Lv.99 どうしてここに
「おら! 何死のうとしてるんやボォケェ!」
聞き慣れた関西弁が、聞こえる。
死も生も、他人も自分もないそんな心地。
何かが投げられ、黄金卿に当たり、割れる。
黄金卿は一瞬動揺するが、何も起きない。
その瞬間、俺の首から勢いよく剣が引き抜かれた。
この、
時を、
待って、
いた。
そんな声が聞こえた。
俺の首から噴き出るはずの血液は噴き出ず、周囲の景色は静止していた。
あの研究施設で見た光景。時止め。
しかしあの時と違うのは、俺も動けないということだった。
「なんとか、間に合った!」
俺のポケットの中から声が聞こえる。視線だけを移動させ、自分のポケットを見る。
俺のポケットから、人間の腕が這い出てきていた。
「よいしょ」
俺のポケットから這い出てきたのは、仮面をつけた男。首領だった。
「元気?」
「……」
「あ、止めてるから返事できないのか」
首領はそう言いながら、俺の傷を応急処置した。そして俺を担ぎ上げ、穴の開いた遺跡の壁に立つ。
「ん? どうしてここにって顔だな。お前が吟遊詩人から受け取った石。あれは転移の魔法陣が刻まれている。地上で俺の魔力が回復した瞬間時を止め、魔法陣でここまで戻ってきたんだ」
「……」
「まぁ言いたいことはわかる。だが、そこまで長く時は止められないから説明は省くぜ」
首領は足で魔法陣を書く。魔力が魔法陣に流れ込み、魔法陣が光り輝く。
首領が俺を抱えたままその魔法陣を踏むと、一瞬で周りの景色が変わった。
周囲は、海だった。
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