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パーフェクトゲーム・バドミントン  作者: 西目ゆう
入部
3/27

はやくも会敵?

おれは春のまだ肌寒い朝の布団から勢い良く飛び起きる。

金曜日に部長からもらった入部届けは、

五十嵐シロヤと親の名前が書かれた状態でリビングのテーブルの上に置いてあった。昨日親は帰りが遅かったので、とりあえずテーブルに置いておいたのだ。帰ってからサインをくれたんだろう。


さて、いよいよ明日から練習開始だ。

シロヤは意気込んでいた。シロヤは受験が終わってからは日曜日は最低10時までは布団の中にいる。


だが今日に限っては早起きをしていた。

そう、明日からのバドミントン生活に向けて必要なものを買い揃えて置く必要があるためだ。


なんだ、意外とノリノリなんじゃん。シロヤは足取り軽く家を出る。


中学から使い古した自転車に乗り、大型スポーツショップへと向かった。


中に入り呟く

「さてと、バドミントンコーナは〜」語尾を伸ばし歩き始める。「お、あったぞ」当たり前の事にも興奮気味になる。それだけ楽しみと言うことか。

そこには左からシューズ、ラケット、その他の用具が並んでいた。

「シューズもラケットもいっぱい種類あるんだな〜」

どれを買うのが正解か悩んでいると、いつの間にかウィンドブレーカーを着てラケットバックを背負った少年が横で商品を見ていた。


恐らくバドミントン部の高校生といった所だろう。


そうか。この人の買うもの見てればわかるんじゃね?

そう思ったシロヤは一歩下がり、少年の観察に切り替えた。


どうやらコイツはグリップテープの色を黄色か赤かで迷ってるようだった。そうか、グリップテープも買わなくちゃいけないのか。


まあいい、とりあえずシューズは買おう。部長は、ラケットなら学校の貸せるからシューズ買ってこいと言っていたはずだしな。


シューズを選び、カゴに入れると例の少年はラケットバックを下ろし、なにやら中身を探っている。財布でも探しているんだろうか、そいつから目を切ろうとした時、先ほどまでラケットバックを背負っていて見えなかった背中の文字が目に入った。

ローマ字で「SHINZEN」と書かれていた。SHINZEN、しんぜん、とシロタは呟きながら変換していく。


「神前!」

変換し終わって思わず声に出てしまった。神前高校はシロタの通う西目高校と同じ地区に属する高校だ。中学から何人か行ったやつもいる。


神前高校の生徒はシロタの声に反応してシロタを一瞥するが、不可解そうな表情で振り返り、またラケットバック探りを始める。


ラケットも欲しいものを選びカゴに入れてレジに向かおうとすると、突然後ろから声がした。「ねえ!」

振り返ると先ほどの神前高校の生徒だった。


「はい」

シロタは、いきなり「ねえ」などと言われてうろたえつつも返事を返した。


「君初心者だよね?」


なんで初対面の人にタメ口きけるんだこいつは、

「はい、まあそうですけど

なんでわかったんですか?」

間髪入れずに答えが返って来る

「この時期にシューズ買うのは大体これからバドミントン始める人だからね。

それにラケットも初心者用の軽いやつ選んでたでしょ」

だからなんなんだ、まずタメ口やめろ。

「なるほど、で、それがどうしたんですか?」気持ちが前に出てやや失礼な文章になってしまった。


「どこ高?」

おれの質問に答やがれ。

「西目です」

「へーそうなんだ!

あ!

じゃあ名取いる?名取!」


急にテンションを上げてきたし、そんな名前は聞いたことはなかったので


「わかんないです。それじゃあさようなら」


と少々強引に会話を終わらせた。

だがそいつは嫌な顔はせず「おう!じゃあな」と笑顔を見せてきた。


もうこれ以上先は先入観にとらわれているのだろう。

腹が立つ顔だ。口は少しジグザグしてる気がする。

するとそいつは思い出したように「名取ってやつ同学年にいると思うんだけどさ、よろしく言っといてー!」と名前すら知らないやつに名前しか知らない名取への伝言を頼まれた。


おれは軽く一礼し、誰にも聞こえないくらい小さな音で舌打ちしてその場を後にした。


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