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妹と遠足!①

 今日は想夜歌の通う幼稚園で、親子遠足がある。もちろん、俺も一緒に参加する。想夜歌と遠足に行けるとか、神行事すぎる。


 共働きの多い昨今の世情を鑑みてか、多くの行事は土曜日に設定されている。そのせいで休日出勤しなければならない先生には頭が上がらないな。


「お兄ちゃん、おべんともった?」

「持ったよ」


 自転車のチャイルドシートから、ばしばし背中を叩かれた。家を出てから何度目か分からない確認である。

 入園して初めての遠足ということで、数日前からずっとそわそわしていた。俺も想夜歌も。


 たぶん、他のママさんたちも気合を入れてきていることだろう。想夜歌が舐められないよう、今朝は五時に起きて全力で弁当を作って来た。


「おたから、たくさんみつける」

「遠足ってそんなイベントだったっけ」


 想夜歌のピクニックのイメージが謎すぎる。

 行き先は、それほど遠くない場所にある総合公園だ。四月には花見スポットとして有名でピクニックができるスペースが広く、また幼い子ども向けの遊具も豊富なので、伸び伸びと遊べると思う。


「楽しみ!」


 想夜歌はキラキラ目を輝かせて自転車を降りた。降ろしたのは俺だけど。


 いつもより多い荷物を持って、集合場所に向かう。公園までは貸し切りバスに親子別々に乗り込んで移動することになる。

 先生に挨拶して、想夜歌を見送る。


「せっかく想夜歌と遠足なのに、移動中は別々なんてあんまりだ……ああ……想夜歌……」

「さくおはよう!」


 バスの階段を駆け足で登っていった想夜歌は、もう俺のことなんて見ちゃいなかった。悲しい。


 父兄用のバスに移動する。やはり参加者は母親が多い。数人だけ、父親らしき男性が肩身狭そうに座っていた。

 高校生男子が珍しいのか、俺に視線が集まった。毎日送り迎えをしているから顔見知りのママさんも多いけど、幼稚園バスを利用している家庭や時間が合わない人は初対面だ。


「響汰」

「あ、暁山か。土曜日だから母親が来るのかと思った」


 ポンポン、と隣の席を示されたので座った。暁山は白いパーカーにジーンズというラフな格好で遠足に臨むようだ。メイクもしていて、朔のために気合十分といったところ。


「勝ち取ったわ」

「なにを?」

「母から、遠足に参加する権利を」


 親子遠足に参加できるのは、子ども一人につき親一人までだ。


「たとえ実の母でも、朔の初遠足を譲るわけにはいかないもの」

「……いつも忙しくて一緒にいられないんだから、譲ってあげればよかったんじゃないか?」


 うちの親みたいに、育児放棄に近い形でもないからな。暁山の家はシングルマザーで苦労も多い分、親子の時間も大切だろう。


「危うく喧嘩になりかけたわね……でも、最後は鶴の一声で決まったわ。朔が私と行きたいって言うんだもの。朔が私を選んだのよ」


 誇らしげに胸を張る暁山は、ものすごい早口だ。強情な暁山を見かねて、朔が仲裁する光景が目に浮かんだ。あの年で女性への対応を熟知していると見える。

 まあ俺としても、暁山がいてくれてよかった。ママさんたちが苦手なわけではないが、気を遣うからな。想夜歌と朔は仲がいいし、暁山が相手なら楽だ。


「響汰はよく来られたわね」

「ん? どういうことだ?」

「だって、どうせテストは赤点で追試でしょう? 勉強しなくていいの?」

「返却前から赤点前提にしないでくれます?」


 先日終わったばかりの中間テストは、しっかり勉強したから赤点はない! ……はず。

 それにしても、暁山のテンションが高い。いつものクールな声色よりほんの少しだけ跳ねているし、口角も少しだけ緩んでいる。初対面の人が見たら不機嫌なのかと勘違いするかもしれないが、これでも超ご機嫌である。

 朔より楽しんでそう。


 バスには続々とママさんたちが乗り込んでくる。

 そのうちの一人が、俺たちの顔を見て笑った。


「ちょっと! なんでバスに子どもがいるのよ!」


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