私は本当に幸せ者だ
シェーラは再び部屋に閉じこもったが、それは感謝を込めてアルバートル隊の面々に服を作っているからだ。
そして、今度のことで態度がデカくなったアルバートル隊の面々によって、迎賓館は彼等の持ち物と化した。
全室エアコン完備でゲームモニターの設置もあり、広いキッチンの冷蔵庫には私達乙女隊が作りおいた食べ物が詰まっているのだ。
こんなもてなしを受けて居座らないのは、単なる馬鹿だということだ。
しかし、偉そうに言い切った男によると、アリッサとリリアナの手による素晴らしき作り置き料理よりも、私がこの間作った鍋料理こそ男達が食べたいと望んでいるのだそうだ。
だから作りに来いとはどういうことだ。
「え、どうして?私の料理がいいの?アリッサやリリアナには代わり映えのしないごった煮と言われているのよ。」
「お前の料理は鍋を温め直せばいいだけだろ。量も大量だし、肉が多い。新鮮な彩の良い野菜料理よりも、肉があれば俺達は最高なんだよ。」
「アリッサもリリアナの料理も、あんなに彩が良くて見た目からして美味しそうで、口に入れれば本気で美味しい料理なのに。私の適当煮でいいなんて、ちょっとあなた方は貧乏舌じゃないの?」
寝ころんでいるアルバートルは、私においでおいでと手招きをした。
「叩かれに行くわけ無いじゃ無いの。」
「ちっ。知恵つけやがった。」
彼はいつもの厩のイグサではなく、屋敷の私の自室の私のベッドに転がっており、どうして私の部屋にカイユーが来ないのに彼が転がっているのだろうと首を傾げるしかない。
「カイユーに二日間ほど会えていないのだけど。」
「見張り台で監禁中だから会えないのは当たり前。」
「どうして!」
「当り前だろ。見張り台勤務が一応俺達の職務だろ。ローテーションだよ。俺が迎賓館で寝泊まりする間、俺以外が見張り台で宿直勤務だ。」
「宿直って、普通にあなた方の家なんだから帰りなさいよ。で、俺が寝泊まりする間って、あなたは見張り台行きのローテーションに入っていないのね。」
「当り前だろ。俺は団長だ。」
ダグドから貰った丹前という服がかなりお気に入りで、今日もその丹前姿の男は、さも当たり前の笑顔で私に微笑んだが、恋人を寒い見張り台に押し込んだままの男に返す笑顔など無い。
「笑えよ。カイユーはお前の笑顔が好きだと言っただろうが。」
「ここにカイユーはいないじゃ無いの。」
「あいつの好みは俺の好みだ。お前は、笑え。」
私の顔は真っ赤になっていただろう。
私が、アルバートルの好み?え?
アルバートルは真っ赤になった私を笑い飛ばした。
笑い飛ばして、何かを思い出したように、そうだ!と叫んだ。
「え、なに!」
「そうだ、そうだ。一言言わせてもらえば、カイユーがここに来れないのは俺のせいじゃないよ。お前はカイユーを襲ったんだろ?あの日のあいつは全裸だったもんな。それでダグド様によってあいつはお前と結婚まで見張り台に匿われちまっただけだよ。あそこは安全でも寒いだろうに、可哀想になあ。」
え?え?え?
「していないし、え?匿われるって、え?私が襲う方なの?え?」
「してないのかよ。裸に剥いで鑑賞していただけか?俺の見立て通りお前はかなりの性倒錯者だな。やっぱりよ、楚々としている方があっちが楽しいって本当だな。俺はお前を一目見て、これはいい女だって呟いちまったんだよ。夜が楽しそうだってね。」
私は手近にあったクッションでアルバートルをバシバシと叩いた。
いつの間にか戸口を覗いていたアリッサが、アルバートルの台詞に子供のようにきゃーと声を上げて笑い転げてもいるのだ。
「もう!誰があっちが楽しそうよ!この伝説級の馬鹿男!」
そして、笑い転げる男を叩いているうちに、なぜか私の頭に色っぽいリリアナが気怠そうなに言った台詞が浮かんだ。
「あなたって、どうしてそんなに懐が広いのに、全部の女を自分のものにしないのよ。ここには教会の教えは無いわ。一夫多妻も思うが儘よ。」
「じゃあお前も多夫一妻を試してみるか?お前の為に団員のローテーションを組んでやろうか?」
「もう!このどすけべ!」
私とカイユーの為にはアルバートルは葬っておいた方が良いかもしれない。
とりあえず、彼をもう少しクッションで殴りつけたら、私はカイユーに会いに見張り台まで走って行こう!
カイユーに会えたお礼に後で迎賓館で適当煮も作らなきゃ、だけど!




