ここは商売をするべきだ
さて、人質を沢山詰め込んだ会議室で、私は取りあえず人質となった全員に自己紹介をする事を頼んだ。
彼らは反発し、私に唾を掛けそうな勢いだったので、一般論を述べてみた。
「ねぇ、皆様。誘拐犯と仲良くする事で生存時間が延びるってご存知?」
彼らは我先にと自己紹介を始めてくれた。
元々の自分の席に座り、そこで突っ伏して笑い転げているアールはどうでも良いが、人質を脅す役割のエランが笑い上戸なのは何とかならないだろうか。
彼は私の後ろでしゃがみ込んで腹を抱えて笑っているのだ。
笑いもせずに悪人っぽく、私を魔女と呼んだ司祭を延々と銃口でつついているカイユーは、少しどころかこれはとてもやりすぎな気もするが。
「では、自己紹介が終わった所で、せっかく皆さんというトップが顔を合わせているのだもの、商談をしませんこと。例えば、クロ―シンライドに我がダグドからダグド特製の鉄板をお売りいたしますわ。魔法鉄鋼です。加工すれば買った値以上の儲けが出るはずです。それから、エルバービィから、我が国では取れないお米というものを売っていただけませんか?そうね、ディ・ガンビルからは、小麦を、皆様、いかがでしょうか。」
私に売買を持ち掛けられた国々は怒るどころか態度を軟化し、さらに、私に商談を持ち掛けられなかった国々は私に物を売るために自国の特産物のアピールを始めたのだ。
私はトップ会議というものが少し好きになった。
ダグドが食べたいと騒いでいたお米を手に入れられ、今後市に行かずとも、この会議に出れば、様々な必要な物を一括購入できる約束を取り付けられるのだ。
ダグドは外からの食料に頼ることを嫌がっているが、貿易という関係を結ぶことで、他国から敵視される事から逃れられるのではないだろうかと思うのだ。
私は物事を知らなすぎるのかもしれないが。




