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絡まる

どうもお久しぶりです。最近は様々な話を書き過ぎて収拾がつかなくなっております。その中でも途中だった話を完結させたいという思いもあり、再度続き投稿です。

読んだことがある方も読んだことがない方も楽しんで頂けるように頑張ります。

 絡まる、物に巻きつく。巻きついて引き離しにくくなる。絡みつく。物事が複雑に結びつく。密接に関係し合う。言いがかりをつける。


 話をまとめると二人の女性が一人の男を取り合ったが、どちらも選ばれなかったということだ。しかも、若い女は気にしている様子もなく。

 歳を重ねた女が若い女に男を取られたと難癖をつけているというこだろうか。


「そんな簡単な問題じゃないですよ。部長」


 報告書を覗き見ていた。黄島キジマ ノゾミに指摘される。


「どこがおかしいのかな?望ちゃんにも顛末は話したよね」

「もちろん聞きましたよ」


 ここはリスク管理部のデスクだ。望は鈴木 太郎の秘書として常に行動を共にしている。今まで副業をしていたのか度々いなくなっていた時間もあったが、最近は常に傍にいる。


「じゃあ、これでいいんじゃないの?」

「ダメです。だってこれを報告しに来たのは誰ですか?そして、本当に三人だけでの問題ですか?」


 望の言葉に鈴木は考えを巡らせる。これを報告に来たのは平田だった。平田は藤井の二股を止めさせるように相談してきたが、実際の藤井はどちらとも付き合ってはおらず、むしろ山本の方からは恋人と嘘の供述までされている。


「平ちゃんも関係してるってことかい?」

「そうですね。でも、それだけじゃないような気がします」


 望の感は当たるので、鈴木は嫌な予感がするような気がした。


「うわっ!今、揺れが大きかったね」


 また戦闘が始まったようだ。大きな揺れがビルを揺らしていた。


「新型の調子はいいみたいですね」


 望が備え付けの4Kテレビをつけると、ヒーローたちの活躍を映し出す。新型のロボットは従来の者よりもスマートな外観をしており、燃費もいいのだ。

 核燃料を使っていた今まで違い。今では酸素供給があればどこでもエネルギ貯めることができる。そのお陰で無尽蔵に戦え、エネルギー充填なく大技を放つことができるのだ。


「そうみたいだね。宇宙怪獣はヒーローに任せて、こっちの仕事を片付けないとね」


 パソコンに向かって報告書を仕上げようとするが、次なる邪魔が入る。


「コンコン、部長。平田です」


 リスク管理部に平田がやってきた。鈴木は諦めるようにパソコンから手を放し、望に開けるように頷いた。


「お茶の用意をしてきます」


 平田を来客用のソファーに座らせて、望がお茶を入れてくれる。


「先日はご迷惑をおかけしました」

「別に気にしてないよ。メールでも謝ってくれたからね」

「はい。ですが、自分は許せなくて」

「許せない?」


 事の顛末を全て終えたはずなのに、まだ何を平田は憤っているのか、鈴木は望の顔を見て首を傾げる。しかし、望は目を瞑り知らないと顔を背けた。


「藤井の奴。今度は別の課の、女の子に声をかけていたんです」


 藤井事態はフリーなのだ。他の子に声をかけても問題はない。平田は何を怒っているのか。


「溝口さんが可哀想じゃないですか」


 鈴木は平田の口から出てきた溝口という名前に得心が言った。どうやら弄ばれた溝口のことを平ちゃんは思っていたらしい。だが、今回の話では溝口事態も藤井のことをどうでもいいと思っている節がある。

 平田がそこまで気にするほどの案件ではないと思うが、これは平田を盲目にしているのかもしれない。


「平ちゃん。これは上司ではなく一人の友人として言わせてもらうが、溝口さんが好きなのか?」


 鈴木は担当直入で平田に質問を投げかけた。それに対して平田は目を開き、一度目を閉じてもう一度平田時には鈴木の顔を見ていた。


「……はい。でも、僕には結婚を約束した相手がいるんです」


 どうやらこちらはこちらでややこしい事情を抱えているようだ。


「詳しく聞かせてくれるか?」


 相手の女性の名前はユカちゃんというらしい。平田とは五つ違いで、年下の可愛らしい雰囲気の女の子だ。

 しかし、モデルのようなスラっとした高身長の溝口のことが気になり、最近は溝口のことを目で追うようになっていたらしい。

 だが、ユカのことを嫌いになったわけではなく、あくまで溝口を好きな自分がいけないと平田は語った。そんなときに藤井の話が浮上し、山本に相談されたことで平田は頭に血が上ったいうことだろう。


「なるほどな。今回の事件はなかなかめんどくさそうだ」


 望を見れば満足そうに頷いていた。それと共に消し忘れていたテレビの中では絡まった糸を操る怪人がヒーローを苦しめていた。

 大技を使えると言っても相性はあるようで、糸の怪人は上手くヒーローに絡みつき、身動きを奪っていた。


「僕はどうすればいいでしょうか」


 平田の中で答えは決まっているのだろう。だが、上司として、人として、そして友人として彼の選んだ決断に助言をするぐらいはいいだろう。


「まぁ少し僕に任せてくれ」


 鈴木は平田の方に手を置き、もう一度報告書を書くためパソコンに赴いた。平田には数日の猶予をもらい、何も動かないように指示を出した。


「望ちゃんが言っていたのはこういうことだったんだね」

「はい。恋愛問題は女性の問題。絡み合った糸は複雑なものです。簡単に解明するものなんてないですよ」


 改めて報告書に登場人物を増やしつつ、絡まった糸を丁寧に解いていかなければならない。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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