あなたしかいない
私の名前はユキ。
今年の春、都内の有名私立高校に入学したばかりだ。
中学時代に両思いだった同級生とは別々の進路になってしまい、華やかな男女共学高校での生活も興味はなく、異性への関心も皆無だった。
(教室の扉が開く音)
クラス生徒:起立、礼、着席。
月島先生:はじめまして。担任の月島圭介です。よろしく。
背はそこまで高くはないが、色白で鼻筋が通った顔立ちは、いかにも女子高生のアイドル的存在になりそうな先生だ。細身のシルエットに紺色のストライプスーツはとてもよく似合っていた。
月島:ぼくの担当は数学だけど、全教科ひと通り得意なので質問は随時受け付けます。
ユキ:すごい…自信あるんだな。
月島:さっそくだけど、クラスの委員長を決めたいと思う。委員長は、ぼくの数学準備室での仕事も手伝ってもらうので立候補してくれる人を募ります。だれかやりたい人はいますか?
女子生徒:はい!私やりたいです…。
月島:笹川だな。ありがとう。では、クラス委員長は笹川薫に決定する。みんな異議はないか?
(クラス生徒の拍手)
ユキ:立候補した子、笹川さんって言うんだ。育ちが良いお嬢様って印象だな…。かわいい。
めぐみ:はじめまして。隣同士よろしくね!あなたすごくかわいいね!ハーフ?
ユキ:ううん。日本人だよ。私こそよろしくね。
めぐみ:でもさ、クラス委員長もすんなり決まったし、担任の先生の挨拶もあっさりしてたね。初日はもっとこう…担任の先生がクラスを盛り上げるのかと思った。月島先生ってすごくクールだよねー。