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洗濯室での内緒話

 ガラスの丸い扉の中でぐるぐる回る洋服を眺めながら、私はぼんやりと今日の未明の出来事を思い返していた。




 私はカイユーから腕を解けなくなった。

 でも、彼はまだやることがあると言いながら自分を拘束する私の腕を簡単に解き、私から解放された途端に、なんと、私の目の前で服を脱ぎだしたのである。

 白い肌は細くしなやかな筋肉によって躍動感を感じられるもので、ダグドのアルバートルへの評価を、私はカイユーの身体にこそ当て嵌めていた。

 なんて神様のように美しいのだろう。


「ありがとう。着替えがあって助かったよ。それでさ、姐さん。洗っておいてくれる?」

「もちろんよ。」


 私はすでにカイユーが脱ぎ捨てた服を拾っており、だって、彼の裸にボケっと見惚れているわけにはいかないだろうし、でも、拾ってもまだ落ちている服に何枚着ていたのだと目線を上げたら、なんと、フェールまで脱ぎ散らかしていた。

 彼らは本気で私を姉として扱っているなとため息を吐くと、小さな手がおずおずと自分の脱いでいた服を私に差し出して来た。


「まぁ、シロちゃんたら本当に良い子ね。持ってきてくれたの。」


 フェールとカイユーの、俺達と扱いが違うという抗議の呟きはどうでも良い。

 だって、シロロは申し訳なさそうな顔で私を伺ってもいるのだ。


「どうしたの?」


「あの、お洋服が破れてしまって。あの、ダグド様が作ってくれた服だから。」


「そうね。翼が破いちゃったわね。私の下手糞な手で良ければ繕っておくから大丈夫よ。」


 すると、シロロはわーいと叫んで私に抱きつき、思い出の服になるなんて喜びの台詞で駄目押しをしてきたのだ。

 ああ!なんて可愛いだけの生き物なのだ。

 私は無意識に腕に抱く洗濯物を放り投げて、シロロこそ抱きしめていた。


「なんて可愛いの。さぁ、お家に帰ろうか!」


 しかし、私の腕からシロロはフェールによって引き抜かれ、代わりにカイユーによって汚れ物を腕に再び抱かせられた。


「ちょっと。」


「だから、俺達はまだやることがあるって。」

 カイユーは偉そうに右眉だけを動かして私を見下ろした。


「そうだっけ?」


「そうなの。」

 答えたのはフェールだ。

「ほら、優しいお姉ちゃんに、シロロちゃんバイバイして。」


 フェールは抱いているシロロの右手を持って、私に向かってバイバイという風にシロロの右手を動かした。


「もう!」


 でも、クラーケン様を領地へ連れていく仕事だと聞けば、私は頑張れと言って彼等を見送るしかない。

 あっさりしすぎと怒られたが、彼等は一体私がどんな振る舞いをすれば喜んだのだろう。

 本当に謎な人達だ。




「まぁ!男物を洗っているなんて。あなたもやるわね。」


「まぁ!アリッサ様。いいところに。手伝ってくれるの?繕い物もあるのよ。」


「するわけ無いじゃない。これは、あなたがやってこそ意味があるの。美しきノーラ様に洗ってもらった服だって、間抜けな男達は大事に宝物のように箪笥に仕舞うはずだもの。私が洗ったなんて聞いたら、彼らががっくりしちゃうでしょう。できない。そんな残酷な事、私にはできない。」


「そこまで言わなくていいわよ。本気で手伝ってもらえるなんて、一ミリも考えていなかったのだもの。」


「ふふ。つまらない。あなたってあっさりしすぎ。」


「アリッサまで。」


「までって事は何なの?」


 私は朝の事を彼女に話して聞かせると、彼女は腹を抱えて笑い出した。


「嘘でも、大丈夫なの?心配だわ!怪我はしないでね!の三つの台詞ぐらい吐いてあげればいいじゃない。男なんて自意識過剰な生き物なんだから。」


「そうね。嘘でも怖がって縋って、なんて、カイユーも言っていたし。」


「ノーラは、いいえ、何でもない。なんでもあるのはアルバートルね。保安部隊が西の森を捜索中って知っていた?」


「え、私達を探していたの?どうして?」


「あら、やっぱりあなた方の行方不明はアルバートルも知っていた事ね。じゃあ、モニークが遭難しちゃった事も企みの一つなの?」


「ええ!何が起きているの?」

「あら。」



 私はモニークの飛行機が西の森に落ちたことを知った。

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