Lv.100 記憶の海
「起きろクズ野郎!」
首領はそう怒鳴りながら、海底に黄金の鎖を伸ばす。何かを鎖で掴み、それを引き上げる。
それは、船の残骸だった。
「……!」
「お、思い出したか?」
船の残骸があった場所を中心に、海に巨大な渦巻きが現れ始める。周囲の空には暗雲が現れ、一瞬で周囲は嵐となった。
ここは、神海だった。
「何奴だ」
「おい、海を逆回りにしろ」
海底から響く声、海の神だ。ライムを殺した、あの。
それに恐れることなく首領は命令する。
海底から黒い触手が伸びてくる。首領はその触手を受け止め、握りつぶした。
「……貴様、あの時の」
「いいからとっとと回せ」
「……了解した」
海の神は素直に従い、海の潮目を逆にする。巨大な渦潮はゆっくりとその回転方向を逆にし、時計回りとなった。
「ここはプログラムの始まり。プログラムの終わり。神がこの世界を作った開闢の点だ。バグの温床、時を越える事すら可能だ。そこを超えて裏世界に行けば、時止めを回避することもできるだろう」
「……?」
「まどろっこしいから簡単に言おう、お前にはレベル上げをしてきてもらう」
「はぁ!?」
俺の口がやっと開いた。
「いい反応だ。全てを理解するために、お前には神話の時代へと行ってもらう」
「何が……どういう事だよ!」
「ふはははは!」
首領は高笑いしながら、俺の胸に腕を深く突き刺した。
痛みはないが、何かが吸い取られる感覚がある。
『テレレテッテレ〜♪』
『レベルが上がりました〜!』
レベルの上がった音がする。
しかし、いつもより遠くから聞こえた。
『テレレテッテレ〜♪』
『レベルが上がりました〜!』
『テレレテッテレ〜♪』
『レベルが上がりました〜!』
俺の力が抜けていく感覚がある。
まさかと思い、俺は動く指で自分のステータスを開く。
「なんだ……これ」
俺のレベルが、経験値が、すごい勢いで減っていた。
ついに俺の経験値が底をつく。
そして、俺の呼吸に合わせて経験値が入っていく。
「何をしたんだ!」
「お前の経験値をいただいた。これで100レベルちょうど、か」
首領はぶつくさと言いながら、空中をなぞっている。
「お前……何者なんだ?」
「……」
首領は黙って空を見上げる。
「もう時間的に大丈夫そうだな」
そう言って、首領は仮面に手をかけた。
「俺の正体はな……」
首領は、ゆっくりと仮面を外す。
「……は」
俺は息をのんだ。
ニヤリと笑った首領の顔は、見覚えがあった。
『髪の毛は銀の短髪サラサラヘアー。肌はもっちりでできものなんて一つもない。きれいに整えられた鼻、口、目元。
そしてシェフのこだわりワンポイント。目は少し切れ長で、瞳の色は金』
「お前は、俺だ。俺は、お前だ」
首領の顔は、俺の顔だった。
・感想
・いいね
・ブックマーク
・評価等
よろしくお願いします。