慟哭
「あなたの罪は何ですか?」目の前に座っている白衣を着た女性が私に問いを投げる。
「人を...殺しました。」
「何人殺しましたか?」
「たくさん、女も子供も仲間も殺しました。」
「どうやって殺しましたか?」
「鍛えた体で、人の文明で...殺しました。」
暫く問いと返答のキャッチボールが続いた後、彼女はグリップでまとめられた書類から目を放し、私の顔をじっと凝視して薄っすらと微笑む。
「それは仕方がなかった。あなたは化物になることを強要されたんです。これからは人として、笑顔で余生をお過ごしください。」
微笑みながら彼女はそう言った。私の罪は許されると、人として生きても良いのだと。
その一言は廃れていた私の心に今までずっと寄り添っていたかの様な温かさがあった。
私は忘れていた感情を思い出し、普段深く沈んでいた口角を上げ、喉を震わせる。
「ははは...。」
「ははははは…」
「はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!」
真っ赤に濡れた私の掌は、かつて真っ白だったであろう衣装を真っ赤に染めて、その場に倒れている女性の手を握っている。周囲から私の名を呼ぶ声が聞こえたような気がしたが、誰かの獣のような笑い声にかき消されて
その真意は分からない。いつまでたっても鳴りやまないその声に苛立った私は、笑い声がする方へ反対の手で握っていた銃を構え、撃った。
笑い声が無くなり、爆音と、悲鳴が数秒鼓膜を支配した後、あの笑い声が私自身であることを悟った。