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10話、言葉の綾


 サルクトア城の客間で目覚めた私は、ルドルフおじさんとともに、アリシャおばさんがいる、サルクトア城の書庫室へと向かっていた。


 私は、先ほど、ルドルフおじさんがついた嘘の共犯にされてしまい、落ち込んでいた。


「りん、さっきのことなら気にするな」

「……」


 前を歩くルドルフおじさんのその言葉に、私は思わず口を尖らせた。


「……気にするなって言っても、共犯って言ったのはルドルフさんなんだよ……」


 私は、ルドルフおじさんの言葉に納得できず、その背中を見つめる。


「共犯と言ったのは、言葉のあやだ。私の犯した罪をりんに押し被せるつもりはないよ」

「……ルドルフさん……」

「フィリナには、後でちゃんと謝っておくから、りんは心配しなくていい」


 ルドルフおじさんはそう言いながら立ち止まると、私の方へ振り返って、優しい穏やかな笑みを浮かべる。

 優しいルドルフおじさんの顔に、私はちょっと安心した。

 でも、やっぱり不安は残る。先ほどのフィリナさんの様子では、テリオルさんが大変な目に遭っているであろうことは、想像に難くない。


「……テリオルさん、大丈夫でしょうか?」


 私は、フィリナさんに追いかけ回されてるテリオルさんの姿を想像して、溜息を吐いた。

 そんな私に、ルドルフおじさんは優しく微笑む。 


「……テリオルなら大丈夫だよ、何だかんだ言っても仲が良いんだ、あの二人」

「……でも」

「大丈夫、フィリナの好きな男が誰なのかは、りんも知ってるだろ」

「あ……」


 笑顔で話す、ルドルフおじさんに私は大きく頷いていた。


 フィリナさんの好きな男性。それは、先ほどから話題に出てる、テリオルさんのことだ。

 二人は兄妹なのだが、フィリナさんは、お兄さんであるテリオルさんに対して、恋心を抱いていたようだった。

 テリオルさんは、それにまったく気づいてなかったようだけど、以前、私がうっかり口を滑らせたが為に、フィリナさんの好きな人が、テリオルさんであると本人にバレてしまい、フィリナさんにすごく失礼なことをしちゃったという経緯がある。


「テリオルが謝り倒せば、渋々であってもフィリナはテリオルのことを許してあげるよ」

「そうなんですか?」

「そうなんだよ」


 笑顔で言うルドルフおじさんに、私はようやく安心できて、ホッと胸をなで下ろした。

 でも、まるでその現場を見たことがあるみたいな口調に、私は疑問を感じて、その質問をぶつけてた。


「ふふふ、ずっと見ていたからね、あの二人が子供の頃から……」

「ルドルフさん?」

「……私には子供がいなくてね。だから、あの二人が仲良く遊んでいるところは、ずっと見ていて、心に残っていたよ」

「……」


 ……ああ、そうか……。

 ……アリシャおばさんが、子供がいなくて寂しい思いをしてたって言っていたけど、それはルドルフおじさんも同じだったんだね……。


 私は、寂しげに目を細めるルドルフおじさんに、何だか悪いことを聞いてしまった気がして、申し訳ない気持ちになって俯いた。


「ああ、ごめんね、変なこと言って」

「……」


 ルドルフおじさんの言葉に私は、首を大きく左右に振っていた。


「さ、行こうか……、アリシャが首を長~くして待っているよ」

「……」


 言葉の綾だと分かってはいるが、ルドルフおじさんのその言葉に、私は思わず、首長くびながお化け『ろくろ首』の姿をしたアリシャおばさんを想像して、固まってしまっていた。

 ルドルフおじさんは、私の固まった姿に気付いていないらしく、どんどん先に行ってしまう。

 私は、ぶんぶんと首を左右に振って、その妄想を打ち消すと、慌ててルドルフおじさんの後を追いかけた。

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