を起こし、目を擦る。

視界、良好。周囲に敵影無し。


「ここはどこだ」


俺はゆっくり立ち上がり、自分のステータスを確かめる。

いつものように指を空中を滑らせ、ステータスが表示される。


「……レベル1。それ以外は変わらないな」


お飾りのようなステータス達と、膨大な魔力。そして、レベルは1。

指をスライドさせ、ログ画面に移動する。

いつも通り経験値が増えていくログが流れるだけの、退屈なものだった。ログを遡ってみると、プッツリと切れていた。その地点からは、遡ることができない。


「……スキルは残ってるのか」


スキル画面はすんなりと出るが、俺が持っているスキル以外は全て黒く塗りつぶされて確認ができない。

とりあえず立ち上がり、無作為に歩き始める。

どこまでも続く地平線。

振り向いても、左右を見ても同じ風景。自分がどの方向に歩いているのか、もうどこからきたのかも分からない。

なんだか全てがやるせなくなり、俺はその場に倒れ込み目を瞑った。


「アル、コーネリア、セレン。みんな無事だろうか……」


今では少し懐かしい仲間達の顔が、しきりに浮かんでは消えていく。


「ライム……」


ポツリと呟いた時、俺の眼前に何かが影を落とした。

目を開けると、そこには巨大な顔面が俺を観察していた。顔の大きさだけで、俺の三倍はあるだろうか。


「うぉっ!」


驚き、声をあげてその場から離れる。

そこには、巨人が立っていた。

腰布を巻き、手には巨大な棍棒を。

そして何より首には、人間の干物で作られたネックレスを掛けていた。


「友好的には見えなさそうだが……」


俺が静かにそういうと、巨人は棍棒を大きく振りかぶった。


「【鎖罠】!」


空中から射出された鎖は、巨人の棍棒を奪い去る。だが巨人はそのまま拳で、俺の事を潰そうとする。

咄嗟に飛び、巨人の拳を回避する。


「【フラッシュ】!」


光を放ち、巨人の目を潰す。

目を抑え絶叫する巨人は、手当たりというか。足当たり次第に地面を踏みつけまくる。

地震のような振動のせいで、俺はまともに立つ事もできない。

巨人の大きな体が、俺の真上にまで迫ってくる。大きな足の裏が、俺の体を押し潰そうと迫ってくる。


「【鎖罠】!」


鎖で自分の体を引くが、間に合わない。鎖に引かれる途中で俺の体は潰され、俺は全力でその足を受け止めた。

スキルを打つ暇さえなく、俺の体はどんどんと変形していく。


「こんなところで……! 死ねるかぁ!」


絶叫を上げたその時、何かが地面から湧き出てきた。

ひんやりとした触感が肩を伝い、俺の眼前に盾のように広がる。

その透明色の生命体は、巨人の足裏を溶かしながら押し戻す。


「キュー!」


その声には、聞き覚えがあった。

巨人は痛みのあまりにひっくり返り、そいつは巨人の顔に飛びかかった。

口から体内に入ると巨人は苦しそうに暴れたが、数秒もすれば身動きひとつしなくなった。


巨人の腹から皮膚を溶かして出てくる。

俺の方をじっと見るように、そいつは止まっている。


「キュ!」

「ライム!」


俺は勢いよく駆け出す。巨人の体を上り、腹の上でそのたった一匹のスライムを抱きしめる。


「お前死んだかと思ってたよ……なんで生きてるんだよ!」

「キュ!?」

「あぁ、違う違う。そっちの意味じゃなくて……とにかく、またあえてよかった……」


ライムは嬉しそうに、俺の体に体を擦り付けてくる。

皮膚が溶ける音がして、ゆっくりと痛みがやってくる。

ライムを引き剥がし、その頭を撫でる。


「ここはどこなんだ?」

「キュ〜! キュキュ」

「なるほどな。全くわかんないな〜」

「キュー……」


ライムは俺を導くように、ある方向を指し示す。

その方角には、空に暗雲がかかっていた。


「なんだ? あっちに行きたいのか?」

「キュ」

「そうか。またライムと二人旅だな」

「キュー?」


ライムは首を傾げる。

俺はその頭をまた撫でる。


「大丈夫、またみんなと会えるさ。ライムとも会えたんだからな」

「キュー!」


そうして、俺は歩き始めた。

また、新しく。最初から。

強くて NEW GAMEだ。

これにて第一部終了となります。

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第二部はぼちぼち書きます。

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